CLASS3103 三十三組

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【読書】存在のすべてを

2024-07-22 21:03:42 | 読書感想文とか読み物レビウー
存在のすべてを  作:塩田武士

新聞記者が昔の未解決事件を追いかける
そういうスタンダードな小説なんだが、そのど真ん中を進む内容で
期待通り、期待以上、とてもとても楽しい読書になった

ある誘拐事件が起きたという冒頭から、
やがて月日が経ち、その事件に関わった刑事の死をきっかけに、
かつてを思い出して、ロートルとなっていた新聞記者が、地当たりで真実に近づくという
お決まりなんだが、とても楽しい、頼もしい内容で、
少しずつ真実に近づいているような、空振りのようなといったところを
ふらふらしつつも、着実に進んでいると思わせる筆致が見事で
次々と読みたくなるお話でありました

事件の真相部分が不思議というか、謎に包まれているのがポイントで
少しずつ関係者があぶりだされてきて、それが細く細く繋がっていき、
ちょっとしたきっかけで、途切れたかと思った真相の糸を紡いでいくのが
まぁ本当、ただただ楽しいと思えるのでありました
謎を解く、謎に迫るということの面白さといったらいいか、
そういうことに挑んでいて、前に進んでいるという物語そのものが
とても楽しいと思えて仕方ないのは
俺がそういうのを求めているからか、あるいは、人間そういう成功につながるものというのが
単純に好きなのかわからんのだけども、連綿とつづく追跡の日々がよいのである

やがて真相がとなってくると、そこからはまた、
人情話しとしても秀逸な感じで、事件の是非はおいといて
人情として、それはわからんでもない、さらにいうなら、情緒判決で不問にしたいとか
そう思えるような事件背景があらわになってくるのもまたよろしく
事件そのものと、そこに巻き込まれたといってもいい、背景の様々が、
明らかに悪いとされてしまうことをしているが、
そうとも言い切れないような事情がというせめぎあいもあって
最後まで、読む手が止められないようなよい小説でありました

最後がまた、救いと切なさがごたまぜになって
余韻も素晴らしく、月日が積み上げたものが、写実主義の絵のそれと同義なのかと
錯覚してしまいそうな、ある種の美しさを描いていると感動して読み終えたのでありました


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