CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】京都に女王と呼ばれた作家がいた

2020-12-22 21:00:32 | 読書感想文とか読み物レビウー
京都に女王と呼ばれた作家がいた  著:花房観音

タイトルから想像の通り、山村美紗について書いた本でした
内容にあったとおり、凄いベストセラー作家だったというのに
今となっては、著作が手に入りにくい
もはや、過去の人といった扱いになりつつある
その女王に二人の男が居たというところを
ドキュメンタリというか、伝記のように書いた本であります

どうにも、女王について書くというのは
文壇とは異なるが、ある種のタブーであったようで、
ベストセラー作家だからこそ、それを発刊する出版社は
先生に頭が上がらない、必然、タブー化して様々な憶測と
噂が飛び交うのだが、それが本当なのか、
その中でも禁中の禁とも言えるのが、
もう一人のベストセラー作家、西村京太郎との話と
まぁ、下世話というか、スキャンダルめいた話が半ば公然であったようで
そこに何かが、あったのか、なかったのか
それはそれとして利用していた、女王の姿
そんなのが書かれているのであります

ただ、この本もやはり、その予防線というか、
未だ続くのであろう出版社との軋轢というか
ベストセラー作家という聖域の囲いから逃れられないのか、
その点に関する言い訳というか、
なんか、遠慮した記述が多くて、
その点からか、女王をあえて苦しんだ人として書いているところが多くて
実際はどうだったか、やはり、それは闇の向こうでないかなと
思わされたのでありました

女王が結構なヒステリーを炸裂させていたり、
それに関する逸話が数多く残っていたりは
笑い話というか、その後のフォローや、様々なところで帳消しとなっている
あるいは、その寂しさ、恐怖の裏からの発露といった
庇いだてた内容ともとれるところが
気になってしまったのであります
ま、その言い訳めいた記述部分はさておいて、
女王がどのような人であったか、また、その陰として生きてきた夫の存在、
そして西村京太郎という同志
この存在が、どう影響していたか、女王の人生がどのような道程であったかが
非常に読み応えあって面白かったのでありました

元来頭のよかったひとで、理系に明るいといったところが
斬新といっていいのか、凄い人であったらしいと
ここが凄く新鮮でありました
確かに、山村美紗サスペンスというジャンルは知っているが
どれも見たことない身分なのでなんともいえないんだが
トリックを考えるのが得意であったというのが
なるほどと合点がいったのでありました

最も華やかであった印刷業界というか、
そういった寵児でもあったのだろう
その姿が、今からはずっと遠いものだなと思わされたのでありました
いっそ、もうちょっと、そのずぶずぶとまで言わないが、
出版業界や、テレビ屋とどうであったか
そちらに食い込んで欲しかったかもなと思いつつ

むしろ、そちらの方が今具合が悪いからタブーになってるのではと
考えさせられたのであります
面白かったけど、ちょっと物足りないと思う