CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】老害の人

2023-04-12 21:10:29 | 読書感想文とか読み物レビウー
老害の人  作:内館牧子

迷惑な老人の群像劇といったらいいのか、
でも、群像というほど、老人たちのそれぞれは深掘りされていないというか、
生々しく、こういう年寄りがいるなという、その生活を切りとったものを
みっちりと描いて見せたという感じで、
序盤の老害っぷりのひどさは、なかなかの読み応えでありました
それが変わらぬまま、ラストでは許せてしまうというか、
そういうことかなんて、許容したかのように思わされてしまうのが
面白い物語でありました

老害と呼ばれるそれこれは、ここに書かれている通り、
元気な老人で、若者を脅かすというか、邪魔で仕方ない
それくらいのパワーがある人のことをいうんだなと
改めて思い知らされたのでありました
だからこそ、解決策のようにして、老人が老人を励ますみたいなそういう形に落とし込まれていって、
その最中にコロナで、色々なことが休止になる、そこで失われていく時間の貴重さというのが、
仕事におけるスピード感とは異なる、切実な時間の浪費というもので見せて、
年を取るというのは、怖いというか、そういうさなかに生きるというのが
年よりなんだよなぁと、改めて思い知るのでありました

主役の老害の人が、元経営者であるというのが結構重要で、
最終的にはその人の人間力、その実行力ともいうような、
やはり、立派な人間であったということは、それが財産でもあるんだろうなと、
そんな風にも思ったんだが、そこが主眼であるはずもなく、
その対称のように、ごく普通の老人夫婦がいて、そちらが自分たちの世界だけともいえるような
お互いの下手な趣味を楽しんでいるという生き方をしていて、
物語として、老人を助ける老人という大きな仕組みを作ろうという経営的なそれとは
まったく別の、どこにでもありふれたような、ただの老人が年取ってから始めた趣味という、
でも、これもまた、それが見つけられる人と、そうではない人がいるという
ある種の残酷さも見えつつ、家で構ってほしいからと嘘をついてしまう老害をいってしまう老人やら、
色々な模様を描いているのが面白くて、
でも、みんなが集まって何かをやろうという、年齢など関係ない面白さ
そこにかける情熱みたいなのを通して、やりがいとか、そういうものを感じて
気持ちいい小説でありました

出来のいい孫が唐突に農業をやりたいという話とかが、
年よりの未来との対比にもなっているんだが、
重要なのは、そのどちらでもない人たちの生き方、受け止め方、考え方といったもので、
そこにいる自分が、一番この本の内容に響いているようにも思えた
よかった


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