きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

人生つづった日記できた 作家、写真家 椎名誠さん

2021-02-17 07:50:38 | 文化・芸術・演劇など
人生つづった日記できた 作家、写真家 椎名誠さん
作家、ときどき写真家の椎名誠さん。旅の記録をまとめた初の写真集『シベリア夢幻』から35年の節目に、『こんな写真を撮ってきた』を出版しました。
竹本恵子記者



しいな・まこと=1944年東京都生まれ。
『犬の系譜』で吉川英治文学新人賞、『アド・バード』で日本SF大賞。『わしらは怪しい探検隊』シリーズなど著書多数。映画監督としても活躍(撮影・野間あきら記者)



新著『こんな写真を撮ってきた』
筆者の限定サイン本が人気です(新日本出版社・税別3000円)


パタゴニア、ケニア、モンゴル…。風のように世界を駆け巡って撮ってきた写真と書き下ろしの文章です。なぜか懐かしく、心にしみます。
よくもこんな写真集ができたもんだ、と。
シアワセです。これまで30冊ほどある写真集は、自分で写真選びをしてきましたが、選ばれるままに編んでいただいたのは初めてです。新鮮で、スリリングでした。時間や場所に関係なくまとめられた人生の写真日記になっています。
写真集を見ていてよく感じるのは、高額な費用をかけて「どうだまいったか」という圧力。でも、ぼくは、写真のなかにどのくらい思いがこめられているかが大切だと思います。どこの国かわからない人たちだけど、満足気にこっちをむいて笑っている。その人たちの背景、暮らしを想像させる。そういう写真に、「ああいいな」と思うんです。


どんな国でも目線の高さ同じに
生まれて初めて写真を撮られた、チベットのうどん屋さんの姉妹。やや緊張して笑いかけてきます。

ここにはカイラス聖山に向かう途中で寄りました。最初はこんな笑顔はありませんでした。3年後に紙焼きの写真を届けました。生まれて初めて写真を見た彼女たちは「自分じゃないみたいだ」と不思議そうにしていました。この子たちも、いまは子どもや家族がいるのでしょうか。
大切にしてきたのは、目線、まなざしです。途上国に行くとどうしても、上から目線で撮ってしまいがちです。
ぼくはしゃがんで同じ目線で撮ります。相手は警戒しているので、最初は不安な表情をする。でも少し打ち解けてくる。笑いながらしゃべりかけてくれたら、意味はわからなくても、相手の言葉を反復してみる。すると笑われます。そこを「しめた」と撮るんです。
マサイ族に望遠レンズをむけて、槍(やり)がとんできたこともありました。


抱き続けたカメラマンの夢
業界誌の編集長をへて『さらば国分寺書店のオババ』で作家デビユーしたのは1979年。カメラマンはそのずっと前からの夢でした。
兄が写真マニアで写真雑誌を購読していました。そのなかに心安らぐ写真を見つけて、いつの間にか傾倒していったんです。
何をやっていいかわからなくて、写真の大学に入りました。学生には写真館の子どもが多かった。でもみんな、なんだか暗くて夢がなくて、会話もなくてね。
そのころ、ぼくは友人4人と共同生活をする苦学生で、自分のカメラも持っていませんでした。大学の課題が出たときだけ、貸しカメラ屋で学生証と引き換えにカメラを借りて、写真を撮り、自分で焼きました。人形町など下町の風景をね。提出した写真、返してほしいな。


大学を中退。22歳のころ、京都であてもなく乗った電車には本を読む少女がひとりいました。

いい写真でしょう。当時、おんぼろの中古カメラを手に入れ撮っていました。
ものを書くようになって、写真にからむ仕事をしているうちに、憧れだった『アサヒカメラ』の連載依頼があり、連載は廃刊まで34年間続きました。夢は抱き続けているとかなうものです。
テレビのドキュメンタリーの仕事で辺境地帯にもがんがん行きました。何度か死にそうになりました。それでも断りませんでした。好きでしたから。


親が撮る子ほど愛満ちた写真はない
私小説『岳物語』の主人公となった長男、岳くんの写真も収録。さまざまなジセンルの写真があるなかで、一番貴重で素晴らしいのは、世界共通して「家族写真」だ、と。

親が撮る子どもの写真ほど、愛と優しさに満ちている写真はほかにはありません。見ている者の心を豊かにします。
いま、岳一家は、近くに住んでいて、行き来しています。一番上の孫、風太くんとは親友です。一番下は極真カラテをやっていて、ボクサーだった岳と異種格闘技戦を本気でやっています。僕はレフェリーです。変なうちでしょ。
家族が寝食を共にしている時期ってほんの数年、貴重なときです。
76歳。近著にはエンディングノートをテーマにした『遺言未満、』(集英社)も。
世界中を旅して、いろんな葬儀を見てきました。文化や生活、死生観に違いがあります。平等なのは、みんないつか「死ぬ」ことです。
大げさな葬儀には反発があります。質素に、風や水に流れていくような自然葬にしたい。
まだまだ連載も、書き下ろしもあります。物書きとしてはありがたい。好きなんですね。

「しんぶん赤旗」日曜版 2021年2月14日付掲載


さすが椎名誠さん。人生をつづった写真集ができたのですね。
僕も、人物を撮った思い出の写真も…。


2011年8月末、京都東山で撮った舞妓さん。

2012年4月、小野市・神戸電鉄粟生駅前で、粟生太鼓を打ち鳴らす少女。

写真集は注文済み。今日にも届くと思います。お楽しみです。
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