見もの・読みもの日記

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幕末列伝ふうに/「龍馬伝」展(江戸東京博物館)

2010-06-06 23:53:02 | 行ったもの(美術館・見仏)
江戸東京博物館 2010年NHK大河ドラマ特別展『「龍馬伝」展』(2010年4月27日~2010年6月6日)

 水曜に半日休が取れたので、気になっていた『龍馬伝』展に行ってきた。そうしたら、平日の午後というのに、バスで乗り付ける団体客やら、学校帰りの中高生やらで大混雑。なんだよ、この人気は!

 ドラマのほうも、昨年の『天地人』の視聴率に及ばないようだが、高い人気をキープしているようだ。私も(昨年と違って)まだ視聴を続けている。話があちこち飛んで分かりにくい、という評もあるようだが、多数の登場人物がよく「キャラ立ち」していて面白い。その日の出番が数分しかなくても、きちんと印象が積っていく感じがする。

 というドラマの特性を活かしてか、この展示も、人物ごとに資料を紹介している。冒頭には、山内容堂着用の黄羅紗地陣羽織。表は明るい黄色のフェルトみたいな地で、裏は雲文の唐錦。袖口は金糸の縁取で縫い綴じる。どうしても頭の中には、『龍馬伝』の容堂役、近藤正臣さんがこれを着たところが浮かんでしまう。なお、あとで買った図録を見たら、容堂公の詩書(闊達で好きな字だなー)とか、ドラマの小道具にも出てきた赤いギヤマンの酒杯などが載っているのだが、会場で見た記憶がない。展示リストを確認したら、東京会場では出品されていないものが、ずいぶんあるようだ。

 武市半平太の肖像画は、ずいぶんドラマと印象が違った。まあ後世(20世紀)の肖像だからあてにはならないが。武市が自分の獄中生活を絵に描いたもの(泣笑録)が残っているのにはびっくりした。獄中とはいえ、蒲団と枕、本もあって、絵を描く筆と墨(朱墨を混ぜて色も付けている)、料紙も支給されていたのだから、そんなに酷い待遇ではなかったように思う。平井収二郎が「切腹前に爪でひっかきながら書いた遺書」というのは、説明不足で分かりにくかった。やたら行間を開けて小さな字で「遺書」が記されていると思ったが、実は、その空白の行間に爪で引っ掻いた文字が記されていたのだ。図録の写真で判明。小さな字の墨書は、これを伝えた人が加えたものなのだろう。あと、収二郎の爪書きを朱墨でなぞったものもあった。

 『吉田東洋斬奸状』(高知県立歴史民俗資料館蔵)は、殺害された東洋の首級(ドラマではそこまでやらなかったな)の「傍らに立てられていたもの」という注記にびっくりした。その「写し」と思えばいいのかしら。岡田以蔵の斬首を伝える『岡田家郷士年譜』(土佐山内家宝物館蔵)とか、高知県って、よくこれだけの文書を伝え、また整理してきたなあと感心した。

 肝腎の龍馬に関する資料だが、最も有名な写真の現物は、4月末の3日間の限定公開だったので拝めず。しかし、焼き付け複製写真のほうが、かえって細部まで確認できて面白い。腰に笛のようなものをぶら下げているとか。手紙は多数出品されているので、若い頃のほうが字がきれいだなあ、とか、相手によって少し文体を変えているな、とか(でも基本は候文)、いろいろなことが確認できる。ドラマでは、ときどき映る書簡が口語体のままなのが、私は許せないのだが。

 海舟日記は文字が細かいねえ。西郷隆盛書簡、木戸孝允(桂小五郎)書簡など、展示の大半は文書資料で、よほど幕末史好きでないと飽きると思うのだが、ドラマの「キャラ」に助けられてか、みんな熱心に眺めていた。

 会場のお楽しみは、香川照之の語りによる音声ガイド。『龍馬伝』の音楽つきで、全25点。しかも、岩崎弥太郎に関する資料(2点)の解説はスペシャルトラックで、弥太郎になり切って語っているのが見事。東京展は本日までだが、京都・高知・長崎に巡回予定。
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