【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

「鬼押出し」や浅間山を背景とした小説群「草すべり」

2010-02-09 00:18:34 | 小説

南木佳士『草すべり』文藝春秋、2008年

         

 「鬼押出し」という場所が出てきます。一度、行ったことがあります。

 著者は、その場所を次のように書いています、「浅間山から下山するとき、山すその道路がすぐにそこに見えていて簡単に下れるルートがあり、晴れて見通しのよい日はそうでもないが、霧が出てくると迷いやすく、天明三年の大噴火のときに流れ下った溶岩が冷えて固まり、割れて巨岩となり、迷路のようになっている」、と。

 はっきりした記憶ではありませんが、確かこのあたりをレンタカーで走ったのです。車を降りて、観光しました。凄いところがあるものだ、との印象が脳裏にあります。

 「浅間山という名の独立峰は存在せず、第一外輪山の黒斑山、第二外輪山の前掛山、それに火口の盛り上がりである釜山を合わせて全体を浅間山と称するらしい」(p.155)。そういうことなのでしたか。

 作家であり医者であり、最近父を亡くし、自身も精神的に病み、ようやく立ち直って、健康のために浅間山界隈の登山を始め、そこで出会った現実の人たちとの対話と記憶のなかの自分とがいったりきたりする話が小説となっています。

 諦念というか、あるがままの現実に抵抗することなく受け入れ、その感覚を大切にした話が多いです。

 「草すべり」「旧盆」「バカ尾根」「穂高山」の4編。