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柏市富勢中学校問題  実戦教師塾通信三百六十三号

2014-03-05 13:20:00 | 子ども/学校
 柏市富勢中学校問題

     ~本池なみえ議員をたずねる~


 1 遺族の悲しみは「煽られた(あおられた)」のか


 昨年暮れ、このブログ346号で「このこと(富勢中学校問題)を書くのはもうやめようと思う」と書いた。遺族(いぞく)の傷に触(ふ)れると思ったからだ。しかしそのすぐ後もだったが、一月の末日(まつじつ)に市教委が「重大ないじめなし」の報告を出したあと、何人かの方から、よく分からないがこのままでいいのだろうかと言われた。また、遺族の無念の思いを、議員が煽ったのではないか、という疑問を私にぶつける人もいた。中には、いじめを政争の道具として弄んで(もてあそんで)いいのかという人までいた。それだったら確かめるのがいいと思い、本池議員をたずねた。結論を書いておくが、会って確かめて良かったと思った。
 初めに言わないといけないが、本池議員は以前、別な保護者からいじめの相談を受けていた。富勢中学校の生徒が自殺したことは、そのあとで知ったのだという。以前から相談を受けていた件が、市議会での質問の主たる目的だったらしい。
 さて、346号にも書いたが、9月の市議会定例会で、多分教育長なのだが、
「(富勢中学校の生徒が自殺した)事案は把握(はあく)している。しかし……保護者から公表は差し控えたい……という強い要望があり」
という答弁をした。それに対して、本池議員は、
「保護者の気持ちはよくわかるが……学校側としても教育委員会としても調査すべきである。何も対策をとらなかったから今のいじめにつながった」(以上、昨年11月発行の柏市議会報告より)
と、質問を続けている。ここで言っている「今のいじめ」というのが、本池議員が相談を受けた件である。
 このやりとりを知った富勢中学校生徒の遺族が、本池議員に連絡を取る。つまり、本池議員が遺族の依頼(いらい)を受ける形になるのは、ここからである。当初、議員はこの自殺した件に関わることになるとは思ってなかったようだ。
 初め、議会でのこのやりとりを知った時、私もそうだが、多くの方が引っ掛かりを持った。この「(公表は差し控えてという)保護者の気持ちはよく分かるが」という、本池議員の言葉から、ふたつの疑問が生じたのである。

○遺族の気持ちを差し置いて、何をしようというのか
○遺族の依頼を受けた発言/啓発(けいはつ)ではなかったのか

しかし、この経過を見て分かると思うが、本池議員は遺族からの依頼で「始めたのではなかった」。のちに「依頼されることになった」のだ。では、遺族は本池議員に煽られたのか。
 遺族が「事実と違う」として本池議員を頼(たよ)ったのは、委員会が言った、
「保護者から公表は差し控えたい、詮索(せんさく)はしないでほしいとの強い要望があり」
という点だった。しかしこれは「事実と違っていなかった」と思う。生徒が亡くなった翌日(よくじつ)、そして通夜の日に、校長、そして教育長がお悔やみの言葉とともに「調査するかどうか」を確認したと思われる。しかし遺族は、
「気が動転していて、何を聞かれて何と答えたのか覚えていない」
というのも事実だった。おそらく、のちに教育長(多分)が言った「齟齬(そご)」となる原因が、ここで生じた。さて、現場サイドがこのあとで、

「そっとしておいた方がいいのだが、まったく触(ふ)れずにいていいものだろうか」

という葛藤(かっとう)をどれだけしたのだろうか。それが重要なポイントだと思える。その葛藤を、現場/学校サイドは遺族に伝えるべきだった。そして、委員会側もそのサポートをすべきだった。
 ここで多分、
「オマエは簡単に現場のことを批判するが、それは無責任というものだ」
という現場の声が聞こえてきそうなので、はっきり言おう。残念ながら、学校というものはある過失(かしつ)を通常やってしまう。ここでもその可能性が大きかったということだ。
「傷をこじらせ、深くすることを避(さ)ける」
ことと、
「出来事にふたをする」
こととは紙一重(かみひとえ)なのだ。過去、「おおごとにしたくない」思いが先行する多くの学校的対応は、悲劇をさらにかさ上げしてきた。私なりに35年間やってきて、その怖さは分かって話している(拙書『さあ、ここが学校だ!』にその一端(いったん)を書いた)。
 さて、話を戻そう。
 その一方で、遺族が「わが子の不幸の理由」を思い、揺(ゆ)れ動いていた時、
「公表/詮索を控えてほしいという遺族の強い要望があった」
という声が届いた。その結果、遺族は、自分たちが学校から放置されたままだと思った。だから議員と連絡をとった。このことに間違いはないと思われる。
 しかし、
「そのあとの市教委の対応は良かったですよ」
と、本池議員は言った。そして、差し上げますよと言って、私に報告書「柏市立中学校男子生徒死亡に関する調査について」(平成25年12月27日付)をくれた。経過とアンケートの結果、その考察が書かれたものだ。報道より詳(くわ)しく書かれているとはいうものの、大体が報道された通りである。

○アンケート調査の実施(じっし)
○アンケート調査の方法
○アンケートの内容

すべては遺族の意向(いこう)を踏(ふ)まえて行われた。そして、

○アンケート結果に基づき、聞き取り調査を実施
○すべてを遺族に報告、その後協議を行う

というものだった。本池議員が、この件を「隠蔽(いんぺい)」した、と9月時点では表現したのだが、
「遺族は(委員会に)言って良かったと思っていますよ」
と、議員は言った。大きな悲劇になった事件の中に、学校/現場サイドが、
「あの時、遺族はそう言わなかった」
と強弁するのを見ているが、今回そういうこともなかったのが、いい方向に導(みちび)いたと思われた。

 私が「館山いじめ問題を考える会」の事務局の人に、
「どうして自治体(館山と柏)で、こうも違うのでしょうか」
と聞かれたことを言うと、
「教育長/市教委の姿勢ですね」
と、本池議員はあっさりと言うのだった。


 2 いじめはある

「いじめはなくさないといけない」
と言う本池議員に、私の、
「いじめはどんな学校のどのクラスにもあります」
という私の意見は、結構(けっこう)なインパクトがあったようだ。そして、

○今の社会では、子どもが子どもの扱い(あつかい)をされていない
○「悪いことをしないように大人が子どもを導く」というのは間違いである
○子どもが悪さをするのは当たり前のことだ。子どもなんだから。
○小さいうちに悪いことをたくさんやっておいた方がいい

という私の考えも、本池議員の中に何かを促(うなが)したようだった。

 出向いて良かったと思えた。


 ☆☆
「柏の連続通り魔」、いや連日ニュースのトップでまあ。現場は私が現役(げんえき)最後の7年間、通勤路(つうきんろ)として使っていた道なので分かります。現場から10メートルばかりの交差点で、私はSUVに撥(は)ね飛ばされて、愛車のゼファー1100がポンコツになったのは10年前です。ってどうでもいいですね。明るい道ではないけど、暗いわけではなく、駅に近い住宅街ですよ。ここから100メートルほど行けば、それこそ真っ暗な森があるんですけどね。しかも、そんな暗い道なのに女の人もみんな使っている。そこをねらってない。しかも被害者の多くが男なんですよねえ。う~ん。

 ☆☆
石垣市長選挙、現職が勝ちましたねえ。4,000票差ということは2,000人の差。わずかですよ。でも投票率は下がりました。「背番号のないエース」さんのいう通り、八重山の人たちは、口で言うほどやる気はなかった、のでしょうか。残念です。