千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  TB&コメントにも☆

「私の嫌いな10の人びと」中島義道著

2006-04-04 22:24:02 | Book
中島義道センセイ(←あえてセンセイとここでは呼ぶ)は、やっかいな人物である。
これが、隠れた名著「ウィーン愛憎」「続・ウィーン愛憎」を読んだ正直な感想である。親戚に中島オジサンがいたら、親族会議のたびに紛糾しそうであり、中島パパのこどもだったら家出をしてやりたい。ご本人も結婚にふさわしくない人間だと公言しているとおり、配偶者になったら毎日延々と議論の果てに若さも美貌も消滅してしまいそうだ。(でも、カントを専攻する哲学のGacktいや、学徒だったらこういうセンセイに師事するのも、哲学者らしい世間を斬る技を身につけられるかもしれない。)

そんな中島センセイの最近の著書を読もうと思ったのは、こういった”やっかいさ”を実は自分の中にも認めていることから、このさいセンセイの威光を借りて、益々変人トラブルメーカーの達人という王道を歩もうという決意を固めることと、先人に我が身を照らす灯火になっていただきたかったこと。それにやっぱり”イイ人”の温度のあつかましさに耐え難さを感じているからだ。


1. 笑顔の絶えない人
2 常に感謝の気持ちを忘れない人
3 みんなの喜ぶ顔が見たい人
4 いつも前向きに生きている人
5 自分の仕事に「誇り」をもっている人
6 「けじめ」を大切にする人
7 喧嘩が起こるとすぐ止めようとする人
8 物事をはっきり言わない人
9 「おれ、バカだから」と言う人
10 「わが人生に悔いはない」と思っている人

読みやすく(字も大きい)、わかりやすい今回の著書は、それでも闘う哲学者中島センセイらしい気骨の入った意見満載であった。但し、内容に鮮度はない。例えば、さだまさしさんの「関白宣言」ほど心を逆なでする歌はないと、お怒り心頭ではあるが、歌詞をよく読めばこの歌の嫌らしさはすでに衆知され、嗅覚の鋭いコリー犬のような少女の感性はとっくにかぎとっている。時々、話がそれてしまい鋭さが鈍り砲撃が弱いのも、多作で本を量産しているセンセイも少々お疲れ気味かと案じる。それとも、逆に益々偏屈になってしまったのだろうか。しかし、さすがに鋭い分析と感じたのは、「いい人」とは、大多数と同じ言葉を使い、同じ感受性に留まっている手抜きで安全な方法をしている人という定義である。

ワイドショーでしかつめらしくコメントする人種が、私は大嫌いだ。だから、そういったたぐいの番組は何年も観ていないが、まさにこの方達が中島センセイの「いい人」の定義にあてはまる。にも関わらず、ありきたりの言葉で、もっともらしい教科書のような感性の持ち主が、この世間を支配しているのだ。全く窮屈で生きにくい世の中だ。それにしてもどう考えても中島センセイの本が売れるとは思っていなかったが、ベストセラーだという。まっとうな人は、この著書を読んだら、センセイの講演を聞いて体調不良になった症例と同じ反応を起こすか、もしくはおおいに不快になるかお怒りになると思うのだが。いったいいかなる人たちが、お金を出してこの面倒な哲学者の悪態を好んで聞いているのだろうか・・・。

良い子のみなさんは、くれぐれもこのご本をお買い求めにならないように。


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5 コメント

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この本読みたいと思っているのです (calaf)
2006-04-05 01:57:01
こんばんは。この本読みたいと思っていたところです。何かしらビアスの「悪魔の辞典」を思い出させるところがあります。幸福とは他人の不幸を知った時に感じる安堵感・・だったと思いますが・・私事で恐縮ですが、この項目の半分(ほとんど)が3年前の私に当てはまりました。あげくの果ての「鬱」。自分で演技していたのですね。
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「悪魔の辞典」はロングセラーですね (樹衣子)
2006-04-05 23:59:40
それほど読む価値はないです。なぜ売れているのか、不思議です。それだけcalafさまのように演じているいい人が、多いのでしょうか。

もっともそう断言できるのは、もともと”いい人”のいかがわしさを感じていたからかもしれませんが。



>半分(ほとんど)が3年前の私に当てはまりました



なんとなく察せられますが、ブログでは徐々に人畜無害な”いい人”を脱皮しているではないでしょうか。(笑)

協調性と他人への思いやりは大事だと思いますが、みんなに好かれるために自分を小さな枠にいれるよりは、自分らしくふるまう方が、結局自分に対しても人に対しても誠実でいられると思うのですね。



>1. 笑顔の絶えない人



わたしも私事で恐縮ですが、これは残念ながら該当していますが、みんなよりも自分の喜ぶ顔が見たい、けんかはとめない、人生おおいに悔いあり、いい人でなくてラッキーだと思いました。

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「うるさい日本の私」もぜひお読みください。 (映画侍)
2006-04-10 02:35:58
ピエロのような中島先生の悲壮な日常の戦いが描かれて痛快・・・というか痛い!あまりに共感しすぎて先生に手紙を書き、本を送って頂き、会合にお招きいただき先生の知遇を得ることとなりました。先生と酒を飲みに行ったんですよ。私は酒を一切飲みませんが。その分は払わなくていい、と著作の通り遇してくれました。もちろん払いませんでした。「ウィーン愛憎」が大好きで「続・ウィーン愛憎」が出たときすぐ買ってあっという間に読了。読みながら涙が止まりませんでした。この気持ちは中島先生の著作で「来る」人にしかわからないと思います。
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映画侍さまへ (樹衣子)
2006-04-11 23:41:33
「ウィーン愛憎」「続・ウィーン愛憎」は、昨年読んでブログにも感想を書きました。この本は、二冊読むことによって物語を閉じることになると思います。そして、その物語の更なる続編は決してありません。すべてが終わります。

最後の中島義道さんの解説を読み終えたとき、私は感傷の波に包まれたことを思い出しました。20年の邯鄲の夢・・・。

映画「ローマの休日」をおとなになって観た時の、しみじみとした寂しいような、けれども充実した実りの味わいに近いかもしれません。



「私の嫌いな10の人びと」では、映画侍さんの中島氏とのつながりを知らず、かなり茶化してしまい大変失礼しました。

でも氏の本質は(←と、高邁な言い方ですが)、このエッセイでは伝わらないと思っています。初中島体験するには、もっとお薦めの本があるかと思っています。



ところで、映画侍さんのもうひとつの素顔をたっぷりと見せていただき、私としては大変嬉しいです。

そして貴殿の今の充実感が、すごく伝わってきます。(で、、、ブログにコメントした方がよいのかずっと迷っていたのですが、今も迷っているのですが、やっぱり近いうちにメールしますね。真面目な方です。)



追記:中島義道さんは、本物の哲学者なのですね。
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読むべきはカントの本。 (映画侍)
2006-04-11 23:52:12
中島先生には、いま妙に売れている「うるさい」シリーズと「わたしの嫌いな」シリーズがありますが、元々はカントの研究書などいい本をたくさん書いておられます。親切な哲学の啓蒙書も書いておられその本も全部読みました。わかりやすくサービス精神に富んでおられ哲学の深淵も覗かせてくれます。カントの生活をわりとそのまま実践されているようなふしもあります。大森荘蔵先生の時間論を語り死を語る先生の姿は迫力があります。小柄で華奢な感じの方なのですが。。。
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