【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

石川達三『充たされた生活』新潮社、1964年

2007-05-17 00:30:59 | 小説
石川達三『充たされた生活』新潮社,1961年。

  板橋の古本屋で100円。面白かったですね。大分前に、5時間かけて(しかし、休日一日で)読了しました。

  20代後半の女性の独白形式で話は進みます。主人公は,「白鳥座」の俳優、じゅん子。吉岡という金銭感覚ゼロで我侭な男と3年間の結婚生活を清算,劇団で端役をこなしながら,ラジオ・ドラマに出演し,生活することになります。充たされない生活。

 脚本家,劇団員,友達,学生と関わり,男を遍歴しながら彼女は考え,悩みます。誘惑,駆引き,打算もでてきます。

 「男性は消耗することで自ら充たされるが,男性の終わったところから女性の活動(みごもり,産み,育てる)が始まる。その事によって女性は完全に充たされる(p.190)・・女にとって男は過程であり,手段である(p.214)」。

 これは、凄い言葉ですね。

 後半,60年安保条約反対運動が背景にでてきますが,じゅん子は,請願デモ中,右翼のなぐりこみで大怪我をした脚本家の石黒と再婚を決意します。石黒は,ずうっと彼女の相談役として精神的に側にいた男性でした。

 「わたしは,彼の子を産むことが出来る。それこそ女の勝利だ。・・・愛などという生ぬるいものではない。生きるための闘いだ。・・いまから,新しい闘いの人生がはじまる・・」(p.299)。この小説は、この言葉で終わります。
 
おしまい。

 

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