CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】牧師、閉鎖病棟に入る。

2021-10-23 21:09:56 | 読書感想文とか読み物レビウー
牧師、閉鎖病棟に入る。  著:沼田和也

タイトルの通りだったんだが、
牧師さんだった人が、精神病にかかったというお話でありました
教誨じゃないけど、仕事で閉鎖病棟にいった話かと思ったら
もっと切実な、なかなか興味深い内容だったのでありました

日記ではないけども、自伝的ドキュメンタリというべきか、
体験ルポと、ある種の治療の結果のような内容で、
牧師という職業を得て、幼稚園の園長までしていた男が、
発達障害の激しいものだという診断をされて、
精神科の閉鎖病棟に3か月入院したというお話でありました

本人による、本人の手記のため、
一方的というか、主観のみで構成されているから、
実際はどうであるか、そのあたりはわからないのだけども
閉鎖病棟で感じたこと、考えたこと、
それまでに自分と、治療によって得たことというのが、
本人の実感とともに書かれていて
興味深い内容に仕上がっているのでありました

閉鎖病棟で出会った人たちのこと、
その人たちの人生とは何かというものについて、
牧師という職業から、神の説話を含めた
哲学的な内容に踏み込んでいて、
それでいて、そこに実感が伴い、座学的な理解を超えていくというのは
面白いところではあったんだけども、
社会的偏見ともいえるような内容に負けそうになったり、
実際にそうであることを否定しようもできなかったりと
葛藤がつづられていく様は、
治療の効果を読むことができているという
奇妙な読書体験をさせてくれるんだが、
これもまた、不可思議というか、どういう感想を抱くべきなんだろうと
考えさせられたりもしたのでありました

特に、世界や世間を批評するといったことではなく、
ただ、自分の治療を通して、そこにいたという経歴によって苦しむ実情を描いているのは
勝手に忖度でもないが、差別めいたものを自身にも見出してしまえそうで
大変難しいと感じたのでありました

結局本で読んだだけで、この人に会ったわけでもないのだから
どこまでが真実というか、事実なのかもわかるはずもなく、
また、本としても、そういったテーマに沿ったものではなく
あくまで、本人の治療の結果、あるいは経過の日記めいたところから
踏み出してもいないので
メッセージを発信する種のものではないんだが
それでも、考えるきっかけを与えるような内容になっていると
思うのでありました