千の天使がバスケットボールする

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チェロと歩んだ60年~ 堤剛のドボルザーク ~

2011-01-23 22:54:11 | Classic
今夜のN響アワーのゲストは、8歳でデビューして演奏暦60年になられるというチェリストの堤剛さん。
堤さんは、1942年生まれ。お父様からチェロを学び、桐朋学園の「子どものための音楽教室」では2歳年下のピアニストの中村紘子さんもお仲間だったという記憶があるが、その後、桐朋学園に進学して指揮者の斎藤秀雄に師事、インディアナ大学に留学してヤーノシュ・シュタルケルのもとで研鑽を積む。1963年ミュンヘン国際音楽コンクールで第二位、ブタペスト国際音楽コンクールで優勝して国際的なキャリアをスタートさせる一方、イリノイ大学教授、インディアナ大学教授を歴任して、指導者としても知られている。日本のチェロ界の草分け的存在ながら、第一線での旺盛な演奏活動を行っている。

堤氏の現在のプロフィールは、チェリストの肩書きだけでなく、桐朋学園大学の学長、財団法人サントリー音楽財団理事長、サントリーホール館長、霧島国際音楽祭音楽監督と音楽業界の要職も兼務されている。1960年にNHK交響楽団は初めて海外に演奏旅行に出かけたのだが、その時、弱冠18歳の堤青年がソリストとして共演したのが、記念すべきN響との初共演。番組では当時の白黒の映像が放映されたのだが、飛行機は気にせいかプロペラ機ではないだろうか。タラップをのぼる団員の顔がとても嬉しそうで、堤青年は体重が今の半分ではなかろうかと思えるくらいスマート。堤さんはニューデリーからローマまで参加して、ドボルザークの故郷チェコや、ポーランドで演奏したのが、ドボルザーク作曲のチェロ協奏曲ロ短調。

特にチェコで国民的作曲家のドボルザークの協奏曲を弾くときは、受容れてもらえるかさすがに緊張したそうだが、一度、音をだしたらそんな懸念はいっさい忘れて演奏に集中でき、観客からは拍手喝采をもらったそうだ。弓を持ちながら穏やかにお話される堤さんは、大御所、重鎮の威圧感がなく温厚な紳士の雰囲気。以前、北欧に旅行した時に空港の搭乗口でチェロを抱えている堤さんをお見かけしたのだが、スーツを着ている堤さんは本当にチェロがなかったら格別エリートのような気合やキレもない、ごく普通のサラリーマンのおじさんそのものにみえた。席も私たちと同じエコノミーだったような気がする。サントリー元会長のあの佐治敬三氏の娘婿という華麗なるバックグランドは、サントリーホールの開館記念日のガラコンサートの出場者にそのお名前を見る時に思い出すだけである。

さて、21年ぶりのN響との共演に選んだ曲も、ドボルザークのチェロ協奏曲ロ短調。
以前、堤さんの演奏を聴いた友人によると、楽器のイメージからくる芯の太い響きのある演奏というよりも、むしろ繊細でねばりのある音だそうだが、テレビではよくわからないながらも、音のひとつひとつに渾身に向かっていくのが感じられる。さすがに年齢のせいか、多少、音はやせているような気もするが、円熟ななかにもむしろ若々しさがある。その演奏に対する真摯な姿勢は、堤さんのお人柄を表しているようにも感じられた。そして、指揮者のネルロ・サンティさんは、あいかわらず素晴らしい。この方の関取のような巨体を見るだけで安心感と期待感がある。


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