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武勇伝 ふたたび

 昨日の朝、階下から聞こえる妻の悲鳴で目が覚めた。「何事だ?」と思いながら階段を下りていくと、「遅い!」と怒鳴られた。「何だよ?」とたずねると、「ヘビが・・」と事の顛末を話し始めた。
 ゴミを出そうと台所の土間のゴミバケツをに手を伸ばしたら、その横に置いてあるネズミ捕り(ゴキブリホイホイのネズミ捕り版)に30cmほどのヘビが張り付いていた。ヘビが大嫌いな妻はたいそう驚いたらしいが、よく見るとまだ生きている。このまま捨てるのもなんだか忍びない気がしたそうで、ベンジンをかけて粘着部からはがれ易くさせてみようと思い立った。ベンジンをかけるとうまくはがれたようで、その場から逃げようとあたりをごそごそし始めた、そんな時に私が現れたというのだ。
 「捕まえてよ」と言うので、寝起きでボーっとしてる頭を働かせて、父が炭焼きに使っている炭バサミを使おうと思った。取りに行って戻ってきても、土間の辺りでごそごそと動いている。これは面白い、と写真に撮ってみた。


 このねずみ捕りには時々ねずみがかかってその処理を頼まれることがあるのだが、動物の死体が大の苦手である私はギャーギャー言いながら毎回必死の思いで片付ける。だが、どういうわけだが、ヘビは何も怖くないし気持ち悪くもない。炭バサミでひょっと摘み上げて、妻に「どうする?」と聞いた。へっぴり腰の妻は「逃がしてやってよ。でも、糊がまだ体中についてベトベトしてるから、洗ってやらないと死んじゃうんじゃない?せっかくだから洗ってから逃がしてよ」と言った。「ふ~ん」と、こういう場合にしてはいつになく落ち着いている私は、ヘビを持ちながら塾舎の前の水道まで歩いていった。


 「洗う前にもう一回ベンジンに漬けた方がいいんじゃない?」と私が思い付きを言ったら、妻も「そのほうがいいかもしれない」と言ってベンジンを持ってきて、入れ物に注いだ。その中に私がヘビを浸したところ、今までおとなしくしていたのに急にくねくねと身をよじりだした。

 

 体についた糊のベトベト感は取れたような気がするが、やはり体表にベンジンは刺激が強すぎるのかもしれない。で、今度は水をかけてブラシでこすってみた。


 おとなしくしているので気持ちがいいのかなと思った。ここまであれこれ世話してやるとなんだかかわいらしくも思えてきた。だけど、しばらく見ているとどことなく元気がなくなってきた。動きも鈍くなってきて、逃げ出そうともしない。これは救出作戦失敗かな、と思い始めたが、ネズミ捕りにかかった時点でこのヘビの命運は尽きているわけだから、このままで死んでも仕方ないだろう、などと妻と二人で言い訳をしていた。
 でも、このまま放置しておくわけにもいかないから、裏山に放してやることにした。


 一段と元気がなくなってもう本当に死んじゃうかなと思った。後で見に来て、死んでいたら土の中に埋めてやろうとその場を離れた。
 
 1時間ほど経って様子を見に行ったら、離したところに姿は見えなかった。とりあえずは動けるだけの体力が回復したんだな、と安心した。私たちがした処置が正しかったのかどうかよく分からないが、まあ、ヘビ1匹の命は助けたんじゃないかな、と善行を施した気がしている。違うかな・・。
 でも、家の中にヘビが侵入してくるなんていったいどういうこと?
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