【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

なかにし礼『さくら伝説 松坂慶子写真集』バウハウス、2002年

2014-01-23 22:40:25 | 美術(絵画)/写真

           

  「さくら伝説」というのは、古来、桜の樹の下には、桜鬼という魔性の女は棲んでいて、その鬼が人の心を狂わせ、多くの死体がその根元に埋まっているといものである。著者はそういう桜の樹を長年さがしていて、あるとき奈良仏隆寺でそれにでったという。その樹はおよそ900歳とのことであった。まことに大きな堂々たる不滅の命を生きる桜の樹である。それに酔うことは、輪廻転生への無意識のあこがれをもつこと。


  著者はまたいつのころからか、男女の悲恋の物語を考えていた。念頭にあったのが、京の島原にいた揚巻という名の太夫と助六という色男。ふたりはこの世をはかなんで心中をとげた。心中したはずの助六と揚巻が後の世に、歌舞伎の演目「助六由縁江戸桜」となった。著者の想像力はとどまるところを知らず、仏隆寺の千年桜と助六、揚巻の悲恋の物語で、助六と揚巻の心中した場所としてこの桜の樹を選ぶという形で、つなぎあわせ、新しい話をつくりあげた。それが女主人公響子とその夫である帯刀杜夫の怪しい男女間の愛の物語である。

  著者はそれを「桜の精気に惑わされ、官能の極点を求めて死に急ぐ男と女の物語」と書いている。小説の展開にそって、千年桜と松坂慶子が写真で登場する。美の化身は、妖しくも美しい。


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