著者「あとがき」によると、幕末から明治にかけての混乱と変動の時代に果敢に生き、行動した人々はたくさんいて、彼らは多くの失敗と挫折を繰り返し、試行錯誤を重ね、なおそこにも前途に燭光を見出し、時代の先駆けになろうとしたようです。
本書は、そうした人たちに長年関心を抱き続けてきた著者が2009年が横浜開港100年にあたったことを切っ掛けにこの地で上記の活躍をした21人に絞り、列伝風にまとめたものです。横浜が選ばれたのは、自身は横浜に生まれ育ったから、とのことです。
「海浜を埋め立てた速成の人口の活舞台に、われこそはと自己を恃み、あるいは乾坤一擲の運命を賭して、多くの若者がいっせいに流入してくるという光景は、史上類例のないことであり、破天荒なドラマの生まれないほうが不思議である」(p.303)と著者は書いています。
それでは、その21人とはどのような人々なのでしょうか。「Ⅰ 黒船から押し寄せた変革の波」では、7人が取り上げられている。J・C・ヘボン(伝導医師・ローマ字創始)、中川嘉兵衛(食肉業・製氷事業)、仲居屋重兵衛(生糸貿易商)、若尾逸平(生糸商)、下岡蓮杖(写真家・画家)、原善三郎・原三渓(生糸商・文化事業)。
「Ⅱ 開化の潮流に掉さす先駆者」に登場するのは、次の8人。内海兵吉・打木彦太郎(製パン業)、五姓田芳柳・五姓田義松(洋画家)、高島嘉右衛門(事業家)、岸田吟香(新聞創始者・事業家)、田中平八(生糸商・相場師)、メアリー・E・キダー(女子教育家)。
「Ⅲ 風雪の時代を駆け抜けた人々」には、次の6人がラインナップです。前島密(郵便事業)、早矢仕有的(商社創業)、堤磯右衛門(石鹸製造)、大谷嘉兵衛(製茶業)、雨宮敬次郎(相場師)、快楽亭ブラック(噺家)。
メアリー・E・キダーはフェリス女学院の創設者。早矢仕有的は現在の「丸善」の創業者であ(pp.228-230)、その有的にはハヤシライスの元祖説(p.236)もあるといいます。大谷嘉兵衛は太平洋に海底電線敷設に貢献した人物です(pp.267-279)。
本書に載っている人物は、それぞれに魅力的であり、もっと知りたいと思ったことがすくならずありましたが、巻末の参考がそのために役立つでしょう。
また、珍しい写真がたくさん掲げられています。著者はどのようにこれらを集め、取捨選択したのでしょうか。本づくりの観点から、興味をもちました。
最新の画像[もっと見る]
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます