【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

小川洋子『薬指の標本』新潮文庫、1998年

2010-04-16 00:34:48 | 小説
                                                      
                         
  「薬指の標本」「六角形の小部屋」の2作品がおさめられています。

 「薬指の標本」は、清涼飲料水を作る工場にかつて勤めていて、そこで事故で左手の薬指の先を失った主人公が標本をつくる仕事を行っている標本室に再就職。そこは楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡など、人々が思い出の品々の標本化を依頼しにくるところです。

 不思議なことにここで勤めた過去の職員はいつのまにかいなくなってしまっているとの噂がたっていました。

 「わたし」は、ある日そこの室長であり、標本技術士である弟子丸氏に、足に見事にぴったり合う靴をプレゼントしてもらいます。室長と「わたし」は仄かな恋愛関係に陥ったのでした。愛鳥の骨の標本を依頼しにきた靴磨きの男は、「わたし」に靴を脱がないとくかいするよと忠告してくれたのでしたが、「わたし」はそれを脱ぐ気にはなれません。忠告は見事にあたったかのようで・・・。「わたし」は・・・。

 不思議なアンニュイな気だるさも漂う小説です。何とフランスで映画化されたとか。

 「六角形の小部屋」も奇妙な非現実感がたちこめた小説です。主人公はまたしても「わたし」。スポーツクラブのプールの更衣室で偶然に出会った老夫人とミドリという女性。「わたし」は医科大学の事務員で、そこの若い医師と恋愛関係にありましたが、今では破綻しています。

 背骨が痛むこのごろ。そんな時にこの二人の女性に出会ったのでした。最初の出会い以降も何度も偶然に合います。ある時、スーパーでまたふたりを見かけました。

 「わたし」は知らず知らずにふたりを尾行すると、「社宅管理事務所」にふたりは入っていきました。「わたし」もそこへ入っていくと、若い男の人、ユズルがいて、そこには六角形の小部屋があり、語るだけの小部屋と言われていました。

 「わたし」はそこに入ってみることに。問わず語りで「わたし」は過去のことを話し始めたのですが・・・。「わたし」は何度もこの小部屋に通いはじめます。

 しかし、語りの小部屋は解体され畳まれて別の場所に移動することを常とし、その日が近づいていました。

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