【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

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山口義行「山口義行の”ホント”の経済」スモールサン出版、2012年

2012-07-26 00:02:50 | 経済/経営

              

  当面する経済問題の本質をストレートに明るみに出し、まことに歯切れがよい。


  3部からなり、第1部「日本の"今”」では消費税、TPP、日本の財政に関する問題が、第2部「世界の"今”」ではギリシャ問題(EU問題)、アメリカ経済の現況が、第3部「中小企業の"未来”」では中小企業のあるべき姿が、それぞれ論じられている。巷に流布されている俗説のどこがいかに誤っているかをときほぐしながら、経済の”ホント”に迫っているので、山口教授の見解がある種の清涼感とともに、胸に落ちる。

  たとえば、消費税問題では、この税金を払わなければならないのが「事業者」であり、税率UPを消費者に転嫁することが難しい中小企業は大変な迷惑を被る、TPPは農業だけでなく医療制度、建築業界とも深くかかわる、またISD条項(相手国に投資した企業がそこで損害を受けた場合、世銀傘下の国際投資紛争センターに提訴できる)の存在を無視しえないこと、日本の財政が破綻直前にあるとしきりに喧伝されているが、事態を慎重にみるべきであるtこと、それより怖いのは経常収支赤字であること、ギリシャの財政危機は確かに深刻なのだが、デフォルトさせない仕組みはすでにできあがっていること、デフォルト説の背後で投機筋が国債の空売りで儲けようとのたくらみがること、現在のEUの危機で、構成各国の結束がとよまっていること、などが意外な事実が次々と示される。

  さいごの中小企業論では、著者がそのたちあげに関わったスモールサンに参加している企業の豊かな経験、工夫が紹介され、日本中に閉塞感を蔓延させている「市場の成熟化」論に対し、発想の転換を迫る経営実践の数々が未来展望の契機になると、箴言している。

   論述は対話形式で組まれ、インタビューにはスモールサン事務局の柳田のぞみさんがあたっている。各部末尾の「深読みQ&A]ではタイムリーな問題を文字通り根底から明らかにされていて勉強になる。

 著者からの献本。