千の天使がバスケットボールする

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『コッホ先生と僕らの革命』

2012-10-17 22:49:47 | Movie
先日、フランス国営テレビ「フランス2」が放送した情報バラエティー番組で、サッカーのフランス代表と対戦した日本代表のGKの選手に腕が4本ある合成写真を映し、司会者が「フクシマの影響ではないか」とやゆする発言をして、スタジオから拍手と笑いが起こったそうだ。こんな失礼な発言は、日本人に負けたくやしさだけでなく、多少の人種差別も根底にあるように思われる。しかし、サッカーとは、本来は階級や国籍に対する差別意識をなくし、公平に敬意を払う”フェアプレイ”の精神があるスポーツだったはずではないだろうか。サッカーという球技の精神の原点にたちかえり、このスポーツの素晴らしさを思い起こさせてくれるのがこの映画だった。

19世紀末の帝国主義下のドイツ。反英主義に固まる中、イギリス帰りの英語の教師が母校のギムナジウム・カタリネウム校に赴任してきた。コンラート・コッホ。彼こそは、スポーツが階級差別を打ち破るという信念のもと、スポーツ振興に生涯を捧げて後に”ドイツ・サッカーの父”と讃えられるようになる青年だった。規律を重んじ厳格なドイツでは、スポーツとは自己鍛錬に励み、精密機械のようにほんのわずかな狂いも生じない体操競技のことだった。そんな中、コッホ先生がもちこんだゲーム性に富み勝敗を争うサッカーは、何かと偏見をもつ保守的な教師や親をとまどわせ反対されるのだが、彼はサッカー競技のもつフェアプレイの精神や仲間を思いやるチームプレイを生徒たちに教えていくのだったが。。。

主人公のコッホ先生は、ドイツの売れっ子俳優ダニエル・ブリュール。一時、体重の増加を心配していたのだが、本作ではよい感じにバランスがとれ、肉感的な?お尻姿をサービスしている。物語そのものは史実に基づき、とは言え、エンターティメント性のある学園ものの王道ヒューマン映画である。貧しい者や弱い立場の者へのいじめ、権威主義への反抗、生徒の反乱、初めての恋。今ではサッカー大国のドイツのサッカー黎明期を、この国の特徴をおりこませて描いている。けれども、観どころは何よりもサッカーというスポーツ精神のあり方を再確認させてくれたことではないだろうか。

それほどサッカーに興味も関心もない私ですら、最後にはすっかり気持ちが入り込んで改めてサッカーの魅力を感じつつある。映画はこれだから楽しい。フランスは過去の歴史からもドイツとは相性が悪いそうだが、フランス人も、一度このドイツ発の映画を観たらいかがなものか。少なくとも、バラエティ番組とはいえ、あのような差別意識を感じさせる”茶々”に笑うというふるまいは恥ずかしくてできないだろう。予定調和的な単純な物語展開の印象もぬぐえないが、逆に幅広い層で楽しみ元気がでる娯楽映画である。

原題:Der ganz grosse Traum(大いなる夢)
監督:セバスチャン・グロブラー
2011年ドイツ映画

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