青森県下北半島にある核燃料リサイクル基地建設は、それに先立って構想されたむつ小河原湾開発計画と連動して構想された。
上下からなるこのルポルタージュは、六ヶ所村(倉内、平沼、鷹架、尾鮫、出戸、泊)とその周辺地域の100年に及ぶ悲劇の記録である。上巻では「新全国総合開発計画」(1969年5月に閣議決定)をめぐって展開されたこの地域の政治、社会事情が、多くの聞き取り調査、実態調査を踏まえ、克明に書き込まれている。
この政策を実現するために国、県、民間ディべロッパー(むつ小河原開発株式会社)、不動産会社は文字通り官民一体となって、代替地の提供、カネのバラマキといったエサを与えて農民の土地の買収をはかった。
「新全総」は忘れられた土地、高度成長から見放された地に、鉄鋼、石油化学を軸とする壮大な臨海コンビナートを敷設し(エネルギー源として原子力を利用)、さらに情報・交通ネットワークで結ばれた世界に比類のない夢の産業ベルト地帯をつくろうというものだった。当然予想されたのは、農民からの土地の没収、漁民からの漁業権の剥奪、自然破壊と公害のまきちらしである。六ヶ所村を中心とした周辺の人々は、開発反対の闘いにたちあがる。
本書では、戦後満洲帰りの農民によって進められた開発(その前史も詳しく説明されている)、「新全総」前後の資本、体制側の策謀とそれに抵抗する農民の闘いが生き生きと描写されている。
目次:「1 開発前史」「2 侵攻作戦」「3 挫折地帯」「4 開発幻想」「5 反対同盟」「6 飢渇(ケガツ)の記憶」「村長選挙」。
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