【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

千住家の調和と葛藤

2010-02-20 01:11:14 | 音楽/CDの紹介
千住文子・千住真理子『母と娘の協奏曲』時事通信社、2005年
            
             

 千住家は凄いとよくいわれます。誰でもそう思います。

 ヴァイオリニストの真理子さん,画家の博さん,作曲家の明さん。みな一流で,現役。

 何故,そのような子どもったちが育ったのか,この本を読むと母親の文子さんはよく尋ねられるようです。

 本書は,その母親と真理子さんとの対談です。子ども達の音楽との,特にバイオリン教育で名をなした鷲見三郎との出会い,江藤俊哉の苛酷なレッスン,印象的なシーンの描写があります。

 本書前半では,母娘のお喋り(やや散漫な?)の感じが強いですが,後半は,千住家の中の葛藤,芸術論で火花が散り,一気に盛りあがっていきます。

 演奏家の真理子さんが「演奏の評価を自分自身で見際めにくい,究極的に何を目指して弾くのか,芸術の山の頂点は何か,神ではないか」と言うのに対し,文子さんはこれを即座に否定し,それは「(我の)人間性」と反駁しています。真理子さんの悩みは「底辺」の話で,「拍手」とか,「演奏家としての引き際」などを考えるのは「よこしま」(p.211)と決めつけます。

 慶応大学の教授(経営工学専攻)だった父親は影が薄く,特異な人格ですが,バックボーンとしての存在は否定しようもありません。

 夫の死後,文子は一時体調をくずしましたが,病い癒えて蘇りました。偉大な母親です。

 真理子さんの演奏は一度,東京芸術劇場で聴いたことがあります。