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ハワイに行っていた最愛のひとり娘のジョーイ(キャサリン・ホートン)が、急に帰国してきた。彼女はハワイ大学に講演でやってきた博士とパーティで出会い、生まれて初めての恋、素晴らしい恋人に夢中になっている。彼との出会いと婚約を報告する娘の顔と瞳に幸福があふれんばかりに薔薇色に輝いているのを見て、母のクリスティ(キャサリン・ヘップバーン)はあまりにも急な話で驚くのだが、祝福する気持ちになっていく。すると夫マット・ドレイトン(スペンサー・トレーシー)の書斎から、その娘の心を射止めた男性が出てくる。彼を見て、母親は卒倒しそうになる。後に新聞社主の夫の調査で知ることになるのだが、1954年にジョン・ホプキンス大学卒業、1955年、エール医大で助教授3年、ロンドン医大で教授3年、世界保健機構で副理事を3年・・・、と相手のジョン・プレンティスは、娘の夫になるべく経歴も人格も最高クラスの優れた男性だった。たったひとつ、、、肌が黒いことをのぞいては。
映画の時代背景は、1967年。米国では、昨年、女性初の大統領よりも、予想外に早い黒人の大統領が誕生した。歴代初の黒人大統領のバラク・フセイン・オバマ・ジュニアは、1961年に黒人男性と白人女性との間に生まれた。しかし、この時代においては、異人種間の結婚はタブーですらあった。人種差別に反対し自由を掲げる新聞社の社主である父と、画廊を経営するおしゃれでセンスのよい母。そんなリベラルで知的な夫婦でさえも、我が娘の結婚相手が黒人となると、衝撃があまりにも大きく動揺を隠せない。綺麗な信念は、本物ではなかったのか。インテリ家庭の本音と建前が暴露されていく。ここで、根強い人種差別のあつい壁をシニカルに描く作り方もあっただろうが、この映画での物語はあかるい結末に向かう。それには、人種差別に反対する両親から育てられた娘のなんの疑いをもたない純粋さ、母に言わせるといつも笑顔で幸福が服を着ているような雰囲気と、37歳の黒人博士役を演じた名優、シドニー・ポワチエのすべてを悟りながら相手の気持ちを気遣いおだやかな完璧とも思える人間性をもつ人格者を無理なく演じきれるかどうかが要となる。
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公開当時は、おそらく論議をよんだかと思われる重いテーマーを扱っていながら、全体的にあかるくユーモラスで軽快な仕上がりになっている。父のマットが、ふたりの間にできるこどもが受ける差別を心配して、こどもをつくる予定があるのかとジョンに質問する場面がある。
ジョンは笑いながら「ジョーイは、僕たちのこどもを大統領にさせると言っている」と応えている。この時代では、それは婚約したカップルの楽しい”ジョーク”。彼らは自分たちのこども世代に黒人の大統領が誕生するなんて、そんな未来はまだ夢のようだったのだ。久しぶりに、米国の良心をみたような気がする。
■こんなアーカイヴも
・「O・J・シンプソンが告白本を出版」
・映画『白いカラス』
・「プライドと情熱」ライサ国務長官物語
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