CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】化学の授業をはじめます。

2024-05-27 21:05:53 | 読書感想文とか読み物レビウー
化学の授業をはじめます。  作:ボニー・ガルマス

風変りな女性科学者が、料理番組のヒロインになる
そういうお話なわけで、
敢えて「女性」とくくったりするのがポイントといえばいいか、
今よりも女性の権利や主張が通らなかった1960年代のアメリカを舞台に
男性をものともせずに、自分の意思と主張を通していく主人公の姿が
清々しく気持ちいい、ちょっと勧善懲悪にすぎるだろうというくらい
すぱっと割り切った潔さで、読んでて非常に楽しい気分になる小説だった

ちょっとさすがに今の基準というか、
女性がここまで主張してというのが今でも尖ってると思うような内容なので
その時代にそれは絶対通らないだろうと思うのだが
まぁ、そこがエンタメであり、小説だなと思いつつ
その強烈さが、前時代的な(まさに)思想や観念を打ち破っていくというのが気持ちいい
あくまで物語だなと思って、あまり深く考えず
ただただ、闘うという気持ちもなく戦っている主人公の姿を見ているだけで
なんだか楽しいというのが、素敵だと思うのでありました

かなりヘビーな過去や背景を背負っている主人公とその周辺なんだが、
それを吹き飛ばしていくというか、ひっくり返していくように
だんだんと活躍していく様がよくて、
仲間といっていいのか、味方が娘であり、近所のおばさんであり、犬でありと
それぞれも基本的にいいやつで、気持ちがいいキャラクタかと思えば
敵役になるのは、しっかりと悪いというか
いかにも当時風といった感じの倫理観をグロテスクにデフォルメしているので
後腐れなく悪い奴と斬って捨てられるのが
読んでいてある意味安心なのでありました

辛い過去と現状とが入り混じっていくので、
まったく平坦な道のりではないのだけども、最終盤で、色々なことが繋がって
ようやく報われるといっていいのか、解決といった方がしっくりくる
いくつかの縁が繋がるのが、大変楽しかった
大団円で、みんな笑顔、そして悪役がしょぼしょぼと退場すると
わかりやすい映画のようなコテコテな終わり方もよくて
はつらつとした気分になるのであった

料理番組であるし、料理が化学であるというのがポイントの一つだったのだが
その化学っぽさがあんまり出てこなかったのがちょっと残念かなとも思うのだけど
ボートや神学についての興味深い感覚や蘊蓄も盛り込まれていて
面白く読めたのでありました
娘がグレるんじゃないかと心配したが、そういう朝ドラみたいなことはなくて安心した