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カナダの大麻合法化・住宅問題・難民などについて、販売者が首相に独占インタビュー/モントリオールのストリート誌『リティニエール』

2018-10-19 | 先住民族関連
BLOGOS 2018年10月18日 09:15

カナダのホームレス問題対策向けの連邦予算は22億ドル(約1870億円)。
ジャスティン・トルドー首相は今後10年でホームレスを「半減」させたいとの意思を示している。
この度、カナダ・モントリオール(ケベック州)のストリート誌『リティニエール』の販売者らがジャスティン・トルドー首相にインタビューするというまたとない機会を得た。販売者らはしっかり質問を用意して臨んだため、対談は国内外のさまざまな問題に及ぶ深く掘り下げたものとなった。その多くは世界各地のストリート誌販売者、ホームレス経験者にも響くものだろう。
ホームレス問題への国家戦略について
“アフォーダブル住宅(*1)の新規建設とともに、既存住宅の改修にも投資が必要”
販売者(モスタファ・ロトフィ):
この数週間で、カナダの複数の主要都市において、そこに暮らすホームレスの人数調査が行われました。現政権は「ホームレス問題の新国家戦略」(*2)にて今後10年間で約20億ドル(約1700億円)の予算を割くと公約しました。モントリオールの地域団体が提言してきた1億ドル(約85億円)が配分される見込みはありますか。
ジャスティン・トルドー首相:
国家戦略には、ホームレス問題の克服とカナダのホームレス半減を目的として、実に22億ドル(約1870億円)の予算を盛り込みました。予算はバランスを考慮し、全国に適切に配分されます。モントリオールのホームレス問題も十分に認識していますので、適切な配分を受けられるよう配慮します。
ただし、住宅への公共投資はホームレス問題のひとつの対策に過ぎません。他にもメンタルヘルス、依存症対策、労働市場に合った人材づくり、職業訓練、多様性の確保、先住民社会にむけた取り組みについて、多くの公約を立てました。これらの問題はすべて密接に関連しています。ひとまずホームレス問題対策費として22億ドル確保できたことは高く評価できると思います。
販売者(ジャンクロード・ノー):
首相の「国家住宅戦略(*3)」は、既存住宅の維持、シェルター用補助金、および低所得者向けアフォーダブル住宅の建設と複数要素から構成されています。現状、モントリオールだけでも24,000世帯がアフォーダブル住宅の待機者リストに登録しています。2019年10月の連邦総選挙までに何世帯分のアフォーダブル住宅が建設あるいは着工されるのでしょうか。
*3 「国家住宅戦略」(英語)
トルドー首相:
モントリオールのパピノー選挙区から当選した下院議員として、待機者リストに長年登録されている方々と対話を重ねてきましたので、それがどれほどストレスあるものなのか理解しています。だからこそ、真の国家住宅戦略に投資を行うのです。先のハーパー政権はこの問題に背を向けていましたから。
アフォーダブル住宅を新しく建設する必要性は理解していますが、既存住宅の改修にも資金を回さないといけません。繰り返しになりますが、予算は公平にバランスよく全国に分配してまいります。政権に就いて以来、私たちは相当額の投資を行ってきました。ビルやマンションの建設にはもちろん時間がかかりますが、今まさに取り組んでいるところです。
大麻合法化について
販売者(イザベル・レモン):
私たち販売者のなかには、ソフトドラッグ(*4)を手始めにハードドラッグ(*5)へと深入りしてしまった人もいます。私自身も精神病を経験しましたが、精神病患者が大麻を使用した場合には重篤な事態に陥る可能性があります。大麻の合法化にあたって、若者や社会的弱者にそのリスクを啓蒙するため何を行いますか?
トルドー首相:
啓蒙活動はすでに始まっています。大麻が個人や社会にもたらしかねない悪影響について啓蒙キャンペーンに取り組み、投資も行っています。
現在のやり方では結果が出ていないことは明らかです。若者はいとも簡単に大麻を入手でき、その利益はすべて組織犯罪に流れています。私たちは大麻の規制と管理を行うことで、大麻販売で得た利益を医療サービスや大麻使用反対キャンペーンの広告にあてます。
もうひとつ根底から変わることがあります。現在、多くの人にとって大麻は他のドラッグへの入口となっています。なぜでしょうか? 大麻の売人が大麻だけでなくもっと強力なドラッグをポケットに忍ばせ、機会を見ては売りつけてくるからです。しかし、大麻が適切に管理規制された環境であれば、他のドラッグは扱っておらず、より強力なドラッグを売りつけることもないため、事態が悪化しにくいのです。
適切な住居を得る権利について
販売者(モスタファ・ロトフィ):
昨年、首相は全カナダ国民に対し「居住の権利」の向上を約束しました。国際的には、カナダは適切な住居を得る権利を謳う「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(*6)」への加盟国でもあります。この居住の権利を「カナダ憲章(Canadian Charter of Rights and Freedoms)」に含めないのはなぜですか。
*6 「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(英語)
トルドー首相:
私たちは住宅問題に対し「人権に基づくアプローチ」を提唱しており、これは居住を人権と捉えることとは異なります。確かに人にはこの「居住の権利」があると言えるのですが、もしあなたの住まいが(先住民族が多く暮らす)サスカチュワン州北部にあって、この権利を事細かに規定されたなら、その意図を外れ必ずしも良い結果にならない可能性があります。
一方、私たちは国連が評価しているアプローチを取っています。人権、つまり尊厳、選択の自由、健康、安全を得る権利を戦略の中心に据え、これら全てが、安全で手頃な価格の家に住む尊厳につながる、という考え方です。正真正銘「人権に基づくアプローチ」なのですが、居住の権利を人権としてしまうと、文化や尊厳に対する侮辱になりかねないと思うのです。
住宅への公共投資について
“この数年で改善したものの、カナダは依然「OECD」の男女賃金格差の平均値に遠く及びません。”
販売者(ジャンクロード・ノー):
2017年度予算について、住宅を所有しやすくするため今後10年間で110億ドル(約9,350億円)以上の投資を行うと発表されました。しかし、その90%の投資が始まるのは2019年、選挙の年です。適正な住宅を必要としている160万世帯のカナダ国民になんと説明しますか。
トルドー首相:
アフォーダブル住宅の新規建設や既存住宅の補修が対応できていない状況で、投資計画だけ発表し、お金を使い始めても誰のためにもなりません。これはもっと時間をかけて行うべきこと。逼迫した状況を理解しているからこそ、最大限の努力をし、一連の作業のスピードアップを図っています。投資対象となる新しい住宅もなくお金をばらまけば、そのお金はそっくり既存の大家の懐に入るだけ。問題の根本的かつ長期的解決にならないことは、皆さんお分かりいただけると思います。
女性の権利と男女平等について
販売者(イザベル・レモン):
国際NGO「ONE」によると、世界中の女子のうち1億3,000万人は学校に通っていません。女性の10億人は銀行口座を持っておらず、毎日39,000人の女児が結婚を強いられています。カナダ国内でも、同一労働に対し女性は同じ賃金を得られていません。首相は「女性の平等」をG7の優先課題としました。G7による対策で女性の生活は変わるのでしょうか。
トルドー首相:
ご存知の通り、これは私にとって最優先課題です。世界中のリーダーを集め男女平等に関する諮問委員会を立ち上げ、G7に対してアドバイスや対策の提案をしてもらっています。 彼らがおこなった助言のひとつに、内戦や難民キャンプなど危機的状況に生きる若い女性達への教育機会の提供がありました。
教育を受けられることで、本人の人生、その家族、彼らの社会そして世界までもが変わる力があります。 だからこそG7は、困難あるいは危機的状況にいる少女と女性を対象に数億ドル規模の投資を行っています。
これは「男女平等」と「賃金格差解消」の対策に加えて行います。 この数年で改善が見られたものの、カナダは依然「OECD(経済協力開発機構)」の男女賃金格差の平均値に遠く及びません。だからこそ、私たちは賃金格差解消に向け積極的に提案しています。
女性の地位向上や自立に向け議論することは、単に倫理的だからとか正しいことだからではありません。これは経済の議論であり、そうするのが賢明だからです。 活躍する女性が増えれば、経済も好転し、経済成長がもたらされます。 対策を提案することで、より良い解決策、より良い決断が出せるようになるでしょう。私たちはさまざまな理由からこの問題に取り組んでいるのです。
難民がホームレス支援事業にもたらす重圧
販売者(モスタファ・ロトフィ):
昨年、2万人を超える移民が難民としてカナダに入国、 その大半がケベック州ラコールにやってきました。 その数はこの夏に史上最多となることはさまざまな事由から明らかです。こうした人の流れが、ケベック州のホームレス支援事業(住宅、フードバンク、炊き出し、衣類提供など)に多大な負担となっています。流入してくる移民に最前線で対応している団体を首相はどのように支援しますか。 ケベック州政府が負担している支出を補填するのですか。
トルドー首相:
移民は社会の強さ、成長と利益の源であると私たち全員が認識しています。 国民は高齢化し、産まれる子供の数は年々減っていますから、移民に来てもらって活躍してもらわなくては。 とは言え、厳しい移民審査は設け、不正入国の恐れがある場合に適用されるルールもあります。
カナダで難民申請する人々が本当に戦争、テロ、迫害や暴力から逃れてきた「正当な難民」であるかはしっかり審査されますのでご安心ください。 難民と認められない場合は送還される、あるいはそのような人が申請できる(通常の)移民プログラムもあります。
難民向けの「難民保護システム」において、医療や住宅に追加コストが発生していることは認識しています。連邦政府は各州政府と連携し、難民支援に使われるお金がきちんと必要としている人に渡るよう取り組んでいます。
地域社会固有のニーズについて
“地域組織の関与もなく、首都オタワでまとめた総括的解決策は真の解決策ではありません。”
“『リティニエール』誌のような組織は、人々の尊厳を取り戻すうえですばらしい活動だと思います。”
販売者(ジャンクロード・ノー):
ケベック州政府とモントリオール市は、ホームレス問題対策における優先順位づけを地元組織に委ねることに合意しました。地域固有のニーズに 連邦政府がどう対応するのかはまだ知らされていません。バンクーバー市のニーズとモントリオール市のそれとは必ずしも同じではありません。連邦政府の住宅対策は、新しいプログラムを策定するだけでなく、既存組織にも資金援助するのかどうか教えていただけますか。
トルドー首相:
連邦政府の戦略とアプローチは地域社会とともに取り組むものだと明言できます。ニーズや解決策は、地域、町、ときには地区単位でも異なると認識しています。ですから、現場で課題に取り組み、その地域社会を熟知している方々こそ真の専門家です。
人々を元気づけ、成功をサポートし、尊厳を取り戻し、再び社会で活躍できるよう支援している皆さんは、私にとって非常に重要な存在です。 首都オタワでまとめた総括的な解決策を、地域組織との連携なしに全国レベルで適用しても真の解決策にはなりえません。
この地方連携プロセスに深く関わるのは、ジャンイヴ・デュクロ大臣とアダム・ヴォーン政務官です。ヴォーン政務官は、トロント市役所での経験からホームレス問題の専門家として長年活躍しています。
私たちは地域の方々の声に耳を傾け、連携するとともに、現場で並々ならぬ努力をしている社会的事業を高く評価しています。 『リティニエール』誌のように人々の尊厳を取り戻すための活動はすばらしいですし、社会にプラス効果をもたらしています。
先住民問題について
販売者(イザベル・レモン):
首相は先住民問題を再優先事項とされました。公式に謝罪し、諮問委員会を立ち上げ、住宅や飲料水などの目標も掲げました。初任期満了までに、具体的にどの課題を解決する見込みですか。
トルドー首相:
良い質問ですが、ひとつ訂正させてください。この問題を再優先事項にしたのは私だけではありません。全てのカナダ人がそうしたのです。 先住民でないカナダ人にとって、今こそ先住民社会と和解し、真のパートナーシップを確立するときなのです。 この課題に取り組むことができ、とても光栄です。
私たちは先住民コミュニティに新しい学校を建て、何千人もの若者が今学期から学び始めています(*7)。住居、コミュニティーセンター、診療所も建設中です。全国の地域社会でトレーニングと自治を行えるよう投資も行っています。
*7 これまで先住民の子どもたちは、120年以上にわたるカナダ政府の同化政策(1874年〜)によって親元から引き離して寄宿学校に強制入学、元々の文化的習慣や言葉が禁止され、教師たちから差別や虐待を受けてきたとの事実が2015年発表の報告書(「Truth and Reconciliation Commission」から)に記されている。
飲料水に関しては、2019年末までに先住民居住エリアに出ている「水道水の煮沸勧告(*8)」を解除させます。 公約では2021年3月までとしていますが、2019年末までにその大半を解除できるでしょう。
*8 水道水の煮沸勧告:水道水への病原菌の混入が危惧される場合に行政より発令される勧告で、利用前に最低1分間の煮沸が推奨される。現在カナダには81件の勧告が出されており、50以上の先住民エリアに深刻な影響を与えている。カナダ政府の取り組み
この問題に時間を要している理由の一つは、コミュニティ内のさまざまな要素と関連しているためです。 数年後に元の木阿弥とならないよう、この問題を根本から解決するには、トレーニング、インフラ、管理などあらゆるものへの投資が必要です。先住民社会の安全を確保するため、必要となる改革を実施しなくてはなりません。
明確な戦略
今回のインタビューで首相が表明した方針を裏付ける発言が、6月11日、ジャンイヴ・デュクロ家庭・子供・社会開発大臣からあった。
・各地域に分配されている現在の予算は「減少しない」。ケベック州についてはモントリオール地区に加え、大ケベック市、トロワリヴィエール、シェーブルック、サグネ地区も戦略対象となる。
・2021-2022年度の予算額は2015-2016年度より「倍増する」見込み。
・地域社会ごとに有効となる施策をよりフレキシブルに選択できるようにする。
・連邦政府は地方自治体と地域のサービス提供者に予算を直接分配する。
・予算分配についてケベック州政府と合意を取り付ける期限を2019年4月1日とした。
・先住民のホームレス減少を目的とした連邦予算を増額させる。
聞き手:『リティニエール』誌の販売者兼レポーター(販売場所)
モスタファ・ロトフィ(モントリオール大学駅)
ジャンクロード・ノー (シャン・ド・マルス駅)
イザベル・レモン(ジョリクール駅)
By Laurent Soumis
写真:Mario Alberto Reyes Zamora (L'Itinéraire)
Translated from French by Ruby Irene Pratka
Courtesy of L’Itinéraire / INSP.ngo
参考:トルドー首相による先住民への公式謝罪
https://www.youtube.com/watch?v=bELOxJiaZAs
http://blogos.com/article/332434/
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