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復活する伝統カヤック文化がグリーンランドの誇りを呼び覚ます

2018-10-13 | 先住民族関連
ナショナルジオグラフィック 10/12(金) 11:21配信
 アザラシ皮に身を包んだ選手たちが、カヤックに乗って凍てつきそうな水面を切り裂いて進む。近くから見れば、カヤックのつくりや選手の服装に現代的な要素が見つかるかもしれないが、遠目に見れば、昔ながらのグリーンランドを思わせる光景だ。

ギャラリー:グリーンランドで復活する伝統カヤック文化 写真18点
 世界最大の島であるグリーンランドはデンマーク領だが、1979年に国民投票によって自治政府が置かれ、広範囲の自治権を獲得した。植民地支配から解放された島民は、それ以来独自のアイデンティティーを築こうと模索している。原色に彩られたスカンディナビア風の建物、自給自足から市場経済への移行など、デンマークの影響は今も島のいたるところに残されているが、一方でイヌイットの祖先が大切に守ってきた伝統を復活させようという動きもある。そのひとつが、カヤックだ。
 この地方のイヌイットにとって、カヤックは生きていくための必需品だった。人々は、カヤックに乗ってアザラシなどの海洋哺乳類を捕らえ、食料にしていた。現代においては、伝統文化の維持を模索するグリーンランドで、カヤックは人々のアイデンティティーを象徴する存在となっている。その思いは、毎年開催される全国カヤッキング選手権大会に表れる。
 カヤックはロシアで生まれ、それが東へ向かって伝わり、北米を渡っておよそ4000年前にグリーンランドに到達したと言われている。グリーンランド人は、流木とアザラシの皮を使って、自分たちの使いやすいように船を作り替えた。また、独自の操作法も発達させた。
 グリーンランドのカヤック乗りは、転覆したカヤックを回して再び水面に起こす「ロール」技が得意なことで知られている。ロールに欠かせないのが、チュイリックと呼ばれる伝統のパーカだ。アザラシの皮で作られ、水が入り込まないように顔の回りと手首を密閉し、裾部分もコックピットの開口部を包み込むように密閉する。
「グリーンランドカヤックは現代カヤックの起源とされているため、大変重要です」と、グリーンランドカヤック協会の米国支部「カヤックUSA」代表を務めるクリストファー・クロウハースト氏は語る。
 20世紀半ば、英国人のカヤック愛好家ケン・タイラー氏がグリーンランドからカヤックを持ち帰り、それがシーカヤックの新たな世代の原型となった。商業用に製造されるようになったカヤックは、素材は繊維強化プラスチックだが、デザインには伝統的な要素が数多く取り入れられた。
 グリーンランドカヤックの人気が国外で広まると、グリーンランド人自身も、自国でこのスポーツを復活させ、保存しようと立ち上がった。1984年に、グリーンランドの若者が「カーナット・カッツフィアット」と呼ばれる全国カヤッキング協会を設立し、全島の村や町ごとに支部を作った。同協会が毎年主催する全国選手権大会には、島だけでなく海外からも参加者がやってくる。熱心な愛好家は、伝統的な手法で自分の体に合わせてカヤックを手作りし、海へ漕ぎだす。
 写真家のキリイ・ユヤン氏は、今年の選手権大会を取材するためグリーンランドを訪れた。カヤック作りの伝統を持つシベリアの先住民ナナイ族を祖先に持つユヤン氏は、北極圏を何度も旅し、グリーンランドへもいつか行ってみたいと長年思い続けてきた。
「グローバル化した現代の生活のなかで、イヌイットの伝統と歴史を見事に復活させたグリーンランドの人々を見るのは、大変興味深かったです。カヤックは、今や国民的スポーツというだけでなく、多くの点で、グリーンランドを代表するシンボルのひとつであり、カヤックを通して人々はグリーンランド人としてのアイデンティティーを意識するようになっています」
*  *  *
グリーンランドを訪れるなら:全国カヤッキング選手権大会は、毎年違う町で開催される。中心都市ヌークは一年中訪れてみる価値がある。チャーミングな古い港を散策したり、国立博物館を訪れたり、ヌーク美術館でイヌイット文化を学ぶこともできる。
文=Abby Sewell/訳=ルーバー荒井ハンナ
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181012-00010001-nknatiogeo-cul
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