見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

主語はわたし/夢の痂(井上ひさし)

2010-06-11 23:31:15 | 読んだもの(書籍)
○井上ひさし『夢の痂(かさぶた)』 集英社 2007.1

 ときは昭和22年7月、場所は東北の小さな村。陸軍参謀大佐として敗戦の責任を感じていた徳次は、一度は自殺を企てたが死に切れず、骨董屋として、とある旧家で屏風の修理に励んでいた。旧家の長女は、女学校で国文法を教えている才女。家を飛び出して、東京でヌードモデルをしている次女が帰ってきた。そこに次女の恋敵や新聞記者があらわれ、徳次の娘も訪ねてくる。役者がそろったところに、東北御巡幸の天子さまがお泊りになるという話が降ってくる。そこで、天子さまの戦争責任が「取り替え自由の屏風」や「主語のない国文法」という、井上ひさしらしい比喩で語られ(歌われ)る。

 90年代の初めくらいまで、井上ひさしの戯曲は好きでよく読んでいた。それから比べると、すいぶん枯れた印象が残った。本のオビに「トコトコ旅行く天子さま」とあって、これは絶対、劇中に昭和天皇が登場するんだろう、と思って、わくわくして読み始めたら、全然登場しなくて拍子抜けした。やっぱり、そこはタブーなのかしら。
コメント
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