幼少の頃から多彩なことば遊びを経験してきた(犬棒かるた、数え唄、百人一首、暗号解き、小説の書き出しの暗記など)著者が「日本語が危ない」との危機感から、日本語のユニークさにもっと関心をもってこの本を書いた。
しゃれ、比喩、漢字の読み、漢字の分解、回文、なぞ(二段謎、三段謎)、いろは歌、無理問答、折り句、記憶術、替え歌などさまざまな切り口で、ことば遊びを楽しんでいる。わたしたちも子どもの頃から親しんできたものがたくさんあるが(もちろん知らないものはたくさんあった)、このように分類して紹介されると、あらためてその多様性、日本語の豊かさに驚かされる。
回文(「竹やぶ焼けた」のように上から読んでも下から読んでも同じ文章になる)では、ものすごい例が紹介されている。確かめるのもめんどうな、あきれるような例である(pp.117-8)。いろは歌は、ひらかなを一度きり使ってくみあわせ、ひとつの詩歌をつくるおちうものだが、これは予想外にかなり作れるものらしく、新聞社や雑誌社がかつてコンクールをしていて、入選作が紹介されている。200も300も、否、数千も可能らしい(p.143)。たまげてしまった。
著者自身がいくつかの自作を紹介している。三段謎では、多くの自作「作品」を掲げている。たとえば、「野村野球とかけて朝鮮半島と解く。こころは長い島にまけたくない」。折り句では、この新書の出版社である「いわなみしょてん」を折り込んで「『い』ずの海『わ』たつみの青『なみ』白く『しょう』ねんの凧『てん』高く舞う」がそれである。
この種のことば遊びには、すぐれた「先行」業績があるようだ。鈴木棠三『新版 ことば遊び辞典』(東京堂出版)、篠原央憲『いろは歌の謎』(カッパブックス)がそれ。著者は部分的にその業績に依拠した考察をしているが、議論はより発展的だ。
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