千の天使がバスケットボールする

クラシック音楽、映画、本、たわいないこと、そしてGackt・・・日々感じることの事件?と記録  TB&コメントにも☆

「カラヴァッジョ」と「ハーツ・アンド・マインズ」

2010-06-18 23:49:20 | Nonsense
洪水のような大量の情報の渦の中でおぼれかけつつ、まさに自分が興味と関心をもっていたことに関わる事柄や事件が、まるであらかじめ”自分のために”用意されたかのようにあらわれることがある。こんなことはおそらく誰にでも経験があるのだろうが、朝刊と夕刊で気になった話題をふたつ。

【カラバッジョ】
********************************************************
伊バロックの巨匠カラバッジョ、遺骨ほぼ特定
イタリアの専門家グループは16日、同国の画家カラバッジョ(本名・ミケランジェロ・メリジ、1571~1610)の遺骨をほぼ特定した、と発表した。
伊ANSA通信などが伝えた。伊中部で昨年見つかった人骨をDNA鑑定したもので、これまで謎とされてきたバロックの巨匠の埋葬地が没後400年を経て、確認されたことになる。
この人骨は、カラバッジョが死去したとされる伊中部トスカーナ州ポルトエルコレの地下聖堂で発見された頭骨や大腿(だいたい)骨など。伊ボローニャ大の人類学者らは今年に入って、カラバッジョの出身地の伊北部で、血縁者とみられる「メリジ」姓の住民のDNAを採取、人骨と照合した結果、共通性を確認した。人骨からは、バロック期の顔料に含まれていた水銀や鉛が高濃度で検出され、炭素同位体による年代測定でも没年の1610年前後のものと判明。人骨のDNAの劣化で完全な証明はできないが、「85%の確率」で本物と確認できたという。ただ、暗殺や病死など諸説ある死因については、特定できなかった。


*************************************

春にアンジェロ・ロンゴーニ監督による映画『カラヴァッジョ』を観てから、すっかりこのバロック時代の天才画家に魅せられた。血と暴力に満ちた文字通り波乱万丈の人生の軌跡にも驚かされたが、やはり作品から感じられる敬虔で深い精神性に満ちた魂にこそこの画家の最大の特徴であろう。粗暴で野卑な行動と高潔で深い精神の矛盾は、現代のカラヴァッジョ研究の隆盛に向かっているとは宮下規久朗氏の著書「カラヴァッジョ 聖性とヴィジョン」でもふれられていたが、本国のイタリアではとうとう遺骨発掘捜査活動まで行われていたのかっ。もっともカラヴァッジョがポルト・エレコレで亡くなったのは事実であり、遺骨から死因が特定できないのであれば、これまでのカラヴァッジョ研究に今回の発見はそれほどの貢献はないものと思われる。ご苦労なことだ。

・・・がっ、もっとおろろいたのが、あの女性問題がらみのスキャンダル大統領のイタリア、ベルルスコーニ首相が、1600~01年に制作されたカラヴァッジョの「聖パウロの回心」を購入するというニュースだ。作品はローマのオデスカルキ家が所蔵し、保存状態も非常に良好で宮下規久朗鑑定団によるとこのお宝はまず100億円はくだらないだろうということだ。大富豪でもあるベルルスコーニ首相の資産は米経済誌フォーブスによると90億ドル(約8200億円)で、この作品に1億ユーロ(約112億円)以上を提示しているそうだ。もし首相が1億ユーロでこの絵画を購入できたらとても幸福だろう。しかし、回心が必要なのはベルルスコーニ氏ではないかと考え、つらつら回心が改悛、首相の顔を思い浮かべたら”回春”といただけない連想になってしまった。

そして夕刊の映画の話題で見過ごしてしまいそうな小さな記事で紹介されていたのが映画『ハーツ・アンド・マインズ』である。

【ハーツ・アンド・マインズ(心と精神)】

そもそも1975年のアカデミー賞最優秀長編ドキュメンタリー映画賞を受賞したこの映画を知らなかった。何もアカデミー賞受賞という権威で本作に価値を認める気持ちはさらさらないが、今愛読している「深代淳郎の天声人語」(昭和50年8月23日の「天声人語」掲載分)にこの映画の感想が書かかれている。タイトルは「恥ずかしい国」で、欧米では一般に公開されている映画が採算がとれないという理由で日本では公開されないことに深代氏は苦言を呈している。怒りの対象は、映画配給会社ではなく我々日本人である。

「一時あれほでベトナム反戦で燃え上がった日本で、お客がこないとはどういうことだ」と。

そう、この映画はベトナム戦争を俯瞰でとらえた記録映画である。日本では劇場で未公開だったが試写を観る機会があった深代氏の名文をもう少し紹介しよう。

「評判にたがわず、見事な映画だった。全編は記録映画だけであり、余計な注釈も解説もない。人間の情緒ではなく知性に訴えて、この映画は感動を誘いだす。「ベトナム戦争」とは、米国の中の闘いであり、各人の良心との格闘であったことを教えてくれた。」

わずか3年弱の短い期間に、朝日新聞誌上に奇跡のような珠玉の「天声人語」を産みだした最高の名文家、深代氏が唯一とりあげたこの映画を観たい!と思ったら、東京では2010年6月19日(土)~7月16日(金) 東京都写真美術館で上映される。偶然とはいえ、不思議な気持ちがする。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿