「はんなり、ほっこり」は京ことば。はんなりは、花からきた言葉。花が匂いでるような美しさ、愛らしくどこかちょっと押さえて、うすあかりがさすようなきれいさ、のこと。
ほっこりは、こころよい疲れを表現することば。はんなりも、ほっこりも女のことばではないかと、著者は書いている(pp.20-21)。
このエッセイ集は、新聞の「はんなり、ほっこり」という欄に連載された文章に、他のいくつかとあわせて編集されている。
女性の力強さ、したたかさ、しかし半面、ものを言ってはいけない、学ぶ必要はないと育てられ、黙らされてきた過去があり、それをひきずっていることを直視し、理不尽さにことにはもっと声をあげよう、と励ましている。
時代は1990年前後で、トマホーク配備、国家機密法がたくらまれた頃、そうした政治状況に警鐘をならしている。かと思えば、父、母への思いやり、ぬか床の作り方、家族団欒への郷愁など家庭的なエッセイもいくつかあり、女らしい文章が続く。
著者は国語学者だったので、ことばには敏感。遠藤織枝さんの「女の目でみた『広辞苑』」の紹介をみつけ、何か得をした感じ(p.208)。
京都の秋のもみじの美しさを讃えた文章の末尾に、少し山の奥になるけれども、常照皇寺を是非、訪うてほしいとあり(p.132)、わたしは昨年、ここに行ったので、嬉しかった。