【全米選手権覇者が金、強力ライバル出現】
大技のトリプルアクセル(3A=3回転半)は回転不足に――。米国コロラドスプリングスで開かれていた「四大陸フィギュアスケート選手権2010」(2月9~12日)で、ショートプログラム(SP)1位の浅田真央はフリーで同2位のアシュリー・ワグナー(米)に逆転され2位に終わった。
浅田は封印していた大技の3Aに挑戦したものの、SP、フリーのいずれも回転不足と判定された。SP3位だった村上佳菜子も米国選手に逆転され4位となって初のメダルに届かなかった。米国勢の台頭や欧州勢の巻き返しの中で、日本勢は3月の世界選手権に向けて立て直しが急務となってきた。
<四大陸選手権女子シングルのメダリスト>
「金」 「銀」 「銅」
2008年 浅田真央 J.ロシェット(カナダ) 安藤美姫
2009年 金妍兒(韓国) J.ロシェット(カナダ) 浅田真央
2010年 浅田真央 鈴木明子 K.ジャン(米)
2011年 安藤美姫 浅田真央 長洲未来(米)
2012年 A.ワグナー(米) 浅田真央 K.ジャン(米)
四大陸選手権はアジア、アメリカ、オセアニア、アフリカの各国・地域の代表が競う。初開催から100年以上たつヨーロッパ選手権に比べると歴史はかなり浅いが、格式的には世界選手権や冬季五輪に次ぐ大会に位置づけられている。今回出場した日本選手は全日本選手権5位以内から選ばれた男女各3人。女子は2シーズン連続金・銀を独占しており3年連続が成るか、浅田が2年ぶり3回目の優勝を飾るかが注目を集めていた。
【思い入れ強いトリプルアクセル、封印を解除】
浅田の最大の武器トリプルアクセルは6つのジャンプのうち唯一つ前向きで踏み切り、後ろ向きに着氷する。成功すれば基礎点も高いが、女子にとって極めて難易度が高いため、プログラムに組み込む選手は少ない。
浅田は2010年バンクーバー冬季五輪でSP、フリー合わせ3回成功したが、昨年11月のNHK杯SPで失敗した。そのため、佐藤信夫コーチの助言を受け翌日のフリーではダブルアクセルに変更、その後のグランプリ(GP)シリーズのロシア杯、全日本選手権でも3回転半を避けてきた。それでも各大会で183~184点台をたたき出しており、3Aを飛ばなくても高い評価を得ることができることを証明した。
だが浅田の思い入れは強く、再び四大陸で3Aに挑んだ。が、判定は2回とも回転不足。浅田の今回の188.62は直近の3大会を上回ったものの、自己ベストを更新したワグナーの192.41には及ばなかった。ワグナーにとっては地の利もあったのか? ワグナーは浅田より1つ年下の20歳。1月に全米選手権を優勝するなど今シーズンめきめきと力をつけている。シニアの国際大会での優勝は今回が初めてだ。
【世界選手権、日本勢3連覇なるか】
世界選手権は3月26日からフランス・ニースで開かれる。日本からはシングルに男女とも全日本選手権上位の1~3位が出場する。女子は浅田、村上に鈴木明子(全日本2位)を加えた3人。世界選手権では2シーズン続けて浅田と安藤美姫が金メダルを獲得しており、日本勢の3連覇がかかっている。
伸び盛りのワグナーは四大陸の優勝で、それに「待った」をかける有力ライバルとして名乗りを上げた。欧米勢の巻き返しも予想される。とりわけカロリーナ・コストナー(イタリア)は浅田が母親の危篤のため棄権したGPファイナルを制し、欧州選手権でも優勝するなど勢いに乗っている。日本勢にとっては手ごわい存在になりそうだ。
それでも信じている。「浅田がNO.1」と。回転もスケーティングも切れ味を取り戻してきており、世界選手権ではトリプルアクセルも成功するに違いない。浅田にはやっぱり表彰台の一番上がよく似合う。母親の葬儀の翌日から悲しみを振り払って一心に練習に励み全日本で優勝した浅田。その頑張りに心から声援を送り続けたいと思う。