【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

木村久邇典『山本周五郎のヒロインたち』文化出版局、1979年

2012-11-26 00:30:19 | 文学

  作家山本周五郎が描いた代表的ヒロインを「武家の女」と「町家の女」にグループ分け、彼女たちの魅力を小説の筋立てにそいながら紹介し、周五郎文学の本質を詳らかにした本。

  「武家の女」は「貫く女(「箭竹・みよ」)」「あたたかい女(「不断草・菊枝」)」「つよい女」(おもかげ・由利)「尽くす女(虚空遍歴・おかや)」「わるい女(醜聞・さくら)」に、「町家の女」は「負けない女(「かあちゃん」・お勝)」「支える女(「ちゃん・お直」)」「くじけない女(「柳橋物語・おせん」)」「逃げない女(将監さまの細道・おひろ)」「愛する女(「つゆのひぬま・おぶん他」)」「復讐する女(「五瓣の椿・おしの」)」「かわいい女(「水たたき・おうら」)」「滅びる女(「おさん」)」の構成である。

  とりあげられた小説のなかで、わたしが読んだことがあるのは「五辡の椿」のみ。これまで周五郎は全くといってよいほど読んだことがないが、「五瓣の椿」だけが読んだし、その映画も観た。

  「慟哭の人」という周五郎の人と文学を解説した文章が冒頭にある。周五郎の小説を「義理人情」のそれとみる向きもあるが、著者は意見を異にしている、だから次のように書くのである。「まさに山本周五郎は、人間という生きもの、なかんずく日の当らぬ場所に体をよせいあい、一日一日の生を模索するまっとうな人間の営為の哀れさに、激しく感動する慟哭の作家であった」と(p.44)。

  本書は17人の女性をとおして17通りの女性の生き方を描き、それぞれの女性が登場する小説をたっぷりと紙幅をとってそのあらすじを書き、もういちどコメントを書くために整理しなおしている。これだけで、周五郎の小説を読んだ気にならしめてしまうほどだが、それは邪道で、原作にあたることをしないで読んだつもりになったのでは、それは著者の本意からはずれたことになるだろう。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿