【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

浅田次郎『勇気凛凛ルリの色』講談社、1996年

2012-07-13 00:09:51 | エッセイ/手記/日記/手紙/対談

         

   表題の「勇気凛凛ルリの色」はかつて流行した江戸川乱歩原作のラジオ探偵ドラマの主題歌からとったよう。余程印象に残っていたのだろうか。著者の子どもの頃にであったドラマ作品だという。


   このエッセイ集は、先日読み終えた同じ著者の「ま、いっか」とはだいぶ異なった読後感をもった。ホントに同じ著者なのかと思うほどだった。

   著者は特異な人生経験をふんでいて、それが前面にでている。子どもの頃の不幸な家庭生活、自衛隊入隊(第32普通科連隊)、そこをやめて怪しい投機的な仕事に手を出し、その後、作家に。紆余曲折はあったが作家には、なりたくてたまらなかったらしい。競馬、たばこの愛好者なのでその経験も披歴されている。

   そして、著者が作家としてデビューした頃(40歳)からあまり時間はたっていない、のでやや気負い、照れ隠しもある。時代は、神戸の大地震があり、直後にオウム事件があり、そのあたりへの率直な意見表明もある。

   内容は特異な人生と世相が前提なので、はちゃやめちゃ。男色もあれば、若い娘とのホテル恋愛(?)もある。面白すぎるが、「ホントの話か?」というものが次々と出てくる。わたしだけでなく、誰もがそう思うらしいが、著者によれば「ホント」なのだそうだ。もっとも、この作家一流の諧謔、ユーモアのオブラートはあるだろうし、それは個性として捨てがたい。

   自衛隊での経験は誰もができるわけではないので、そこで経験したこと、思ったこと、また兵器の扱いや自衛隊に関わる世間の誤解の指摘、などには耳を傾けた。