利上げでインフレ抑制できる? 景気・輸入物価を抑えるが供給難には別対策が必要
Q 金利を上げるとなぜインフレを抑制できるのですか。(読者)
A 各国の中央銀行が金融市場調節の基準とする短期金利(政策金利)を引き上げることを「利上げ」といいます。利上げが物価の抑制につながると考えられるのは、主に二つの効果によります。
一つは景気の抑制です。中央銀行が利上げを行うと、一般の銀行の資金調達コストが増えるので、銀行は顧客に資金を貸し出す際の金利(貸出金利)を引き上げます。企業と個人は銀行から資金を借りにくくなり、設備投資と個人消費が減退します。商品を売るための企業の競争が激しくなり、値下げが進むと考えられています。
半面、急激な利上げは景気の腰折れリスクを伴います。資金繰りの悪化による企業破綻や、変動金利の上昇による住宅ローン破綻の急増を招く恐れもあります。
もう一つの効果は輸入物価の抑制です。資本は金利の低い国から高い国へと移動する傾向があります。金利を引き上げた国の通貨は買われ、自国通貨高になりやすいということです。自国の通貨が高くなれば、他国から物資をより安く輸入することができます。
今年3月以降、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が6会合連続で利上げを進めた結果、「ドルの独歩高」が生じました。物価高騰を抑えるため、多くの国が米国に追随して利上げに踏み切りました。世界は「通貨高競争の様相」だともいわれています。
日本銀行本店=東京都中央区
ただし現在、世界と日本が直面する物価上昇の大きな要因の一つは、供給のひっ迫です。新型コロナウイルス対策の都市封鎖やロシアのウクライナ侵略に伴い、部品・食料・資源などの供給が不足し、価格が高騰しています。そのため、利上げだけでは物価上昇を抑制できないという指摘があります。
世界銀行のマルパス総裁は9月19日、「インフレ対策の一つは生産を増やすことだ」と強調。経済力のある国は「生産部門に資金を回す政策を講じる必要がある」と訴えました。
現在の日本の物価上昇についても、総合的な対策が求められます。輸入物価を押し上げている異常円安の主因は日銀の超低金利政策です。賃上げを軸に実体経済を立て直し、マイナス金利などの異常な金融政策を正常に戻す展望を切り開かなければなりません。食料やエネルギーを輸入に頼るぜい弱な経済構造を転換し、国内供給力を高めるための産業政策も必要です。
日本共産党は「物価高騰から暮らしと経済を立て直す緊急提案」(10日)を発表しています。その柱は①賃上げを実現する緊急で効果のある対策②消費税の緊急減税、社会保障と教育の負担軽減③中小企業・小規模事業者の大量倒産・廃業の危機を打開する抜本的な支援策④食料・エネルギーの自給率向上―の4本です。
(2022・11・22)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年11月22日付掲載
利上げが物価の抑制につながると考えられるのは、主に二つの効果。
一つは景気の抑制。中央銀行が利上げを行うと、一般の銀行の資金調達コストが増えるので、銀行は顧客に資金を貸し出す際の金利(貸出金利)を引き上げます。企業と個人は銀行から資金を借りにくくなり、設備投資と個人消費が減退します。商品を売るための企業の競争が激しくなり、値下げが進むと。
もう一つの効果は輸入物価の抑制。資本は金利の低い国から高い国へと移動する傾向があります。金利を引き上げた国の通貨は買われ、自国通貨高になりやすいということ。自国の通貨が高くなれば、他国から物資をより安く輸入することができる。
現在の日本の物価上昇についても、総合的な対策が。輸入物価を押し上げている異常円安の主因は日銀の超低金利政策。賃上げを軸に実体経済を立て直し、マイナス金利などの異常な金融政策を正常に戻す展望を切り開かく方向へ。食料やエネルギーを輸入に頼るぜい弱な経済構造を転換し、国内供給力を高めるための産業政策も必要。
Q 金利を上げるとなぜインフレを抑制できるのですか。(読者)
A 各国の中央銀行が金融市場調節の基準とする短期金利(政策金利)を引き上げることを「利上げ」といいます。利上げが物価の抑制につながると考えられるのは、主に二つの効果によります。
一つは景気の抑制です。中央銀行が利上げを行うと、一般の銀行の資金調達コストが増えるので、銀行は顧客に資金を貸し出す際の金利(貸出金利)を引き上げます。企業と個人は銀行から資金を借りにくくなり、設備投資と個人消費が減退します。商品を売るための企業の競争が激しくなり、値下げが進むと考えられています。
半面、急激な利上げは景気の腰折れリスクを伴います。資金繰りの悪化による企業破綻や、変動金利の上昇による住宅ローン破綻の急増を招く恐れもあります。
もう一つの効果は輸入物価の抑制です。資本は金利の低い国から高い国へと移動する傾向があります。金利を引き上げた国の通貨は買われ、自国通貨高になりやすいということです。自国の通貨が高くなれば、他国から物資をより安く輸入することができます。
今年3月以降、米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)が6会合連続で利上げを進めた結果、「ドルの独歩高」が生じました。物価高騰を抑えるため、多くの国が米国に追随して利上げに踏み切りました。世界は「通貨高競争の様相」だともいわれています。
日本銀行本店=東京都中央区
ただし現在、世界と日本が直面する物価上昇の大きな要因の一つは、供給のひっ迫です。新型コロナウイルス対策の都市封鎖やロシアのウクライナ侵略に伴い、部品・食料・資源などの供給が不足し、価格が高騰しています。そのため、利上げだけでは物価上昇を抑制できないという指摘があります。
世界銀行のマルパス総裁は9月19日、「インフレ対策の一つは生産を増やすことだ」と強調。経済力のある国は「生産部門に資金を回す政策を講じる必要がある」と訴えました。
現在の日本の物価上昇についても、総合的な対策が求められます。輸入物価を押し上げている異常円安の主因は日銀の超低金利政策です。賃上げを軸に実体経済を立て直し、マイナス金利などの異常な金融政策を正常に戻す展望を切り開かなければなりません。食料やエネルギーを輸入に頼るぜい弱な経済構造を転換し、国内供給力を高めるための産業政策も必要です。
日本共産党は「物価高騰から暮らしと経済を立て直す緊急提案」(10日)を発表しています。その柱は①賃上げを実現する緊急で効果のある対策②消費税の緊急減税、社会保障と教育の負担軽減③中小企業・小規模事業者の大量倒産・廃業の危機を打開する抜本的な支援策④食料・エネルギーの自給率向上―の4本です。
(2022・11・22)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年11月22日付掲載
利上げが物価の抑制につながると考えられるのは、主に二つの効果。
一つは景気の抑制。中央銀行が利上げを行うと、一般の銀行の資金調達コストが増えるので、銀行は顧客に資金を貸し出す際の金利(貸出金利)を引き上げます。企業と個人は銀行から資金を借りにくくなり、設備投資と個人消費が減退します。商品を売るための企業の競争が激しくなり、値下げが進むと。
もう一つの効果は輸入物価の抑制。資本は金利の低い国から高い国へと移動する傾向があります。金利を引き上げた国の通貨は買われ、自国通貨高になりやすいということ。自国の通貨が高くなれば、他国から物資をより安く輸入することができる。
現在の日本の物価上昇についても、総合的な対策が。輸入物価を押し上げている異常円安の主因は日銀の超低金利政策。賃上げを軸に実体経済を立て直し、マイナス金利などの異常な金融政策を正常に戻す展望を切り開かく方向へ。食料やエネルギーを輸入に頼るぜい弱な経済構造を転換し、国内供給力を高めるための産業政策も必要。