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震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

崩壊 実戦教師塾通信八百六十五号

2023-06-16 11:33:26 | ニュースの読み方

崩壊

 ~エリツィンからプーチンに~

 

 ☆初めに☆

まるでダムの決壊を合図にするかのようでした。ウクライナの攻勢とロシアの後退が始まりました。これだけ見れば、どちらがダムに攻撃を仕掛けたのか、議論する必要はないように思えます。それは、戦争の大義が勝つか負けるかであって、正義や正当性というものにはない、とでも言っているかのようです。

ウクライナ戦争について、ずい分書いてないようだが、というリクエストに似た感想をいただいています。久しぶりにレポートします。以前少し書きましたが、プーチンはイラクのフセインより、はるかにどす黒く危ないものを内部に抱えている、そんな不安定な大統領であるということを書きます。もちろん、プーチンを擁護するものではありません。

 

 1 オウム真理教

 トカレフはソ連(現ロシア)製の拳銃である。成田や暴力団事務所などで大量に押収されることが、今でこそ珍しくなくなった。トカレフが耳目を集めて世間を驚かせたのは、1994年の殺人事件が初めてだったと思う。私たちが驚いたのは、犯行現場が品川の私鉄駅構内だったこと、被害者が医者で犯人が一般人であったことだ。この時使われた拳銃が、コルトやSW(スミソアンドウェッソン)でなく、トカレフだったのである。賢明な読者はお気づきだろう。これはソ連崩壊後の出来事だった。ソ連製武器の流出が起き始めていた。

 この翌年、地下鉄サリン事件が起きる。オウム真理教はロシアに7つの支部を抱え、信者は4万人に近かったことを思い起こして欲しい。忘れたと思うが、オウムは軍用ヘリを購入していた。ソ連時代にタタール地方で製造された「ミル・17」の入手は、ロシアの仲介で行われた。あの時、山梨県・上九一色村の教団施設に軍用ヘリがあることを伝えるニュースは、私たちを恐怖に陥れた。国を通して、いや、国同士の取引ではなく、宗教団体に直接軍用機を売るロシアという国は、もう国家の形をしていないと、この時私たちは気づいても良かったのかもしれない。

 

 2 賄賂と「コネ」

 映画『戦艦ポチョムキン』には、帝政ロシア時代の戦艦での様子が描かれる。艦長と水兵との諸権利・待遇の格差は、思えば革命後のソ連でも変わることがなかった。ソ連となった後、先端技術をまとった宇宙事業や軍事産業の背後には、希少だというばかりでなく、貧相な電気洗濯機や壊れそうな高級ホテルのエレベーターがあった。住居や食料品や給料、すべての環境は悲惨だった。それらについては、私たちでも多少は知っていたはずだ。軍隊で言うと、百万人単位の兵隊への給料の遅延が続いていたり、軍の諸経費の支払いが滞っていても、上部の将校たちは贅沢な住居を与えられ、ベンツ(ドイツ製!)に乗っていた。根源には、専制社会に必然の構造があった。

 企業から市場価格よりはるかに高い値段で閣僚が主導契約する報償は、当該企業からの高額なリベートだ。これがゴルバチョフ政権以前から行われていたやり方だ。そしてソ連解体後はもっと露骨に、物資の横領と横流しとして定着する。さて、そんな中で中堅幹部や下部が、自分たちの利益を得るために出来ることはなんだっただろう。その流れに乗ることだ。その為に必要なのが上司への賄賂と「コネ」だった。このふたつの栄える国が、ろくなもんでないことを、私たちは見て来たし見ている。91年のソ連解体後、なんと軍隊のビジネスへの参画が許可される。エリツィン政権下のことだ。軍がマフィアへの道へと、大きく歩を進める。トカレフやミル・17はもちろん、核弾頭さえビジネスの項目に上がった。プーチンの独断的独裁は、実はロシアが国家的体裁を保つために必要不可欠な要素となっている。それがほころんでいるのは、ニュースから十分に伝わっている。ロシアで発生している内紛は、民衆による革命の予兆だろうか。それもないとは言わないが、ロシアの抱える暗黒と絶望は膨らんで留まることを知らないように見える。

 

 3 浮いた武器

 ワグネルが、プーチン政権のほころびのひとつであるのは紛れもない。しかし、この「民間軍事会社」なるものは、ロシアに特有なものではない。以前も書いたが、1991年の湾岸戦争で台頭した。これもソ連解体の年であるのは、単なる偶然ではない。リビアが解体した時もだが、ソ連解体に伴い独立したウクライナに残った数々の重装武器は、行き場を失う。核兵器だけは何とかロシアという国家に帰属するが、それ以外の武器に関してロシアンマフィアが黙っているわけがない。世界のどこかで戦争が終結すると、必ず世界中に武器が拡散する。浮いた武器があるからだ。

 浮いた武器ではない、浮かばれなかった武器としての代表が、ソ連製の原潜(原子力潜水艦)だ。何故か帝政ロシア時代から、病的とも言えるぐらい種類も数も沢山作られた潜水艦は、動力がソ連時代に原子力となる。それが世界的に海洋投棄されていることを私たちが知ったのも、1991年のソ連解体後だった。私たちの近隣エリアとしては、日本海・アリューシャン沖に事故や失敗した原潜が、中枢の原子炉もそのままで大量に棄てられていた。ロシアはそれを安全に解体処分する資金も、技術も知識も、その気もないように見える。原子炉の安全な解体の大変さを、私たちも福島で少しは経験している。

 人間の顔を持たない技術と、人間の顔を持たないマフィアが混沌としている「国」、それがロシアなのだ。

 

 ☆後記☆

こういう記事のあと必ずと言っていいくらい、ネットの情報を教えてくださる読者がいらっしゃる。前も言いましたが、私もジャンクな情報は一応点検しております。記事の構成は、切り抜きの蓄積と文献のお陰だと思っています。

14日の自衛隊の事件ですぐ思い出したことは、被災地で挨拶を交わしあった立派な隊員の姿です。警察や消防、まして自衛隊となれば「規律」が重要です。日頃、消防の厳しい訓練を目にしますが、仕方ないと思うはずです。でも、思い出したのは、先だっての女子隊員への性的暴力や、隊員の自殺や服務をめぐる裁判のことでした。

こども食堂「うさぎとカメ」、明日ですよ~。明日発行のチラシの裏ですが、明日用の記事です。8月は臨時に二回開催。一週目は吉野家さんで~す 梅雨なんか飛んでけ~

明日はから揚げ、皆さん、どうぞいらしてくださ~い

オオタニさん、すごいなぁ。今日の22号見ました!

6勝目も来~い!