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 まだまだ中間試験は続いている。ふだんは英語と数学を中心に授業を行っているが、試験が近づくと国・理・社の授業も多くなる。黒板を使った一斉授業を行っているわけではなく、個別に指導しているため、生徒によってかなり進度の差は出るのだが、試験前にはどうしても点の取り易い理・社の勉強を生徒達はしたがる。どこの学校でも学年順位が出て、生徒達はそれを一番気にするため、手っ取り早い理・社は試験前の最重要課題になる。あれこれ対策用のプリントを渡し、学校の問題集に関しても質問に答えている。社会は暗記中心だから、生徒に任せるしかないが、理科は単元によっては理解しにくい箇所が多くなり、質問が集中する。
 今回中3の理科の試験範囲は、天体が範囲となった学校が多い。特に一番塾生が多い地元の中学は、星と太陽の動きがメインテーマである。しかし、なかなか理解しにくいらしく、多くの質問が飛び交った。まず、「太陽が東から西に沈むのは分かるけど、なんで地球が西から東へ回るの?」ときいた男子生徒には、頭をつかんで目の前にこぶしを突き出して、「頭を地球、手を太陽とするぞ。頭をこうやって右から左へ回すと、この手は左から右へ動くように見えるだろう。それと同じことで、地球が西から東へ回るから、太陽や星は東から出て西へ沈むように見えるんだ」また、「公転と自転の違いは?」と質問した女子生徒には、「地球が地軸を中心にして一日一回まわることを自転と言って、自転しながら一年かかって太陽の周りをまわることを公転と言う。一日の天体の変化は自転のせいで、一年の変化、季節が変わるのは公転が原因だ」さらに「星が一日で一回転するのは分かるけど、一年かかって元の位置に戻るってどういうこと?」「星は、正確に言えば一日に361°回転する。一日に1°余分に回ることになるから、一ヶ月で30°ずれるし、半年で180°、一年で約360°回転して元に戻って来ることになる」などなど、基礎的な質問も多くて、学校でちゃんと聞いていないのかと怒りたくなるが、そのために塾に通っていると言われるのが落ちだから、グッとこらえている。
 私は根っからの文系人間で、自然科学にはあまり興味が持てずに生きてきたが、星を眺めることは好きで、夜空を見上げればほとんど全ての星座の名前を言える。子供達が小さかった頃は、よく一緒に空を見上げながら「これが北斗七星、あれがオリオン座」などと教えてやったが、今では夜空を見上げることは少なくなってしまった。これこそ心にゆとりがない証拠なのだろうが、それでも時々はふと思いたって好きな星座を探したりする。私の第一のお気に入りは「すばる」だ。これは星座ではなく、大小数百個の星の集まりで、天文学上は「プレアデス星団」と呼ばれている。肉眼では6~7個の星が集まって見えるため、「六連星(むつらぼし)」などと呼ばれている。「枕草子」に、
 
  星はすばる。彦星。みやう星。夕づつ。よばひ星をだになからましかば、まして。 (二二九段)

と書かれているように、古来から有名な星団である。見つけるのは、この季節は簡単だ。オリオン座の三ツ星の傾きに沿って、右上(北西)の方に移っていくと、赤みがかった明るい星がある。これはおうし座の一等星「アルテバラン」であるが、この「アルテバラン」の上の方に、幾つかの星の群れが見える。これが「すばる」だ。ぼうっと、淡くかすんだように見える。満天の幾多の星の中でこんなにおぼろげな光を放っている星群れは他にはないように思われる。シリウスのように射すような光を放つ星もきれいだが、何故か「すばる」のはかない光に心魅かれる。

 真砂なる 夜空の星の その中に 我に向かいて 光る星あり  
                       正岡子規
 
 「すばる」は決して私に強く話しかけてきたりはしないが、永い友として語り合う相手としては最適な友人のように思われる。

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