CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【映画】燃えよ剣

2021-10-29 21:09:16 | ドラマ映画テレビ感想
丸々1年延期だったのか、あるいはもっとだったのか、
わからんが、ようやく放映された「燃えよ剣」を見てきた
ちょっとあれこれあったから、序盤の5分くらい見られなかったので
そこにすごいシーンとかあったら、残念なんだが
2時間半くらいで、よくまとめたなと
大胆な構成をしつつも、司馬遼太郎の原作を大切にした
なかなか面白い映画でした

語るところがいっぱいあるというか、
出てきた役者、それぞれの立ち回りが見事で
映画としてかなり面白かった
つくりとして、土方の生涯を2時間半でまとめる、
いってみると幕末の動乱を2時間半で紹介なので
かなり端折られているというか、駆け足すぎてどうだと思うところもあったけど
かなりのスピード感をもって、見たかったシーンをまとめた
そういう映画になっていたのでありました
六車殺し、浪士隊参加、新選組立ち上げ、鴨殺し、
池田屋、伊東殺し、鳥羽伏見から敗走
おおよそ押さえるところを絞っても、ぬかりない内容となっていて
ああ、確かにこういう感じだったと、「燃えよ剣」を楽しむことができたのであります
そう、この映画の目的は幕末映画を撮ることじゃなくて、
あくまで司馬遼太郎の燃えよ剣という、時代小説を映像化することなんだから
これが正しい、むしろ、もっと六車殺し界隈のところをやって欲しかったかも
そう思ったりしたのでありました

上記イベントに加えて、いわゆる司馬遼太郎の、小説の、燃えよ剣というそれを記した
お雪さんとの関係、総司との関係、近藤との関係、
ここらがちゃんと要所を抑えているというか
まさに小説の通りの関係性で、細かなイベントや所作は異なるけど
空気はこれだったと思わせるところがすごいよかった
近藤との友情というか、やりとりなんか、セリフの使い方が抜群によくて
このあたり、役者も豪華で滅茶苦茶見応えあったんだが、
映像化という観点においてすごくよかったと思うのである
「近藤さん、これからは歳はやめてくれ、土方君で頼む」
「土方くん」「ふへへ」
てな感じで、実際こんなセリフはなかったし、現代解釈っぽくされてるけど
この武州のバラガキ二人のやりとりとしてすごくいいなと思えた
白眉のシーンだと思うのでありました

さらに、総司との関係性も原作準拠の道場の気のいい後輩というか
弟分という関係をしっかりとセリフとやりとりで見せているのもよくて
また、総司のキャラクタ造詣が、クラシックというか
これこそ司馬遼太郎の総司だという、ふわっとしてるがやるときはやるし、
どっか悲しいものが、影ではないけども、なにかまとっている
そういう感じに美しく落とし込んでいて、これは役作りがすごかったのかもと
俳優をほめたいくらいでありました
鴨殺しも、山南殺しも、厭いながらやってしまう、そこにはかない笑顔があるんだが、
それは顔の形でしかない、やるせないともいえない独特の空気が
いやー、上手かった、思い出すに、この総司は本当にいい
総司に関しては、ラストに向けての処理も実にうまくて、
都を落ちていくとき、車に乗せられていくんだが、このしぐさのどこか子供っぽく
でも、敗戦をおったという感じが滲み出るようで、少しだけ心を交わした女との別れが
ああ、いかにも司馬遼太郎っぽいと思ったのである
確か原作にあったと思うが、「僕らの青春が終わった」といったセリフを
是非この総司には言ってほしかった、よくできていた

司馬遼太郎っぽい女というところで、お雪さんの扱いも、
絵師になっていたのは、原作とさすがに違いすぎやしないか?と思ったんだが、
そのあたりはさばさばしつつ、「歳三は猫だよう」という姉さんが言ったとおりのところを
上手にくすぐるようなあり方、確かこれは原作にもあった
「これからお雪は乱心いたしまする」
というセリフと、そこからの交合がすごく司馬遼太郎的だと
個人的に満足というか、いいなぁと思ったんだが
重度のファンがどういってるか気になるな、かなうならハコヅメの牧高と話したいくらいだ

六車殺しが結構さっさとしてしまっていたので、
七里とのいわくが違う処理になってたんだけども、
これはこれで新しい解釈として面白かったけど、ちょっと尺というか
説明が足らないかなというラストに繋がってしまったのが心残りながら
それでも、燃えよ剣を見た満足感に満たされたのでありました

だが、惜しいと思うところもある
主演の岡田くんが、すごくよかったし、岡田くんだからこその映画にも仕上がっているので、
これ以上どうしようもないというか、ないものねだりになってしまう話なんだが、
殺陣がうますぎるのと、外見が土方っぽくない、
これが大きく気になったのも確かなのでありました
特に、殺陣がうますぎるというのは、ある意味もったいなくて
流れるような殺陣を見られるのはやたら面白いんだが、
剣はそこまで強くない、我流で悪筋だというのがキャラクタのはずだが、
岡田くんの殺陣はうますぎて、確かに我流で悪筋に見えないこともないが
剣筋が、忍者とは違うんだが、武者格闘と暗殺術をあわせたみたいな感じで
ともかくかっこいいが、土方のそれじゃねぇわとなってしまったのである
田舎者っぽさの証のように、ナンバ走りを多用していたのはこだわりがあって好きなんだが、
行商の時はいいけど、普通の時はそう歩かんやろうとか思うんだが、
あれはあれで、変化の証だから必要なんだが、もうちょっと普通でもよかったんではないかと思うのである

ただ、それでも鴨ともいざこざが、原作にらみ合いだけで終わったシーンに
殺陣突っ込んできてて、ここはすごく見ごたえもあるし、雰囲気あってよかったのも確か、
鴨が神道無念流だったかと思うのだが、ともかく、まっとうな剣筋で圧倒しつつ、
土方があがくように、脛切り、寝転がってからの切り上げとか、
いかにも喧嘩剣法っぽいのを平然と見切っているというのが、
剣における格の違いみたいなのが見られてよかったと思うのでありました
そこを剣が優れる沖田が止めるというのも、理屈にあっててとてもしっくりきた
しかし、函館の山中戦だったかで、刀を受け取ってすぐ抜き打ちに逆手で切って落とすとか
すげーかっこいい殺陣なのに、土方はそれやらないだろうとか思う動きが
映画のアクションとしては満点なのに、土方じゃねぇなとか思ってしまったんだが
ああもう、俺が面倒くさい
なんとなし、あの殺陣の動きは、いかにも映画剣法っぽすぎて、
ラストサムライの渡辺謙のそれを思い出してしまって、違和感があったのである
上手いし、いいんだけど、岡田くんの殺陣はどういう時代劇で発揮してもらったらいいんだろう
早く世の中の作家は、岡田くんの殺陣が生きるキャラクタを作り出すべきだ
新しい時代劇ヒーローが待ち望まれるわ

見た目については、洋装が似合ってないところが残念だったと
そこだけなんだけども、書いておくのである
あと、洋装で洋式の戦争になったとき、殺陣も鳴りを潜めてしまったので
ちょっと残念感が増してしまったのであるが
それを吹っ飛ばすようにラストシーンが小説のそれそのもので
ここはセリフを含めてすごくよかった

なんだかんだ、やっぱりすごく楽しめた映画でありました
慶喜が、現在の大河ですごくいい感じだが、
これを見るとろくでもない男に見えるというのも面白いところだが
司馬史観というものでもあるが、これこそが司馬遼太郎の小説の雰囲気だと
思ったりするのでありました
駆け足なのがちょっと残念な気もするが、これくらいが一番よいというところに
うまく落とし込まれた映画だったようにも思うのである

色々片付けないといけないから仕方ないけど
原田がいなかったのが残念なのと、山崎がだいぶイメージと違ったのだが
それでも面白く描けているからよかったと思う
なんならもう一回見たいくらいだった