【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

ヤメ検弁護士(地検特捜部)の半生 田中森一『反転』(幻冬舎)

2010-02-04 00:40:44 | ノンフィクション/ルポルタージュ
田中森一
『反転-闇社会の守護神と呼ばれて-』幻冬舎、2007年

                        
                              


 大阪地検特捜部、そして東京地検特捜部での経歴をもつ検事が、弁護士に転職。企業の顧問弁護士を務め、犯罪者の弁護を担当するな政界、経済界の要人、闇の組織の関係者とのつきあいが出来、石橋産業手形詐欺事件に巻き込まれ、実刑判決を受けます。本書はその当事者である著者の半生の記です。

 本書によれば、著者は長崎県北松浦郡船越で生まれ(1943年)、貧しい少年時代を過ごします。貧困家庭ゆえの苦労、屈辱を味わいながらも苦学して岡山大学入学、在学中に司法試験に合格しました。

 1971年検事任官以後、叩きあげの鬼検事としてさまざまな事件を手がけ(燃糸工連汚職、平和相互銀行不正融資事件)辣腕ぶりを発揮するのですが、三菱重工CD事件(転換社債の乱発)、苅田町長汚職事件で横槍が入り捜査中止を余儀なくされ、検事の仕事に見切りをつけたとき、母が脳梗塞で倒れ、これを直接の契機に検事として務めあげることを断念、検事業務の対極にある弁護士として再出発したとあります(1987年)。

 時代はバブル最盛期の時期で、著者は弁護士といっても企業、闇(アウトロー)の組織が関わります経済事件の被告を擁護する立場であり、業務の傍ら法外な大金を得たり、金銭感覚がマヒするような事件に遭遇します。

 挙句の果てに、石橋産業から約束手形をだまし取ったという容疑で逮捕され、東京高裁で実刑判決を受け、裁かれることになりました。(著者は実刑判決を受けました)

 著者の半生の一部始終が語られ、不断接することのできない司法界の動き、この世界の人々の手練手管が手に取るようにわかりました。それにしても、司法界の裏表を熟知しているはずの著者がどうして犯罪に手をそめてしまったのでしょうか? 本書に書かれているように、検察の恨みをかったために、罠にはまってしまったということなのでしょうか? はたまた。金銭感覚を失うとともに、倫理観も麻痺してしまったのでしょうか?

  朝日新聞1月23日付朝刊に、田中元弁護士が詐欺事件で大阪高裁(ニ審)で実刑判決を受けたことが報じられています。