先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

先住民の遺骨返還、海外は国が後押し 法整備や費用助成

2023-05-09 | アイヌ民族関連
会員限定記事
北海道新聞2023年5月8日 19:57
 先住民族の遺骨に関し、海外では政府が法整備や予算措置で積極的に関与することで返還を実現する例が相次いでいる。
 米国は、1990年に連邦法「アメリカ先住民墳墓保護返還法」を制定。国内の博物館や大学などに対し、保管する遺骨や副葬品の目録を作成し、帰属する部族と返還に向けて協議することを求めている。調査や協議にかかる費用は連邦政府が助成し、返還を後押ししている。
 オーストラリアでも90年代に連邦政府が返還プログラムを整備し、国内の博物館が保管する遺骨や副葬品の本来の所在地を調べ、関係する部族への返還作業に国費を支出した。2011年には新たなガイドラインを作成。海外の研究機関などへの調査費用を援助する基金も設けている。
 ・・・
(金子文太郎)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/842551/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイヌ民族遺骨、海外保管の実態把握進まず めど立たぬ返還、国の積極関与求める声<フォーカス>

2023-05-09 | アイヌ民族関連
会員限定記事
北海道新聞2023年5月8日 19:43(5月8日 23:19更新)

南樺太から持ち出された遺骨を受け取るエンチウ遺族会の田沢守会長(左)=6日、オーストラリア・メルボルン(共同)

 アイヌ民族の遺骨は、8日にオーストラリアから道内に戻ってきた4体以外にも、海外で確認されている例がある。遺骨について調査している北大アイヌ・先住民研究センター長の加藤博文教授はロンドンの博物館でも26体のアイヌ民族の遺骨を確認。過去の研究者の資料などから、少なくとも8カ国に持ち出されたとみられるが、実態把握は進んでいない。海外調査の実施など、早期返還に向けた日本政府の積極関与が求められる。
 「長い年月を異国の地で過ごした先人の思いはいかばかりか。ようやく故郷に帰り、喜んでいると思う」。オーストラリアで遺骨返還式に参加し、8日に新千歳空港に戻った北海道アイヌ協会の大川勝理事長は記者団に感慨深そうに話した。
 返還された遺骨は、加藤教授がオーストラリアの研究者からの情報をもとに、2017年から調査を開始した。現地の博物館の遺骨に添えられていた資料と日本に残る資料を照合し、アイヌ民族の遺骨であることが判明。うち2体は、南樺太と旧前田村(現後志管内共和町)から持ち出されたことが分かった。
 その後、加藤教授は日本政府や北海道アイヌ協会に連絡し、現地の博物館もオーストラリア政府を通じて日本側に返還する意向を伝えた。
 19世紀にアイヌ民族は欧州の人種と遺伝的につながりがあるとの学説が注目され、その検証のため、欧州の研究者や、旧帝大の和人研究者が遺骨を収集した。1888年(明治21年)とその翌年に道内のアイヌ墓地などから150体以上を持ち出した東京帝国大(現・東大)の小金井良精(よしきよ)教授が、遺骨の多くをアイヌ民族の許可なく盗掘した形で集めていたことが同教授の日記から分かっている。
 今回の遺骨4体のうち3体は小金井教授が、もう1体も同大の別の教授がオーストラリアの先住民族アボリジニの遺骨と交換したとみられている。在日オーストラリア大使館のクレア・エリアス政務担当公使は8日、新千歳空港で記者団に「(日本にあるアボリジニの)遺骨をオーストラリアに返すことは優先事項だ」と強調した。
 ・・・・・
(金子文太郎)
※「アイヌモシリ」のリは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/842538/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

豪のアイヌ民族遺骨4体、道内に到着 海外から返還2例目

2023-05-09 | アイヌ民族関連
会員限定記事
北海道新聞2023年5月8日 19:07(5月9日 00:04更新)
 オーストラリアの博物館から返還されたアイヌ民族の遺骨4体が8日、新千歳空港に到着した。海外からの返還は2017年のドイツの1体に続き2例目。4体のうち3体は、胆振管内白老町のアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の慰霊施設で保管され、南樺太(ロシア・サハリン)から持ち出された1体は、樺太アイヌの子孫でつくるエンチウ遺族会に引き渡すまで、北大で一時保管する。
 4体の遺骨のうち、ウポポイに保管される遺骨3体は、1921年(大正10年)に旧前田村(現後志管内共和町)で収集された1体と身元不明の2体。南樺太の1体は36年(昭和11年)に持ち出されたとみられる。
 遺骨はそれぞれキャンベラにあるオーストラリア国立博物館と、メルボルンのミュージアムズ・ビクトリアから返還された。いずれも頭骨で副葬品はない。
 ・・・
(武藤里美、金子文太郎)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/842519/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オーストラリアから返還されたアイヌ民族の遺骨 北海道に到着

2023-05-09 | アイヌ民族関連
NHK05月08日 18時33分
日本の学者が研究目的でオーストラリア側に提供し、現地の博物館に保管されていたアイヌ民族の遺骨が、およそ100年ぶりに日本側に返還され、8日、北海道に到着しました。
返還されたのは、道内や樺太、いまのサハリンで発見されたアイヌの人たちの遺骨あわせて4体です。
遺骨は、1910年代から30年代にかけて研究目的で日本の学者からオーストラリアに送られ、2つの博物館で保管されていました。
オーストラリア側が2017年に返還の意向を示し、両政府による交渉をへて今月6日、オーストラリアのメルボルンで日本側に返還され、8日、北海道に到着しました。
北海道アイヌ協会の大川勝理事長は「先祖の遺骨の返還に尽力してくれたオーストラリアと日本の関係者に感謝したい。まだ海外に残されている遺骨も故郷に戻ることができるよう取り組んでいきたい」と話していました。
また、樺太のアイヌの子孫で作る「エンチウ遺族会」の田澤守会長は「先祖の1人が私たちの仲間のもとに帰ってくることができました。いつか樺太に戻れるよう日本とロシアの関係が改善することを願っている」と話していました。
返還された遺骨は、胆振の白老町にあるアイヌ文化の発信拠点「ウポポイ」と北海道大学のそれぞれの慰霊施設で保管されるということです。
https://www3.nhk.or.jp/sapporo-news/20230508/7000057367.html

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイヌ民族の権利回復、運動リーダーが映画で訴える

2023-05-09 | アイヌ民族関連
日本経済新聞2023年5月8日 9:42 [有料会員限定]
アイヌ民族解放運動のリーダーで、神話などの題材をアイヌ伝統刺しゅうで描く「古布絵(こふえ)」作家で、アイヌの魂をうたう詩人としても知られる宇梶静江さん(90)主演のドキュメンタリー映画「大地よ アイヌとして生きる」(金大偉監督、藤原書店企画・制作)が公開された。
サケや熊、山菜まであらゆるものをカムイ(神)の恵みとして受け取り、祈りの儀式「カムイノミ」を通じて自然への畏敬の念と感謝を忘れずに生き...
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読みいただけます。
残り1001文字
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD303670Q3A430C2000000/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アイヌ遺骨返還、豪から千歳到着 続く交渉「早く供養を」 異国で眠る先人まだ /北海道

2023-05-09 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2023/5/9 地方版 有料記事 1003文字
 オーストラリアの博物館が保管するアイヌ民族の遺骨4体が新千歳空港に到着した8日、現地で遺骨の返還に立ち会った関係者からは、豪政府への感謝の言葉とともに、約100年もの間、古里から遺骨を持ち出されてしまった先人の苦しみに思いをはせる声が上がった。ほかにも海外で保管されている遺骨があり、返還の交渉は続く。【真貝恒平】
 「アイヌの方々の遺骨が長きにわたり古里を離れることになったことに対し、深い遺憾の意を表したい」。アイヌ民族の遺骨を受け取って帰国した内閣官房アイヌ総合政策室の吉井浩室長が新千歳空港に集まった報道陣に向けて発した第一声だった。
 返還された遺骨は、国内の研究者が1910~30年代に人類学などの研究目的で豪側に提供したものだ。うち1体は、36(昭和11)年に南樺太(現サハリン)のポロナイ川河口付近で発掘されたという記録が残されている。樺太アイヌ(エンチウ)の子孫らでつくる「エンチウ遺族会」への引き渡しが検討されており、一時的に北海道大で保管する。残る3体は白老町の「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の慰霊施設に移される。
 ・・・・
https://mainichi.jp/articles/20230509/ddl/k01/040/018000c

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「故郷に帰り喜んでいる」オーストラリアの博物館が保管 アイヌ民族の遺骨が北海道に到着

2023-05-09 | アイヌ民族関連
STV2023/05/08

「故郷に帰り喜んでいる」オーストラリアの博物館が保管 アイヌ民族の遺骨が北海道に到着
オーストラリアの博物館が保管していた、アイヌ民族の4体の遺骨が日本側に返還され、新千歳空港に到着しました。
オーストラリアから返還されたアイヌ民族の遺骨は、正午すぎに新千歳空港に到着しました。
(北海道アイヌ協会 大川勝理事長)「ようやく故郷に帰り、喜んでいると思います」
遺骨は1911年から36年にかけて、東京大学の教授がオーストラリア側に寄贈したもので、
2017年にオーストラリア政府が2つの博物館に保管されていると日本側に通知していました。
https://nordot.app/1028229703499595776?c=768367547562557440

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

阿寒湖のコタン紹介 28日まで 伝統ト革新展 ウポポイ

2023-05-09 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2023/5/8配信
白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)は28日まで、体験学習館別館2と3で阿寒湖アイヌコタンの歴史や文化を紹介する「伝統ト革新展」を開いている。アイヌ民族文化財団と阿寒アイヌコンサルンの共催。

阿寒湖のフチ・エカシ展」の会場
 別館2で開催中の「阿寒湖のフチ・エカシ展」(別館2)は、山本多助氏ら4人がどのような人柄だったかを身近に感じてもらおう―と、親族の思い出話や本人の歌声、演奏の音源を会場で流している。
 別館3では、阿寒地域で上演されている舞台「ロストカムイ」の映像を撮影したヨシダナギさんの写真展のほか、30分間の映像を(1)午前10時45分(2)午後0時45分(2)同3時45分(4)同6時―の4回上映している。
 また、国立アイヌ民族博物館で14日まで開催中のテーマ展示「アカント ウン コタン―阿寒湖畔のアイヌ文化―」にちなみ13、14の両日、阿寒でしか見られない「ロストカムイ」の特別公演を予定している。
https://hokkaido-nl.jp/article/29239

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

縄文時代の土器など展示 軽舞遺跡調査整理事務所を特別開放 厚真町教委

2023-05-09 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2023/5/8配信
厚真町教育委員会はゴールデンウイーク最終日の7日、町内軽舞の軽舞遺跡調査整理事務所を一般に特別開放した。縄文時代の土器や、かつて使用されていた農機具など1万点以上ある貴重品が展示されたほか、幌里地区にあった学校の様子を伝える上映会も行われ、町内外から訪れた歴史に興味を持つ人や家族連れらを楽しませた。

学芸員の説明を受けながら、貴重な展示物の数々に目を丸くする来館者
 同事務所は通常、平日のみ開館しているが、「平日だとなかなか来られない」という声を受けて開催。昨年秋に行った開放事業が好評だったことから、今回改めて企画した。
 施設の入り口前には、縄文土器や石器、黒曜石などがずらりと並んだ。アイヌ民族の生活を伝えるエゾシカの頭骨の復元や、2018年9月の胆振東部地震で山腹崩壊が起きた幌内地区の山の様子を再現した3D模型などもあり、学芸員が解説しながら紹介した。
 貴重な資料の数々に来館者からは「すごい規模が大きい」「一日では見切れない」と驚く声がたくさん寄せられた。8ミリ映写機を使った上映会では、旧幌里小中学校で行われた運動会の様子などを映像で紹介した。
 町教委の乾哲也学芸員は「町民はかつてを懐かしみ、縄文やアイヌ民族のことを知りたくて来た町外の人も多かった。初めて来たという人がほとんどだった」と言い、「今後も上映会など、楽しめるものと合わせて企画できれば」と話していた。
https://hokkaido-nl.jp/article/29240

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山のイオル 体験・野外学習 20日、白老

2023-05-09 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2023/5/8配信
 一般社団法人白老モシリは、20日に白老町森野地区で開催する「山のイオル体験・野外学習」の参加者を募集している。アイヌ文化にゆかりが深い約40種類の植物が植えられている森野野草園で、植物を観察し解説を聞くほか、山菜を使った料理の調理・試食、…
この続き:179文字
ここから先の閲覧は有料です。
https://www.tomamin.co.jp/article/news/area2/106677/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「健康とは完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり…

2023-05-09 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2023/5/9 東京朝刊 609文字
 「健康とは完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病または病弱の存在しないことではない」。戦後まもなく採択された世界保健機関(WHO)憲章の健康の定義だ。官報で「福祉」と訳したのが「ウェルビーイング」である▲SDGs(持続可能な開発目標)にも盛り込まれ、近年、よく使われるカタカナ語になった。福祉の本来の意味である幸福とほぼ同様の概念だ。来春には東京の大学に日本初の「ウェルビーイング学部」が誕生する▲従業員や学生の「ウェルビーイング」確保は企業や教育機関の社会的責任という要請も強まりつつある。心身の健康に加えて、幸福感をいかに高めるかが重視されている▲WHOが3年余続いたコロナの緊急事態宣言を解除し、感染症法上の位置づけも5類に移行した。油断はできないが、社会生活の変化は避けられない。心配されるのが大型連休明けに増える「五月病」への影響である▲4月に新年度が始まる日本特有の現象だ。進学や就職など環境変化で緊張が続き、十分に適応できないまま連休を迎える。学業や仕事に復帰する際に気分が落ち込む人が多い。今年は制限されていた人との接触も増加する▲気持ちがブルーになったら……。国民の「ウェルビーイング」に責任を持つ厚生労働省は友人と会話し、笑いを増やし、趣味を持つことなどを勧める。会社や学校に相談してもいい。自分の責任と思い込むのは禁物だ。<五月憂し手を拍(う)つためのアイヌのうた>平野摩周子
https://mainichi.jp/articles/20230509/ddm/001/070/075000c

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【毒展レビュー】特別展「毒」大阪市立自然史博物館ネイチャーホールで5月28日まで まるで毒のテーマパークや!

2023-05-09 | アイヌ民族関連
美術展ナビ2023.05.09いずみゆか

ハブ(約30倍)拡大模型の近影。牙から毒が滴るという芸の細かさ
背徳感がある響きで、何やらドキドキする言葉「毒」。実は私たちの身近に驚くほどたくさんあると知り、腰を抜かしました。2022年に東京の国立科学博物館で約30万人もの来場者を記録した注目の特別展「毒」が5月28日まで大阪市立自然史博物館ネイチャーホールへ巡回中です。(ライター いずみゆか)
総展示“毒”数は約250点、全5章にわたって動物学、植物学、地学、人類学、理工学の研究者が総力をあげて掘り下げ、ポップ&クレイジーなテイストで、私たちにとって「毒とは一体何なのか?」をテーマパークのように楽しみながら考える内容です。
一見、グロテスクに感じる有毒両生類のホルマリン漬けもポップな蛍光ピンクやグリーンの壁紙で展示されると、あら不思議
大阪展の会場が約50年の歴史を誇る「長居植物園」を有する大阪市立自然史博物館とあって、本記事では、地球上の数ある毒の中でも、地味ながらジワジワと味わい深い「植物の毒」に注目しながらご紹介します。
(本展の全容については、プレビュー記事や「ハカセとNARIのときめくアート」、東京展のレビュー記事もご覧ください)
まるで毒のテーマパーク!どの年代でも楽しめる
「秘密結社 鷹の爪」でお馴染みの「鷹の爪団」とコラボ
本展の特徴は、子どもから大人まで様々な年代が楽しみながら、展覧会に込められたメッセージについて自然と考える工夫が随所になされている点。NHK Eテレ『ビットワールド』内で放映された「秘密結社 鷹の爪」でお馴染みの「鷹の爪団」とコラボし、メンバーが世界征服に使えそうな毒を探すついでに!?会場内のあちこちでナビゲートしてくれます。
その他にも、東大発の知識集団QuizKnock(クイズノック)から出題される様々な毒クイズや大人気小説『薬屋のひとりごと』(著:日向夏 イラスト:しのとうこ 主婦の友インフォス刊)とのコラボなど様々なクリエイターが参加。
「オオスズメバチに襲われている時の大勢を再現しているので、目が合うのです」と解説する長谷川学芸員
さらには、本展の本丸とも言える第2章「毒の博物館」の入り口からオオスズメバチ(約40倍)やハブ(約30倍)などの拡大模型がお出迎え。ここは“腐海”か!?という気分に‥‥‥。そのリアルさと迫力に恐れおののきます。さながら、毒のテーマパークと言っても過言ではないほど、エンターテインメント性に溢れているのです。
ほんまにこの世は毒だらけ
本展担当の長谷川学芸員が「博物館として、ほこりの展示はたぶん初!」と語る激レア展示。国立科学博物館のハウスダストは、美術品専用運送車で丁寧に運ばれてきたとのこと
興味深いのは、一般的にイメージする毒キノコや毒蛇、フグなど、基本的に人を含む生物に害を与える物質として理解されている毒が“薬”の効能を持っているところ。
他にも、埃(ハウスダスト)やピーナッツ、小麦粉などアレルギー反応を引き起こす物質や近年、海洋生態系への影響が懸念されているマイクロプラスチックなど私たち人間が作り出した物質も毒に分類される点です。
人が作り出した毒「マイクロプラスチック」の展示解説
大阪展のみの展示。生きたアカクラゲ
普段よく口にする玉ねぎやブドウ、チョコレートなども毒を持つ物質として紹介されているので、驚きです。自然界にも人間界にも数多の種類の毒があふれている‥‥‥。
展示風景
毒について、本展の図録では、「「生物に何らかの作用を与える物質」のうち、人間にプラスに働くものを薬、マイナスに働くものを毒と呼び、多様で複雑な自然界を理解し、利用するために人間が作り出した概念」と説明。薬と毒は紙一重なのですね。
【毒展図録開封の儀】美しい装丁で豊富な情報量が魅力の特別展「毒」の図録を紹介特別展「毒」はもうご覧になりましたか? 大好評の毒展は、国立科学博物館で2月19日まで開催中です。まもなく会期終了ですが、3月18日から5月28日まで大阪市立自然史博物館 ネイチャーホールに巡回します。私も会場展示を拝
植物はほぼすべて毒を持っている!?
植物ってほぼすべて毒があるんです!と語る長谷川学芸員。特に豆科は毒が多いとか
本展を担当する大阪市立自然史博物館・植物研究室の長谷川匡弘学芸員は、「植物について、ぜひ一番知っていただきたいのは、野菜や果物など、私が食べているものにも毒があることです。植物はほぼすべて毒を持っています。人間に有効な毒だけでなく、人に効かなくとも他の生物(哺乳類や昆虫など)に効く毒を持っているのです」と私たちが驚くような内容を説明します。
殺さぬ程度に生かす・・・
展示パネルより。ジャガイモやヤマゴボウ類など、お馴染みの根菜類も食中毒を起こす
「植物にとって、食べた者が死んでしまっては意味がありません。死ぬと食べた者が学習せず、また食べられてしまいます。食べて死なない程度に苦しませると学習して、食べなくなるのです」(長谷川学芸員)
生物(動物・植物・菌類)が持つ毒の多くは、主に狩り(捕食)など「攻めるため」と「身を守るため」にありますが、毒草などのイメージと違い、ほとんどの植物は「強すぎる毒を持たない」とのこと。むしろ、トリカブトなどの強毒な植物は例外に近いそうです。
植物の繫殖生態が専門の長谷川学芸員は、「種子に一番毒があるのは、子孫を残すためです。食べて消化されてしまっては、繁殖できませんからね」と、繁殖にも“毒”が関係していると説明してくれました。
日本3大有毒植物であるオクトリカブト、ドクウツギ、ドクゼリ。「強毒で知られるトリカブトの根の主成分アコニチンですが(矢毒としてアイヌ民族などが利用しているが)、加工すれば漢方生薬「附子(ぶし)」として、亢進作用、強心作用などの効果があります」(長谷川学芸員)
クレイジーな実験から新たな知見まで
ジャスティン・シュミット博士の「シュミット指数」
館内のユニークなコラムの中でも注目なのが、ツイッターで「これはクレイジー!!」と話題になったジャスティン・シュミット博士の「シュミット指数」です。どのハチに刺されるのが一番痛いのか、なんと自ら刺されてみることで数値化し、比較可能にしたもの。
Lv.4の「泡風呂に入浴中、通電しているヘアドライアーを浴槽に投げ込まれて感電したみたいな痛み」など・・・もはや、どれくらいの痛みなのか分からないレベルで超痛かったのだろうなと、思わずクスっと笑える表現力。2015年にイグノーベル賞を受賞しています。
ヤマカガシのホルマリン漬け
他にも、興味深いのは、マムシよりも数倍の猛毒を持つヤマカガシ。口の毒腺(毒牙)と首の辺りの頸腺毒(けいせんどく)の2つの種類が違う毒を持ちます。頸腺毒は、ヒキガエルを捕食することで取り込んだ神経毒なのだとか。かつて毒を持たない蛇と誤解されがちでしたが、絶対に触れてはいけません。毒は、生物の進化にも関わっているのです。
「毒」よりも本当に怖いのは・・・
毒があるけれど、おいしいもの
本展の図録の最後には、「人間は、知恵や技術で毒をうまく使うことを学んだ一方、自然界になかった新たな毒をつくり出してきた。そして、普通の生物にはできない移動手段や物流を編み出し、かつてないスピードと範囲で、世界に移動し、広がり、その結果として毒生物の移動にも関わっている」と記されています。とどめには、「私たちは、毒から逃れることはできないのだ」と言い切っています。
また、私たち人間は、フグやウナギ、コンニャクなど毒があると分かっているにも関わらず、「何とかして食べたい欲」から食べ方を工夫し、さらには、毒を利用して暗殺や大量虐殺を犯してきた歴史を持ちます。
実は、毒そのものよりも人間の方が恐ろしいのでは?と思わせる、ちょっぴり怖くて、おもしろさが尽きない展覧会です。
特別展「毒」
会期:2023年3月18日(土)~5月28日(日)
会場:大阪市立自然史博物館ネイチャーホール(大阪市東住吉区長居公園1‐23)
開館時間:9時30分~17時(入場は16時30分まで)
入場料:大人1,800円/高大生1,500円/小中生700円
美術展ナビチケットアプリでも販売中
休館日:月曜日
詳しくは展覧会公式サイトへ。
毒展(特別展「毒」)徹底ガイド 大阪市立自然史博物館で5月28日まで特別展「毒」(毒展)が大阪市立自然史博物館(東住吉区長居公園)で5月28日(日)まで開かれています。美術展ナビでは、見どころのポイントを紹介するプレビュー記事や、これに先立ち東京の国立科学博物館で開催された際の動画、注目
https://artexhibition.jp/topics/news/20230508-AEJ1356540/

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする