千の天使がバスケットボールする

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帰ってきたアパレル生産

2011-02-19 23:38:38 | Nonsense
別に不都合な事情があるわけでも不適切な情事があるわけでもないのだが、私はブログ内で日記に近い個人的な内容はあまり書かない(ふれない)ようにしている。しかし、今回は解禁して一部日常を暴露?、、、というのは、毎日着るファッションに関わる内容だからだ。

ここではっきりブランド名を言ってしまうが、最近の私の服装のお気に入りはフランスの「オールド・イングランドOLD ENGLAND」。
名前では、「えっ、イングランドなのにフランスなの?」と疑われるが、れっきとした1867年創立のフランスの老舗ブランドで本店は創立以来「12 Boulevard des Capucines 75009 Paris」にある。あの”のだめ”がブルーのダッフルコートを着ていたことでご記憶にある方もいるかもしれないが(私は気がつかなかった・・)、お店につけた名前から想像されるとおり雰囲気はトラディッショナルな英国風なのだが、伝統の重さというよりも昔のフランス映画のような礼儀正しい美しさを感じさせてくれるフレンチ・トラッド。

先日、有楽町西武デパートの閉店セールで買ったYシャツにはじめて手を通してみたところ、ボタンをはめて、そのあまりのはめやすさに感動したのだった。あらためてよくよく眺めてみると、乳白色の小さなボタンの周囲には”OLD ENGLAND PARIS”とほられていることから、ボタンそのものが自社で製造されていること、またはめやすい秘密はボタンの上の部分の角に丸みがあること、ということが判明した。そしてイタリア製。この澄んだクリアーな発色の水色は日本にはなかなかない色だ。他の衣類も調べてみると、コートなどはフランス直輸入品も扱っているようだが、私がもっているPコートも含めて殆ど日本製となっている。丁寧でしっかりした縫製、秋から初冬にかけて着られる薄手のコートにもなる丈の長いジャケットの裏地はすべりがよくて着心地が抜群なキュプラ製で、濃紺のしっとりとつややかな生地にはブランド名の織柄が入っている。

ちなみに価格も再点検したら、半袖の薄手のポロシャツ仕様は定価だったら4万円程度だった。そう、”だった”という表現でばれてしまうが、だいたいセールで買っているのも、ここのブランドの最大のネックが、オーソドックスなデザインでぱっとひかれるおしゃれ感がないけれども、価格帯は庶民の私には少々お高めというところだ。ところが、昨年の晩夏、このポロシャツよりも安いダンガリー素材の半袖ワンピースが登場した。春からの出番を待っているこのワンピースの値段の理由は、それもそのはず、これだけは中国製だったのだ。真剣にあらためてワンピースを見たら、なんとなく意識下で気になっていたとおり、ここのブランドの品物のわりには、縫い目があまり整っていないじゃんっ!カジュアルなものほど素材はよい物をと考えたい私には、不景気対策の企業努力がこんなところにあるのか、とちょっと複雑な思いもした。

女子的には、毎日着る服は、毎日の戦闘服。女子力アップには、予算内でおさまるデザイン的にもお洒落なものを身につけたい欲望があるのだが、どんなに人気ブランドや有名ブランドでデザインが優れていても、裏のタグで「MADE IN CHINA」やチュニジア製という表示を見つけたりすると正直がっかりする。しかもお値段もブランド名にふさわしいりっぱな価格である。いつもこの価格の構成を知りたいと思ったりもする。それから「オールド・イングランド」だけでなく、行き過ぎない旬な流行路線をとりいれている「ADORE」というブランドの服もやはり日本製が中心だ。ブラウスの裏生地にシルクを使ったりとよい意味での洗濯泣かせの品物もあるのだが、どの商品も手に取ると仕立てがよいのがわかる。中国製のすべてが悪いとは言わないが、昔々、森英恵さんが日本製のブラウスが米国のデパートの地下の売り場においてあることにショックを受けた頃からの、日本企業のまじめな技術力向上によって、現在は”日本製” は信頼にブランドにかわっている。シャープの亀岡工場などもそのよい例だろう。
だったら多少高くても、長い目でみて中国製よりも日本製へ回帰したらどうだろうか、とタイムリーにも「WBS」の知られざる日本の実力で「帰ってきたアパレル生産」を放送していた。

この20年間で、国内の衣料生産は人件費の安い中国に流れて9割も減っていた。この事実にも驚いたが、残念なことに技術という財産をもった企業の廃業も続いていた。ところが、国内の衣料生産が前年比1.6%と14年ぶりに上向きになっている。ある工場では、厳しく苦しい時代もあったが、今は前年比4割も受注が上昇し、16人の従業員が10万円程度の高級なジャケットを月500枚生産している。好調な理由として、欧米の受注が上向きな中国で、細かい注文の多いわりには多品種で小口の注文数の日本からの発注が嫌われ、はじき出された商品が国内にかえってきていることにある。

中国では人材不足の一方で賃金も上昇、単純労働を嫌う労働者で経営者も人材確保に苦戦している。ある染色加工工場では、織られた布にガスバーナーで不要な毛羽を焼きとり、その後、50度のお湯に通して機械で念入りに洗浄という加工をしている。客の要望で樹脂加工などで、通常の黒とは異なる深みのある黒をだしている。作業着を着た工場長が、普通の黒と深みのある黒をそれぞれの布で比較説明しているのだが、その差は歴然としている。黒という色は素材の良し悪しがはっきりわかるので、安物を買ってはだめという母の教えを思い出した。
また、大手アパレルメーカーの三陽商会では、国内の6つの直営工場で4割生産しているところを、数年で5割まで高める予定である。マザー工場では、年間、10数万円もの高級スーツを5万着製造しているが、前に向いている人間の肩にあわせて波をうっている”いせ”をつくったり、胸ポケットのコーナーを厚みをへらすために角でなく丸くしたりと、その工程作業はお値段を納得する細かい技術力に支えられている。切迫する食料危機に日本国債の格下げが続けばラーメン1杯が2000円時代がやってくるかもというなかで、この流れが本当に続くのか、またいつまで続くのか不安もあるのだが、やっぱり中国製よりもMADE IN JAPANだよ。。。

もともとオールド・イングランドを気に入るきっかけになったのは、妹が学校行事やコンサートへのおでかけ用にシンプルなワンピースを着ているのを見てからだ。一見、平凡なデザインだが着るとその人をひきたてるあたたかいフォーマル感がある。ところで、くだんのオールド・イングランドのHPの検索で見つけたのが、「関心空間」のこんな記事だった。
「数年前までは北九州市にも路面店が存在し、店内の居心地の良さに惹かれて、何かと理由をこじつけては足繁く通ったものだ。
しかし、オーセンティックゆえに表面上の新味に乏しいコレクションは、斜陽射す錆び付いた地方都市には深く根付く事はなく、消え入るような静かさで撤退。礼儀正しく気さくなスタッフたちの思い出が、手元の20数点のアイテムと共に残るばかりである。」
この店舗ではどうもアパレルよりも家具を扱っていたのではないかと思われるのだが、「“ノーブル”という表現こそ相応しい 」という記事に思わずうなづいてしまった。ファスト・ファッション店で大量の商品を見ても購買意欲はわかない。これは選択が広すぎるという心理的な理由ばかりでもないだろう。我家の爺さんが現役サラリーマンの昭和の時代は、仕立て屋さんが家にわざわざ来て採寸してスーツを作ってもらっていたことも思い出した。私は、ものを消費することではなく、大切に使用することも思い出したいのかもしれない。

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