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キラーストリート

 サザンてやっぱりいいなあ--最新アルバム「キラーストリート」を聞き終えた率直な感想である。 
 前作「さくら」から7年ぶりのアルバム発売とあって、文字通り待望久しい一作である。7年も経ったのか、と時の流れに驚くのだが、その間にも、290万枚をセールスした「TSUNAMI」などシングルCDは何枚も出していた。そのうちの何曲かと新曲を合わせて30曲が入ったこのニューアルバムは、中身がびっしり詰まった作品に仕上がっている。勿論、私は立派なことを言えるほどの音楽通ではないから、専門的なことは分からないが、デビュー以来ずっとサザンを聞き続けてきた1ファンとしては、懐かしくもあり、改めて彼らの楽曲の奥深い魅力を堪能させてくれる傑作であると断言したい。
 思い起こせば、私の20代はサザン一色だった。彼らのデビュー曲「勝手にシンドバッド」がリリースされたのが、1978年6月25日、私が20歳になったばかりの時だった。湘南育ちで青山学院の学生という、まさに生粋の都会派であるにもかかわらず、どこか泥臭さが消えない彼らの楽曲は、私を一瞬にして虜にした。「いとしのエリー」は今でも歌詞を見ずにフルコーラス歌えるし、「C調言葉に御用心」「栞のテーマ」「チャコの海岸物語」など、イントロを聞いた瞬間に口ずさみたくなる曲ばかりだ。1982年の「Ya Ya あの時代を忘れない」は、今でも楽しかった大学時代のことを思い出すときに、私の心のバックミュージックとして必ず流れる名曲だ。サザンの数ある曲の中で一番好きな曲は何かと尋ねられたら、迷いなく、この曲を答える。その後も「ミス・ブランニューデイ」「Bye Bye My Love」「真夏の果実」など、私が30代に突入するまで常に傍らにあったのが、サザンの曲だ。
 その間に発売されたアルバムは全て買い、カセットテープにダビングして車の中でずっと聞いていた。15年ほど前に初めてCDチェンジャーの付いた車に乗るようになってからは、サザンのCDが必ず1枚はセットされている。ふっと彼らの昔の曲が聞きたくなる。CDを合わせて、曲が流れ始めると、その瞬間にそれをよく聞いていた頃にタイムスリップして、懐かしさで胸が締め付けられそうになる。まさに私の青春の音楽だと言っては、まだまだ音楽シーンのトップを走り続け、しかもニューアルバムを発表したばかりの彼らに失礼になるだろう。
 しかし、サザンのメンバーもそろそろ全員50歳前後。まだまだ若く見える桑田佳祐も来年の2月で50歳だ。客観的に見ればいいオヤジだが、この「キラーストリート」には、そんな年齢を感じさせないパワーがあふれている。多少、歌詞に説教臭さが感じられなくもないが、愛がどうのこうのとばかり言っていられる年でもないし、50年の歳月が滲み出てきても当然であろう。それが桑田独特の歌い方で、曲に合わせて聞かせられると、なんの嫌味もなく耳には入って来るから不思議だ。これこそがサザンの楽曲が持つ真骨頂なのかもしれない。
 今回のアルバムで、私が今のところ最も気に入っているのは、Disc2の「リボンの騎士」だ。原由子が歌っているが、その歌詞の終わりの部分を。
    
    出来栄えのいい大人の仮面は脱いで
    裸の自分に嘘をつかないで
    淫らな獣のオスのままでいて
    私の中に生命を宿すために
 
 この曲について、桑田が語っている。「卑猥な言葉を歌ってもイヤらしさを感じさせないと言われる、彼女のニュートラルで独特な声質に今回も期待していたが、思った通り、癒されたい男たちの願望を歌ったこの曲を、安らぎ感漂うララバイへと導いてくれた」
 そのとおり。まったくサザンは最高だ。
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