【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

一海和義『知っているようで知らない漢字』講談社、1991年

2013-05-31 00:09:06 | 言語/日本語

   漢字に関して、常識的なこと、例えば、その読み方に、漢音、呉音、唐音、慣用音があることなどはもちろん、あまり知られていないこと、例えば、中国の簡体字と日本語で使われる漢字の略字の考えとの相違、漢字には助詞、前置詞、関係代名詞を使わないで長い言葉を作る機能があること(一つの極端な例:県立広洋高等学校創立三五周年記念秋季大運動会準備実行委員会企画小委員会広報部会大三回中間報告草案検討会議)まで、さまざまなことが、体系的に書かれています。今後、漢字がなくなるかどうかについても論じています。著者は、そこで、「終には必ず廃せられて、久しくは存する能わざるも、暫時必ず存せられて、遽か(ニワカ)には廃する可からず」という中国の代表的言語学者の意見を引いています。面白いです。

  構成は4部からなる。「Ⅰ うっかり読み誤りやすい漢字」「Ⅱ 同じ意味でもちがう漢字」「Ⅲ 漢字から仮名が生まれるまで」「Ⅳ あなたは漢字の変化についていけるか」。

  全体のコンセプトは、漢字文化に囲まれているわたしたちは、それでは漢字のことをよく知っているのかと問えば、案外何もしらないのではなかろうか、と疑問を発し、それをセミプロの視点で明らかにしていこうという姿勢です。漢字はなぜ漢字と言うのか。日本人は漢字をいつごろから使いだしたのか、使いこなせるようになったのか、漢字はどれくらいの数があるのか、日本でつくられた漢字(国字)はいくつあるのか、「蟲」の字と「虫」の字との関係は。「森」はどうして日本でだけ「モリ」を表し、中国ではその意味でつかわれないのか、画数が最も多い漢字は何か、漢字と仮名をどれくらいの割合でまぜると読みやすい文章になるか、などなど。

  わたしの姓名のなかの一字である「」は「崎」と微妙に違う。戸籍では「」が使われていますが、生まれてこのかた、「崎」を使ってきました。2つの漢字はどう違うのか。知らなかったのですが、この本でわかりました。

  要するにアマチュアの素朴な「疑問」によりそって、それらを「Q&A」形式で安易に説明するのではなく、ある程度、体系的に、論理的に答えようとしているのがこの本です。


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