千の天使がバスケットボールする

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コンサバ化する女子学生たち

2010-04-25 15:59:10 | Nonsense
もうとっくにお蔵入りになっている話題だが、当代随一の美形歌舞伎役者と民放アナウンサーの婚約記者会見の報道写真を見て考えさせられるものがあった。
歌舞伎の中の”名門”という意味が私にはよくわからないのだが、名門とうたわれる梨園の若旦那、人気役者と、(私はユーチューブで初めて拝見したのだが)とてもとても美しく清楚なニュースキャスターの女性が並んだお写真は、おふたりの芸能界でのゴージャスな”大物感”と”高級感”のオーラがまばしいくらいに感じた。このように金屏風を背負って、歌舞伎役者らしい紋付袴、辻が花染の総絞りの振り袖、興奮気味の報道人にいやみなく披露する左手薬指の3.3カラットのダイヤモンドの婚約指輪は、閉塞感だたよう日本で久々にあかるい話題だった。歌舞伎役者との婚約で、ひとくくりに女子アナと芸のないタレント並み扱いだった彼女も、「小林麻央さん」になりちょっとした皇室の方クラスの昇格だと思われる。
麻央さんのブログを訪問してあらためて感じたのだが、彼女は単に容姿が美しいだけでなくいかにも良家のお嬢様らしいファッション、決してとがった先端の服やチープなファストファッションを着ることなく、上質だがいかにも高そうなブランドものでもなく誰からも好感がもてるコンサバ系。髪型もそれにふさわしくショートでもロングでもない肩にかかるくらいの長さでゆるくウエーヴがかかっている。歌舞伎界きってのモテモテ男のプレイボーイを見事に陥落させた「おっとりとして、それでいてきちんとしたお嬢様」の求心力の大きさをまさしく見せつけられたと感じる女性が多かったのではないだろうか。

精神科医の香山リカさんが、おふたりの婚約報道を次のように分析している。
自己主張の強いイメージのある女優たちと浮名を流した海老蔵さんの落ち着き先が控えめな麻央さんだったことから、マスコミはふたりの恋を美しく語り、「結局、男性はこういう女性を選ぶ」と暗に示す。すると結婚願望の強い女性は、「やっぱりね」とコンサバキャラに走り出す。香山さんは精神科医として勤務のかたわら、女子に人気ある某私大の心理学部で講義をされてもいるのだが、ここ数年で女子学生はすっかり保守化しているそうだ。専業主婦志向が強く、せっかく総合職につける能力がありながら「それじゃモテないから」という理由だけで、一般職に腰掛就職しようとする女子学生も少なくないとのこと。しかし、今の時代、そもそも正規社員で働ける一般職の椅子などあるのだろうか。女子大生の企業での雇用体型は、エリア型、もしくは地域型の”総合職”で、従来からの一般事務のお仕事は派遣社員が担っているのではないだろうか。歌舞伎の世界で求められる妻像は、職種の関係で万事控えめで夫を支えられる保守的な女性でなければいけないから、今回の海老蔵さんの選択を一概に世の中の男たちの好みに当てはめるわけにはいかないとは思うのだが、リカさんの意見でもっともだと思ったのが、「そのときどきにメディアが流す”トレンド”に振り回されるのは危険だ」ということだ。

しかし、トレンドはともかく、今時の若者の保守化もそれなりに理由がありそうだ。
勤務先の女性社員たちを遠くから眺めていて思うのだが、一般職から転勤のない総合職への転換に伴い、当然ながら仕事への責任や求められる役割が重くなっている。不景気でぎりぎりの人員体制で、正社員から派遣社員へのシフト、いつやめられるかわからない非正規社員に囲まれて、結婚、子育てとの両立はなかなか厳しいと思われる。かくして、仕事もでき人柄もよい女性は、次々と結婚して退職していく。残っているのは・・・。

人気モデルの田波涼子さんがファッション雑誌でそのおしゃれな暮らしぶりを写真とともに紹介する記事でコメントも掲載されていたのだが、「主人の好みは・・・、主人が・・・・」と、夫をしきりにたてる良妻イメージの演出が伝わってきた。そういう雑誌ではないぞ、とも思ったのだが、素敵な彼女の口から夫よりも”主人”という名称が出てくるところで生活のクラスの高級感がアップしている。結婚が永久就職と言われたのは、昭和の時代でおわった。離婚も増えたし。とはいえ、こんな厳しい時代では、専業主婦はひとつのこころがやすらぐという意味では安定した就職先にみえてくる女子学生にも同情するものもる。

そんな女の子たちを養わなけれいけない男たちも大変だ。
山田昌弘さんがその著書「なぜ若者は保守化するのか」で、フランスの経営大学院の日本視察団と、日仏の労働状況について懇談したそうだ。
彼らは日本の最低賃金を聞いて驚き、また、200万人を超すフリーター数を聞いて驚いたそうだ。「そんな賃金ではまともな暮らしができないではないか、どうして日本の低収入の若者はデモや暴動を起こさないんだ」と山田さんに質問してきた。私が日本の若者は学卒後も親と同居して生活を支えてもらっているから低収入でも暮らしていけるというと、「日本の経営者がうらやましい。母国語を話せて文句も言わない若者がそんなに低賃金で雇えるんだ」と言っていた。
非婚率が高くなるのも道理。