西川和子『スペイン宮廷画物語』彩流社、1998年。
ベラスケスの「ラス・メニーナス」は、どのような歴史的意味をもっているのか?
この絵に込められた意味を探るためにカスティーリャ王国のイサベルとアラゴン王国の王子フェルナンドの結婚の経緯からひもとき、女王ファナ、カルロス一世、フェリペ二世、フェリペ三世、フェリペ四世、カルロス二世といった人物、相関図(1500年からの200年)が、はたまた彼らの描かれた当時の代表的絵画の紹介とともに詳らかにされます。
複雑でごしゃごしゃした縁戚関係が整理され、わかりやすくなっていますが、それでもなお頭に入りにくいところがたくさんあります。
「ラス・メニーナス」には王女マルガリータを中心に、女官マリア・アグスティーナ(水差しの壷を差し出している)、女官イサベル・デ・ベラスコ、マルガリータの両親フェリペ四世とマリアーナ・デ・アウストリア、侍従のホセ・ニエト、そしてこの絵を描いたベラスケス当人も登場しています。
マリアーナはフェリペ四世の4番目の妃、しかし彼女は本当は息子バルタサル・カルロスの妃になるはずでした。フェリペ四世にとってマリアーナは自分の実の姪でしたから、30歳も年が離れていました。だから不本意な彼女をこれ以上苦しめないよう、彼女が産んだマルガリータをことのほか可愛がり、この絵を含めて何枚ものマルガリータの絵をベラスケスに描かせたました。これは著者の推測です。
ざっくばらんな文体で書かれているので読みやすいです。相当にスペイン語の本を読み込んで、知識を得ている形跡が感じられます。
「エル・エスコリアル」の存在も初めて知りました。
おしまい。
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