先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

海外のアイヌ民族遺骨「数カ国に保管」 岡田担当相

2023-05-13 | アイヌ民族関連
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2023年5月12日 22:22
 岡田直樹アイヌ施策担当相は12日の記者会見で、海外に持ち出されたアイヌ民族の遺骨に関し「数カ国に保管されていると承知している」と明らかにした。ただ、専門家による確認が途上段階であることなどから「遺骨を保管する関係機関への確認を進めるなど、さらなる返還の実現に向けて諸課題の整理を着実に進めたい」とした。
 海外のアイヌ民族の遺骨は、2017年にドイツの民間学術団体から1体、今月上旬にオーストラリアの博物館から4体が日本側に返還されている。岡田氏は「今般、オーストラリア側の協力のもと、遺骨が無事に戻ってきたという報に接して安堵(あんど)の思いを抱いている」と語った。(小林史明)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/845050/

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釧根で体験型観光続々 レストランバスで国立公園巡り、雪遊びツアー…9月の国際イベント弾みに

2023-05-13 | アイヌ民族関連
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北海道新聞2023年5月12日 21:49(5月12日 22:07更新)

13日に今季の営業が始まる「阿寒湖の森ナイトウオーク カムイルミナ」。本年度中に、ナレーションが多言語で流れるアプリが公開される=2022年6月
 体験型観光の国際イベント「アドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット(ATWS)」の関連事業が釧路、根室管内で9月に開かれる。開催後のインバウンド(訪日客)の増加が見込まれることから、国立公園をレストランバスで巡るツアーや、雪遊びを満喫するツアーなど、道東ならではの体験イベントが次々と計画されている。
 ATWSは9月11~14日に札幌市などで開かれ、世界60カ国から500人を超す観光関係者が参加する。ATWSに先立つ同5~10日には道内15地区で、参加者を招待するプレイベントが開かれ、阿寒摩周国立公園でトレッキングや釣りを体験してもらうツアーや、知床国立公園で野生動物を観察するツアーが開かれる。
 新型コロナウイルスの感染拡大で激減していた海外への情報発信が期待されることから、釧根管内でも海外客の増加を見据えたツアーが企画されている。「摩周・標茶・鶴居プロモーションボード協議会」は、冬期間に阿寒摩周国立公園と釧路湿原国立公園を2階建てレストランバスで巡り、車内で景色と料理を楽しんでもらう3泊4日のツアーを企画中で、来年以降の商品化を目指す。
 ・・・・
(佐竹直子)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/845008/

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サケの生態テーマに 旭川で千歳水族館館長が講演

2023-05-13 | アイヌ民族関連
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北海道新聞2023年5月12日 18:58
 サケのふるさと千歳水族館(千歳市)の菊池基弘館長が、旭川市神楽公民館で道内のサケの生態などについて講演した。
 市民団体・大雪と石狩の自然を守る会が4月30日に開いた。菊池館長は、道内に生息するサケの仲間の紹介や、2015年にリニューアルした同水族館の見どころなどを話した。
 ・・・
(菅沢由佳子)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/844827/

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<ウポポイ オルシペ>64 阿寒湖アイヌコタン 物語を舞台に

2023-05-13 | アイヌ民族関連
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北海道新聞2023年5月12日 11:43

人形劇「ふんだりけったりクマ神さま」の人形(阿寒アイヌ工芸協同組合蔵)
 今月14日まで開かれている第4回テーマ展示「地域からみたアイヌ文化展 アカント ウン コタン 阿寒湖畔のアイヌ文化」。第3章では阿寒湖畔の「芸能」について紹介しています。
 阿寒湖アイヌコタンのおおよその景観ができあがってきた昭和30年代ごろ、観光客に向けてアイヌの歌や踊りが披露されるようになりました。その後、観光客が増加し地域の観光振興が進む中、先人より受け継いだ伝統文化を継承しつつ、時代とともに新たな表現や創造に挑戦する取り組みが行われています。
・・・・
(文・写真 矢崎春菜=国立アイヌ民族博物館学芸員)
※イコロのロは小さい字
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/844603/

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<百年記念塔の見えるマチ 変わる風景 変わらぬ思い>番外編 文化意識考える契機に 北翔短大・田口教授に聞く

2023-05-13 | アイヌ民族関連
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北海道新聞2023年5月12日 11:40
 住民らに長く親しまれてきたが、老朽化により解体され、来春には姿を消す北海道百年記念塔。北翔短大ライフデザイン学科長で、江別の地域文化を探究する市民団体「江別創造舎」の代表を務める田口智子教授(経営学)に、地域の住民にとって記念塔とは何だったのか聞いた。
■存在の大きさ再認識
 ――1月に工事が始まり、解体が進んでいます。
 「記念塔の周辺では解体が決まってから、これまで以上に写真を撮る住民を見かけます。札幌市厚別区や江別市など道立野幌森林公園がまたがる地域では、精神的なよりどころとして日常の風景に溶け込んでいました。当たり前の存在は意識しにくいものですが、無くなることがはっきりして存在の大きさを再認識したのかもしれません」
■100年持つことを意識
 ――2019年に設計者の井口健氏を招いて講演会を開きましたね。
 「解体が話題になり始めた時期で、記念塔に詳しい方を探しているうち井口氏を知りました。北翔大地域連携センターと江別創造舎の連携講座として7月と12月に企画し、内部の構造や設計者としての思いを話してもらいました。『100年持つことを意識した
・・・・・
(聞き手・土門寛治)
<ことば>井口健(いぐち・たけし)氏 檜山管内今金町出身。札幌工業高卒業後、札幌の設計事務所に入社。1967年、道が北海道100年記念事業として行った北海道百年記念塔の設計コンペに応募。299点の中から最優秀賞に選ばれ、設計を手掛けた。今年1月、84歳で死去。
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/844600/

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白老町  アイヌ工芸や作家たち 冊子で紹介

2023-05-13 | アイヌ民族関連
NHK2023年5月12日(金)午後2時25分 更新
こんにちは!「ほっとニュース道央いぶりDAYひだか」胆振日高担当リポーターの内部明日香です。大型連休が終わってしまいましたね。私事ですが、連休中の5月3日で25歳になりました!25歳もニコニコで頑張ります(^ ^)
さて、今回のななまるマップで向かったのは白老町です。アイヌ文化を継承する作家たちを紹介する冊子がこの春完成したんです。
その名も「白老ハポの手仕事」。「ハポ」とはアイヌ語で「お母さん」や「年上の女性」を意味するとのこと。30ページに及ぶ冊子では、アイヌ文様の刺しゅうや木彫りなどを手掛ける町内在住の作家たちがインタビューを交えて紹介されています。

冊子をまとめたのは札幌市出身の乾藍那さんです。幼いころからアイヌ文化に関心を持っていたそうで、おととし白老町に移住して地域おこし協力隊のアイヌ文化振興担当になりました。冊子に込めた思いを伺いました。
「冊子で取り上げた方々は、子育てや別のお仕事などもあって、手工芸に関わるようになった時期は遅い方が多いのですが、50代からでもすごく研さんを積んですばらしい技術を持っているんです。まだ、作家としてはあまり知られていないのかなという人も多いので、受賞歴などどれだけやってきているのかを紹介したいなと思いました。」
アイヌ文化振興担当になってから、乾さんはアイヌ文化を詳しく知ろうと刺しゅうや木彫りの講座、アイヌ語教室などに通い詰めました。出会った作家との交流も深め、取材を続けてきました。今回の冊子はその集大成ともいえるものです。
乾さんが冊子で紹介した作家の方にもお話を聞かせてもらいました。“白老の手工芸の母”とも呼ばれる山崎シマ子さんです。実は、私も以前、白老町でアイヌ伝統の工芸品について取材した際にお世話になったことがあるんです(^ ^)1年ぶりの再会、あたたかく迎え入れてくださいました!
町内で30年以上も工芸品を作り続けている山崎さんは、アイヌ工芸グループ「テケカㇻぺ」の代表で、令和3年度にはアイヌ民族文化財団から「アイヌ文化賞」を受賞しています。そんな山崎さんは冊子についてどう思っているのでしょうか。
「冊子を通していろんな人に紹介してもらえるのはありがたいです。今までそういう人はあまりいなかったですから。まだこういう仕事をしている人がいると知らない人が多いですからね。」
山崎さんは乾さんにアイヌ文化を教えてくれる作家のひとりで、乾さんもまた「山崎先生には感謝と尊敬ばかりです」とおっしゃっていました。まさに「ハポ」のような存在がいるって素敵なことだなと、お二人を見ていて感じました。
乾さんの地域おこし協力隊としての任期はあと1年。今後は大学と大学院で絵の勉強をした経験を生かし、さらに多くの人に向けて白老のアイヌ文化を発信していきたいといいます。その方法は…漫画!白老町に移住しアイヌ文化に出会っていった自分の体験を、エッセー漫画で発信していきたいと語っていました。どんな漫画が生まれるのか今からとても楽しみです♪
乾さんが制作した「白老ハポの手仕事」は、白老町役場とJR白老駅近くのポロトミンタㇻに置いてあり、無料でもらうことができます。これを読んだら作品だけでなくそれを生み出す人たちにますます興味がわく、そんな冊子です。ぜひ皆様手に取ってみてくださいね。それでは!
https://www.nhk.or.jp/hokkaido/articles/slug-n0ff542c66f78

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アイヌ民族が海洋交易に使った船「イタオマチプ」原寸大に復元され登別のクマ牧場で展示 北海道

2023-05-13 | アイヌ民族関連
HBC5/12(金) 12:18配信

 北海道登別市のクマ牧場では、アイヌ民族がかつて海洋交易に使った木造船が展示されています。
 全長11.4メートルの「itaomacip(イタオマチプ)」。200年余り前までアイヌ民族が千島列島などへの貿易に使った舟を、アイヌ文化学術研究会が原寸大に復元し、クマ牧場に寄贈しました。
 樹齢190年あまりのアカエゾマツをくりぬいて再現された船体は、荷物を積んで外洋航海ができるように、丸木舟の側面には板がつぎ足されています。
 「ユーカラの里」があるクマ牧場に加わったアイヌ文化の貴重な資料です。
のぼりべつクマ牧場 吉田廣勝さん
「非常に貴重な舟、ぜひ一度足を運んでご覧になっていただければ」
 「イタオマチプ」は、クマ牧場ロープウェー乗り場2階で常設展示されています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/f500e50cfef85ee755f7fb46ca482b7cc8352c99

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アイヌ民族復権に尽力 宇梶静江さんの軌跡たどる 「大地よ」東中野で上映 /東京

2023-05-13 | アイヌ民族関連
毎日新聞 2023/5/13 地方版 有料記事 537文字

「大地よ」に出演した宇梶静江さん=藤原書店提供
 アイヌ民族の復権に力を注いできた、古布絵(こふえ)作家の宇梶静江さん(90)の軌跡をたどる映画「大地よ アイヌとして生きる」(金大偉監督)が中野区東中野4の「ポレポレ東中野」で上映されている。民族の苦難の歴史と重ねながら、自身の半生を語る姿が描かれる。
 「アイヌは『分け合う』ことを大切にしてきた。そうしてだれもが平和に暮らせる社会になってほしい。このことを映画を通じて伝えたかった」と宇梶さんは言う。
 北海道浦河町に生まれ、二十歳で郷里を離れて、札幌の私立中学で学んだ。その後、上京して27歳で建築士の和人(日本人)と結婚。38歳の時に「ウタリ(同胞)よ、手をつなごう」と新聞の投書欄で呼びかけた。
・・・・・
【明珍美紀】
〔多摩版〕
https://mainichi.jp/articles/20230513/ddl/k13/040/006000c

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「アイヌ神謡集」 登別で講演会 27日、6月10日

2023-05-13 | アイヌ民族関連
苫小牧民報2023/5/12配信
 JR登別駅前の登別市観光交流センター「ヌプル」は5月から6月にかけて、アイヌ民族に伝わる物語を集めた「アイヌ神謡集」に関する講演会を開く。著者の知里幸恵(1903~22年)は同市出身で今年は同著出版100年に当たり、受講者を募集している。…
この続き:236文字
ここから先の閲覧は有料です。
https://www.tomamin.co.jp/article/news/area2/107052/

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なんて読むの??】旭川近郊にあったJR難読駅5選 =廃線駅編=

2023-05-13 | アイヌ民族関連
asatan2023年05月12日 公開
北海道にはアイヌ語由来の駅名がたくさんあります。そして、それは廃線となった旧国鉄駅にも多く存在します。今回はそんな廃線になってしまった過去の難読駅を5つご紹介します。
旧天北線 『敏音知』 駅
旧天北線にあった「敏音知」駅。
現在も敏音知岳の登山口として利用されている場所ですが、かつては造材(樹木を伐採して木材に加工するお仕事)が盛んな地域でした。
木材を搬送するのに鉄道が利用され賑わいましたが、モータリゼーションの影響で鉄道輸送の利用量も減少し、天北線廃線のきっかけにも繋がりました。
さてさて、この駅の読み方は‥‥
「ぴんねしり」駅でした。
名前の由来はアイヌ語の「ピンネ・シリ」(男である・山)からきているようで、旧天北線の隣の駅「松音知(まつねしり)」(女である・山)を含めた呼び名だったと言われています。
現在の天北線敏音知駅跡は小さなモニュメントが残されているだけで、駅舎などは残っていません。
ただ、ピンネシリというカタカナの名前を聞いてピンときた人もおられるかと思いますが、旧天北線敏音知駅跡は現在「道の駅ピンネシリ」として多くの人に広く利用されています。
「道の駅ピンネシリ」は地域の交流拠点として、またオートキャンプ場やコテージなども併設されていて、人々が訪れやすい環境が整えられています。
残念ながら天北線は廃線になってしまいましたが、旧敏音知駅は道の駅ピンネシリとして生まれ変わり、新しい歴史を刻み続けています。
旧渚滑線 『上渚滑』 駅
旧渚滑線にあった「上渚滑」駅は、旧名寄本線の渚滑駅から分岐した先にありました。
渚滑線は当時オホーツク海側から旧北見滝ノ上駅、現在の芝桜で有名な滝上(たきのうえ)公園近くまで伸びていて、計画では石北本線の上川駅へと接続する予定だったようです。
もしも計画通りに開通していたとすると、名寄本線や石北本線を含めると壮大なオホーツクルートになっていたのですが、結果的には1985年4月1日に全線廃線となりました。
そして、この駅の読み方は‥‥
「かみしょこつ」駅でした。
駅名の由来は、地名である渚滑、アイヌ語の「ソー・コッ」(滝・壺)に由来するようで、その渚滑の上の位置にあったことから上渚滑と呼ばれるようになったとされています。
現在の上渚滑駅跡は公園になっていて、鉄道駅のモニュメントが残されています。
小さな公園ですが桜が綺麗で、静かな雰囲気が印象的でした。
なお、上渚滑駅跡から少し離れた場所にある「渚滑」駅跡には、キューロクの愛称で親しまれた9600型蒸気機関車が展示されています。
旧湧網線 『芭露』 駅
旧湧網線にあった「芭露」駅。
当時の駅舎は現存しておらず、跡地には小さな石碑が残っているだけでした。
それでも1987年の廃線から20年ほどの間は地元の「旧芭露駅保存会」により駅舎やホームなどが保存されていたということですから、地域の方々からどれだけ愛されていたかが理解できますね。
さて、この駅の読み方は‥‥
「ばろう」駅でした。
駅名の由来はアイヌ語の「パロー」(入り口)に由来しているようです。
近くには芭露川も流れており、この辺りの地名がそのまま駅名として使われました。
旧羽幌線 『大椴』 駅
旧羽幌線にあった「大椴」駅。
かつてニシン漁が盛んだった頃は大椴駅周辺も賑わいがありました。
近隣にある「旧花田家番屋」を作るために、山間部で切り出した木材を海に向けて三半船で搬出する基地として使ったのが、この「大椴」地区でした。
ここから搬出された木材を使って番屋を作った、そう思うと歴史のロマンを感じてしまいますね。
今は鉄道駅がなくなってしまっているので沿岸バスさんのバス停を使わせて頂ながら読み方クイズに入りたいと思います。
( 萌えっ子さんスイマセン )
さてさて、この駅名(バス停名)の読み方は‥‥
「おおとど」駅でした。
大椴ですが、もともとの地名が「大椴子(おおとどこ)」だったところから、駅名に変換するとき省略され「大椴」となったようです。
名前の由来はアイヌ語の「ポロトトコ」という言葉から訳されているようで、ポロ(大きい)トゥトゥク(岬・出っ張り)の意味があるようです。
鉄道に詳しい知人に廃駅周辺のことを訊いてみましたが、
「大椴駅か?あそこは確か駅前にあった旧農協の農業倉庫くらいしか残ってなかったハズだな」
と答えが返ってきていたので、今はもう線路やホームのような構造物はなくなってしまっているようでした。
旧名寄本線 『上興部』 駅
旧名寄本線にあった「上興部」駅。
名寄本線は石北本線がまだ全線開通していなかった時代には、旭川名寄方面からオホーツク方面へ抜ける路線として大変重要な役割を果たしていました。
そして、その名寄本線の最大の難所である天北峠を名寄側から超えた最初の駅がこの上興部駅でした。
さてさて、この駅の読み方は‥‥
正解は「かみおこっぺ」駅でした。
興部は自治体名称にもなっていますので、読めた方もおられたのではないでしょうか。
ちなみに駅名の由来は地名である興部が関係しており、アイヌ語「オウコッペ」(川尻の合流しているところ)に由来していて、興部の上にあたる地域の上興部の地名がそのまま駅名になっています。
現在の上興部駅跡は「上興部鉄道記念館」としてさまざまな資料が保存されており、自由に見学する事ができます。
駅舎やホームも保存されていて、レール上には写真のような気動車や除雪車、ロータリー式除雪機などが連結された状態で展示されています。
道の駅「にしおこっぺ花夢」
現在、上興部駅跡近くには「道の駅にしおこっぺ花夢」があり、その役割を終えた上興部駅に代わって西興部村の玄関口として新たな役割を担っています。
名寄側から進むと、ちょうど天北峠を越えた場所に、オホーツク海側から進むと天北峠の手前に位置するので、長距離を運転するドライバーにとって疲れを癒すありがたい存在ですね。
いかがでしたでしょうか。
今回紹介させて頂いた廃線駅以外にも、駅舎やホームが残されている場所も多くあり、また道の駅へと姿を変えた旧鉄道駅も何箇所かあるようです。
個人的には町並みの綺麗な旧羽幌線「力昼(りきびる)駅」周辺を紹介したかったのですが、もはや元の線路がどのように敷かれて古丹別駅まで伸びていたのかわからないくらい原型がなく、断念せざるを得なかったのが心残りでした。
それはそれとして、各地域で愛された鉄道の跡地を訪問するのは楽しいものですので、是非皆さんもお時間がある時に、当時に想いを馳せながら訪れてみてはいかがでしょうか。
アイヌ語の地名や由来をみても、楽しく学べるように思います。
過去に書かせて頂いた難読駅の記事も紹介しておきます。
興味のある方はご覧下さい。
https://asatan.com/articles/3894

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大気物理学で学ぶ、あの山が「グレートスモーキー」と呼ばれる理由

2023-05-13 | 先住民族関連
Forbes5/12(金) 14:00配信

グレート・スモーキー山脈国立公園の青白いスモーク(Getty Images)
グレート・スモーキー山脈国立公園は自然の神秘だ。子どもたちのおかげで、しばしば私も経験する機会がある。
以前娘のバレーボールの大会がテネシー州セバービルで行われ、先週末には息子のバスケットボールの大会のために、家族揃ってテネシー州ガットリンバーグへ出かけた。そしてグレート・スモーキー山脈国立公園を通ってジョージア州の自宅へ戻る途中、その景色を見て、私は「感動して息を呑んだ」と文字どおりに言葉を発してしまった。16歳の息子の意見は違った。彼いわく「僕は感動してない、早く車に戻ってくれない?」。いつの日か、早く家に帰ってテレビゲームをしたいという欲望よりも、自然の美しさを味わう気持ちが上回ることを期待している。
話を戻そう。科学者、そして教授として、私はスモーキー・マウンテンにはいくつか大気物理学の教材があることに気づいた。
グレート・スモーキー山脈は、ノースカロライナとテネシーの州境に沿って伸びる山脈だ。山々はアパラチア山脈の一部をなしている。冒険好きで壮大な景色を切望しているジョージア州民にとっては、ガットリンバーグ、ピジョン・フォージ周辺を訪れた帰りの近道だ。公園の中を車で走った時の景色はただただすばらしく、そこが米国で訪れる人の最も多い国立公園である理由がよくわかる。山々ができたのは何百万年も前で、ロッキー山脈と比べるとかなり「古い」公園は1926年、カルビン・クーリッジ大統領が法案に署名して作られた。テネシー州立博物館のウェブサイトによると「スモーキーという名前は(先住民族の)チェロキー人がつけました。彼らはここを『Shaconage』(シャコナージェ)と呼び、『青い煙の場所』という意味でした」
なぜ山が青く見える?
山々を見ると通常そこは「スモーキー(煙がかった)」で「ブルーイッシュ(青みがかった色)」に見える。ここから大気物理学の授業が始まる。
まず、スモーキーといってもこれはスモーク(煙)ではない。霧がかかったように見えるのは、揮発性有機化合物(VOC)というもののためだ。国立公園トラストのウェブサイトには次のように書いてある。「冷たい空気が熱帯雨林の湿気と山脈の高度と組み合わさることで、低い雲ができる理想的な環境になり、その結果、植物は湿気を帯びて幸せになります。そして幸せな植物は、酸素を供給し、VOCを放出します」。以下、松の木や切ったばかりの草の匂いを嗅いだことのある人なら、VOCに馴染みがあるでしょうと続く。ちなみに、VOCという名前は不気味に感じるが、それ自体まったく無害だ。
では、なぜ青みががっているのか? 国立公園トラストのウェブサイトはこう書いている。「針葉樹から放出される別の種類のVOCには微かに青みがかった色があり、それがブルーリッジ山脈が青みがかった色に見える理由です」。
しかし、スモーキー山脈にはもう少し物語がある。それを説明するためにはレイリー散乱について述べる必要がある。太陽光の散乱の一種で、波長と粒子の大きさに依存する。前述のVOCは一定の反応を通じて増加しエアロゾル(大気中に存在する固体または液体)と相互作用を起こす。レイリー散乱は、光の波長と較べて散乱させる粒子が比較的小さいときに起こる。当初は、VOCの粒子が小さいために、短い波長の大部分がレイリー散乱され、太陽光のうち波長の短い青色部分が散乱されて人間の目に入る。ちなみに、空が青く見える仕組みも同じ散乱による。
しかし、マイク・ニューランドは、自身のわかりやすく書かれたブログでさらに詳しく説明している。彼は、オランダの生物学者、フリッツ・ワーモルトの先駆的研究について書いている。ワーモルトは1960年に「Blue Hazes in the Atmosphere(大気中の青い煙霧)」と題した論文をNatureで発表した。彼は、森林地帯の煙霧に特に興味を持ち、レイリー散乱に焦点を当てた。しかし、ニューランドはこういう。「彼はさらに研究を進め、森林の上にしばしばさまざまな色の煙霧の層が見られ、一番下に青、その上にグレイや茶色の層ができることを発見した。森の上に高く昇るほど粒子は大きくなる」大きい粒子では、ミー散乱が支配的プロセスとなり、波長に依存しなくなる傾向がある。白灰色の煙霧はそうやって生まれる。
Marshall Shepherd
https://news.yahoo.co.jp/articles/586e6491d2815268a699b67a6a8756a87f73b827

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書評「ナマケモノ教授のムダのてつがく」 (辻信一著) 「役に立つ」を超える生き方へ

2023-05-13 | 先住民族関連
信濃毎日新聞2023/05/13 07:03
有料会員記事
著者の辻信一氏は、文化人類学者として大学で教えながら、NGO「ナマケモノ倶楽部」の活動を通じ、効率一辺倒の社会のあり方に疑問を投げかけてきた。南米先住民族に伝わる民話「ハチドリのひとしずく」(光文社)の紹介者としても知られる。
 山火事が起こり、動物たちは逃げてゆく。ハチドリだけは火事を消そうと…
(残り780文字/全文930文字)
この記事は会員限定記事です
https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2023051200549

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【AsianScientist】古代東南アジアで海面上昇発生、南アジアへの移住促進―古地理学と人口ゲノム解析で判明

2023-05-13 | 先住民族関連
サイエンスポータルアジアパシフック2023年05月12日
約2万年から6千年前に海面上昇と人口増加が起こり、古代の東南アジアの住民は南アジアに移住せざるを得なかったことが調査により分かった。(2023年5月12日公開)

人間が気候変動を引き起こし、それがさらに海面上昇を引き起こし、すでに沿岸地域のコミュニティに影響を与えている。その影響は将来、特に資源が不足しているアジア諸国でさらに悪化すると予想されている。しかし、アジアのコミュニティは、過去にも同じような急激な海面上昇を経験している。
最終氷期最盛期(約 2万6千年から2万 年前)から完新世中期(約 6千年前)にかけて、地球の海面は 135メートル上昇し、熱帯雨林と沿岸マングローブの広大な陸地を持つスンダランド大陸棚の半分は海となった。その中にはマレー半島、スマトラ島、ボルネオ島、ジャワ島が含まれていた。
シンガポール、カナダ、米国の研究チームがNature誌 に発表した最近の研究は、土地面積の減少とその後の人口増加の結果、これらの地域の人々は南アジアと東南アジア本土への移住を余儀なくされたことを説明している。チームは、古地理学と人口ゲノム解析を組み合わせて、南アジアの初期移住者の移動パターンを調べた。
チームは過去のデータを使用して、2万6千年前から現在に至る海面変化の古地理マップを作成した。 チームは非営利団体 であるGenomeAsia 100Kの全ゲノム データセットの分析も行った。GenomeAsia 100Kは、アジアに住む人々の10万のゲノムを配列決定することによってアジア民族のゲノム多様性を浮き彫りにしようとする取り組みである。5万年前の東南アジアと南アジアの59の民族グループのゲノムを分析して、人類の歴史を解釈した。他の集団史研究では母親から受け継がれたミトコンドリアDNAを使用するが、全ゲノム配列データは母親と父親の両方のDNAを使用する。
シンガポールの南洋理工大学 (NTU) 生物科学部の教授であり、GenomeAsia 100Kの科学委員長である ステファン・シュスター (Stephan Schuster) 氏は 「GenomeAsia 100K は、この地域で長い間暮らしてきた先住民族も含め、アジアのヒトの遺伝多様性を体系的にマッピングします」と述べる。「これらのマップを古気候データと合わせてみたところ、過去の気候変動が古代の人類の移動に与えた影響と、移動が今日の人口構造に与えた影響を正確に理解できるようになりました」
アンダマン諸島、マレー半島、タイおよびフィリピンの先住民は、それぞれアンダマン人、マレーシア人、フィリピン・ネグリトと呼ばれている。現在のこれら先住民はスンダランドの初期住民たちの子孫である。
この研究から、最終氷期最盛期から完新世中期までの間に海面が急激に上昇した 2つの期間があり、そのためにスンダランドの陸地面積が 50%以上減少し、小さな島々に分裂したことが分かった。分裂によりパラワン、ボルネオ、スマトラ、マレー半島は陸続きではなくなり、これらの地域のコミュニティは分散し、別々の小さなグループとなった。分裂後、気温は上昇し、好ましい環境の中で東南アジアの人口密度は最終氷期最盛期の8倍以上に急増した。このことから天然の資源が間に合わないほど人口は大きく増加し、コミュニティは新しい場所に
移動し、定住せざるを得なくなった。
マレーシアと南アジアの先住民に共通する祖先の遺伝子から、マレーシアのネグリトの祖先は南アジアに向かって北上してきたことが明らかになった。また、東南アジア本土にも移住していた。しかし、マレーシアのネグリトから南アジアのオーストロアジア系グループへの遺伝子流動の割合は、東南アジア本土のアジア人への遺伝子流動よりも大きい。
主席調査者でNTUのアジア環境専攻学部とシンガポール環境生命科学工学センターの助教授であるヒエ・リム・キム (Hie Lim Kim) 氏はAsian Scientist Magazine誌に次のように語った。「私たちの調査から、2万年前の気候変動が東南アジア人の多様な民族を形成し、南アジアへの移住を促進させ、現代の南アジア人の遺伝的プロファイルを変化させたことがわかりました。個別化医療を開発するには、各民族の集団歴史と遺伝的祖先を理解することが重要です」
発表論文:Prehistoric human migration between Sundaland and South Asia was driven by sea-level rise
原文記事(外部サイト):
● AsianScientist
https://www.asianscientist.com/2023/03/in-the-lab/sea-level-rise-drove-prehistoric-human-migrations-in-southeast-asia/
https://spap.jst.go.jp/other_asia/news/230502/topic_nt_04.html

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[ポジションペーパー]炭素クレジットの新たな役割と求められるインテグリティ

2023-05-13 | 先住民族関連
自然エネルギー財団2023年5月12日
高瀬 香絵 自然エネルギー財団 シニアコーディネーター
 京都議定書にて登場した炭素クレジット1は、2021年からのパリ協定の時代となり、異なる役割が期待されている。それは、主に途上国における森林関連を含む削減・除去活動への資金提供であり、化石燃料の消費を続けることの「オフセット(相殺)」ではない2。
 本ペーパーでは、変わりゆく炭素クレジットに期待される役割について、1)SBTや国連ネットゼロ専門家グループ等の自主的目標の世界における位置付け、2) キャップ・アンド・トレード等規制制度における扱いの変化、3)各国のパリ協定における目標(NDC)外である国際航空部門における位置付け、4)すべての役割、つまり需要に対して期待される供給側への品質・インテグリティ(高潔性・環境統合性)について、大きく変わっている世界の動向を紹介する。特に、免罪符的オフセットに対する批判から、1)・3)においては途上国やCO2除去技術開発への資金提供を追加的に行うことに軸足が移ってきており、また、2)については欧州ではクレジット使用不可と変化しており、米国・アジア等の他国においても量的制限を強める傾向にあることを紹介する。3)の国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み(CORSIA)においても、代替燃料(SAF)をできるだけ早期に実現すべきとの動きが高まっている。いずれの需要サイドにおいても、需要側のインテクリティ(高潔性・環境統合性)を完結するには、4)の供給側のインテグリティ(高潔性・環境統合性)が重要であり、それを担う国際イニシアチブが今年中に認証をスタートする激動の時代であることについても解説する。
 最後に、日本のカーボン・プライス制度として開始しつつあるGXリーグにおいても、無制限のオフセットではなく、何のための活用なのか、つまり真に世界全体の脱炭素化を進めることに貢献するためであることを明確にしたインテグリティ(高潔性・統合性)から仕組みを設計し直すことを提言する。そのためには、1)GXリーグの早期の規制化、2)クレジットの品質について国際基準に合致したガバナンスやSDGs(持続可能な開発目標)への貢献を取り入れること、3)クレジットの活用について上限の設定を行うか、SBTiの定義する追加的資金提供の役割に限定する、といった対応がなされることを提言する。
炭素クレジットのオフセット利用への批判
 炭素クレジットについてある程度知識のある方であれば、化石燃料を使い続けながらネットゼロやカーボンニュートラル3を主張するための免罪符的な炭素クレジットの利用について、グリーンウォッシュ(見せかけだけの環境配慮であること)であるとの批判を耳にしたことがあろう。2022年11月の国連ネットゼロ専門家グループによる提言4を受けて、国連グテーレス事務総長が、現行の自主的なネットゼロ目標は定義が曖昧であり、グリーンウォッシュへの扉を開いているとした上で、「ネット・ゼロへの移行は、リアルな排出量削減に基づくものでなければならず、本質的に炭素クレジットやシャドーマーケットに依存するものであってはならない(Now, the transition to net zero must be grounded in real emissions cuts – and not relying essentially on carbon credits or shadow markets)」と述べ、国連ネットゼロ専門家グループ提言における炭素クレジットの位置付けを支持する考え方を示した。5
1)ボランタリークレジットの位置づけ
SBTiに始まる厳格なネットゼロ目標の基
 国連ネットゼロ専門家グループ提言においては、企業等のネットゼロ目標の達成は基本的にバリューチェーン内の真水の削減(クレジットなどによるオフセットではなく、実際の排出量を削減すること)にて行うべきであり、クレジットの利用については、以下の2つの目的に限定している。1つ目は、ネットゼロを主張する時点(例えば2050年)における除去6系クレジットを、どうしても削減できないバリューチェーン内の残余排出量7を中和8するために使うこと(図1③)、2つ目は、1.5℃経路で削減する途中にて排出してしまう分相当について、「バリューチェーンを超えた緩和 (BVCM, Beyond Value Chain Mitigation)」として自社の削減目標達成とは別に追加的な資金提供をする(図1④)、というものである。この考え方は、日本企業も400社以上が参加する科学に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi, Science Based Targets initiative)が2020年9月に提示9したものであり、その後、日本の3メガバンクも参加するグラスゴー金融同盟(GFANZ)の各イニシアチブが従う気候変動枠組条約事務局によるレース・トゥ・ゼロ要件バージョン3.0(2022年6月)10にても採用された。つまり、自主的目標設定におけるデファクト・スタンダードと言える。
 こういったSBTi、レース・トゥ・ゼロ、国連ネットゼロ専門家グループによる炭素クレジットの活用を大きく限定する考え方に対して、炭素クレジットが世界全体の脱炭素化のための資金を動かすには不可欠であるとして、「インテグリティ(高潔性・環境統合性)」の高い形で、炭素クレジットの活用を促すべきとの考え方から、2021年3月、英COP26議長 Alok Sharma氏によって自主的炭素市場インテグリティイニシアチブ(VCMI, Voluntary Carbon Market Integrity Initiative)の設立が発表され、2022年6月に暫定版(ネットゼロ)主張のための実施規範11が公表された。ここでは、SBTiを名指しで従うべき基準として指定した上で、ネットゼロ主張を「ゴールド」「シルバー」「ブロンズ」に分け、「ゴールド」はSBTi並み、「シルバー」はバリューチェーンを超えた緩和(BVCM)について全体必要量の20%以上であればいいとし、さらに「ブロンズ」ではシルバーにおけるバリューチェーンを超えた緩和(BVCM)の要件緩和に加えて、スコープ312の20%については2030年まで限定にて炭素クレジットの活用を可としている。SBTiの厳格なネットゼロ・中間目標の基準は踏襲しながらも、炭素クレジットの活用を活性化する仕組みとして、バリューチェーンを超えた緩和(BVCM)だけでなく、スコープ3の一定比率(暫定版では20%)について炭素クレジットの活用を可としているところが新しい。一方で、SBTiは2023年中にバリューチェーンを超えた緩和(BVCM)についてのガイダンスを発表する予定であり、気温上昇を1.5℃未満に抑えるにはできることを全てやらなくてはいけないという危機感のもと、資金を動かす役割としての炭素クレジットを、インテグリティ(高潔性・環境統合性)高い形で実現しようという流れが強まっている。自主的炭素市場インテグリティイニシアチブ(VCMI, Voluntary Carbon Market Integrity Initiative)においても、まずは企業の目標が1.5℃経路に沿ったSBT基準を踏襲する物であることが前提となっており、その上で、スコープ3限定でオフセット的利用が許されていることに留意する必要がある。
2)カーボンプライス規制における利用の厳格化
 気候変動対策における世界初のキャップ・アンド・トレード制度である欧州排出量取引制度(EU- ETS)においては、かつて、京都議定書に基づくCDM/JIからの国際クレジットを条件付きにて一定比率活用が可能であったが、2021年のパリ協定の時代からは利用不可となっている13。これに準じる形で、英国など、EU- ETS以外の欧州のキャップ・アンド・トレードでも炭素クレジットの活用は不可である(図2参照)。逆に、EUはカバー範囲を広げ、建築物、道路交通、追加部門(主にEU-ETSの対象外である小規模産業)からの直接排出を対象とした別の排出量取引制度としてEU-ETS2を2027年からスタートすることで合意している。加えて、リーケージ対策として国境炭素調整措置(CBAM, Carbon Border Adjustment Mechanism)を2026年から導入するなど14、より規制のカバー範囲を広げる方向に向かっている。
 欧州以外の排出量取引制度では、炭素クレジットの利用が認められているものもあるが、利用可能量はごく限定的である。米国にて最初に排出量キャップ・アンド・トレード規制を導入した北東部10州における地域温室効果ガスイニシアチブ(RGGI, Regional Greenhouse Gas Initiative)の枠組は、対象が電力部門のみのであり、排出量のカバー率は約14%である。RGGI参加州内の自主的炭素クレジット(メタン漏洩の防止によるものも含む)を3.3%まで活用可能である15。中国のキャップ・アンド・トレード制度も現時点では電力部門のみがカバー範囲であり、上限を5%として国内の自主的炭素クレジット(CCER, China Certified Emissions Reductions)の活用が可能である16。韓国については、カバー率は国全体の排出量の74%と大変高いが、国内CDMクレジットと国内自主的クレジット(KOC, Korean Offset Credits)について、2021年からのフェーズ3においては5%まで活用可能である。しかし、年を追うにつれ活用可能比率は減少傾向にある。
 このように米国、中国、韓国のキャップ・アンド・トレード制度では、制度本体がカバーしていない排出源からの削減・除去を促す目的で、域内/国内の炭素クレジットの活用が限定的に許容されている。
 シンガポールでは2019年から東南アジア初の炭素税が課されている17が、2024年よりこの対象となる排出量の5%を上限として、国際的炭素クレジットの活用が可能である18。この5%という上限については、カリフォルニア州や韓国のETSを参照したとのことである。国内・域内のカーボン・プライス規制のうち、国際的炭素クレジットのみの活用を想定した初めてのケースであり、この目的としては、今後BVCMや後述の「国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み(CORSIA, Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)」の目的のために活性化する炭素クレジット市場取引について、アジアにおいて創成されたクレジットを中心に、シンガポールの市場を通じて取引が行われることを目指していると想像する。シンガポール政府は2023年後半には適格クレジットの基準を公表する予定である。
 以上を総括すると、カーボン・プライス規制における自主的クレジットの活用については、欧州では全く許さない一方、米国や中国、韓国では規制があった上で、限られたパーセンテージのクレジット利用が許されている(上限が設定されていないのはカザフスタンのみである19)。
 日本のGXリーグについては、そもそも規制とは言えない自主的参加であり、またクレジット活用の上限もないなど、今後制度についてより精査・改善が必要である。そのためにも、1)何のために炭素クレジットの活用を促すのか、2)そこにおけるインテグリティ(高潔性・環境統合性)の説明、を明確化する必要がある。
3)国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み(CORSIA)における炭素クレジット需要と予想される真水志向へのシフト
 パリ協定の各国NDCの対象とならない国際航空については、国連の専門機関である国際民間航空機関(ICAO, International Civil Aviation Organization)がその目標設定等の責務を負う。ICAOは、2010年総会にて2020年以降総量にて国際航空による温室効果ガス排出量を増加させない推進目標を採択したが、真水では削減できない部分について、炭素クレジットの活用が位置付けられている。それが、「国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み(CORSIA, Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation)」である。
 国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み(CORSIA)については、炭素クレジット部分のみ取り上げられることも多いが、代替燃料(SAF, Sustainable Aviation Fuel)への取り組みにおいても、「適格燃料(Eligible Fuel)」を定義している20。代替燃料(SAF)購入を差し引いた分について、2020年水準からの総量での排出量増加分が炭素クレジット購入の必要量となる。国際民間航空機関(ICAO)が定義している4つの取り組み、つまり1)技術、2)運用改善、3)代替燃料(SAF)、4)炭素オフセットによって2020年水準からの総量での排出量を増加させないことについては、2021年から2026年の間、自主的に参加を表明した国同士の間の航路が対象となる。2027年以降は途上国等の除外国以外全てが義務的参加となり、1)〜3)の進展の度合いによっては、大量の炭素クレジットへの需要が予想される。なお、2023年1月時点において、自主的に国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み(CORSIA)へ参加しているのは、日本を含む113カ国である21(国際民間航空機関(ICAO)への参加国は2023年5月現在193カ国)。
 なお、国際民間航空機関(ICAO)では国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み(CORSIA)適格クレジットについて、適格要件22を設け、審査を行い、適格クレジットを公表23している。永続性、追加性、持続可能性等の観点からの除外もあり、例えばCDMプロジェクトの植林・再植林によるもの、中国CCERの二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS, Carbon Capture Utilization and Storage)によるもの、持続可能性への貢献を報告していないものなどは、除外されている。
 なお、日本政府はJ-クレジットについて、CORSIA適格となるための審査を受けたが、「再申請を要す」との判断であり、適格とは判断されなかった24。今後仮にJ-クレジットがCORSIA適格となると、CORSIA目的にて償却(利用)した場合、日本国の排出量をその分追加しなくてはいけなくなることにも留意が必要である。
 国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み(CORSIA)において、代替燃料(SAF)の開発がまだ進んでいない現段階においては、炭素クレジットの購入による達成がその主要な手段となっているが、筆者が航空各社から聞く限り、代替燃料の開発をより早く進め、いつまでも莫大な量の炭素クレジットの購入が必要な状態ではなくす必要があると、代替燃料(SAF)の開発競争、争奪戦が進んでいるようだ。
4)供給側のインテグリティ(高潔性・環境統合性)
 需要側については、SBTiや自主的炭素市場インテグリティイニシアチブ(ICVCM)において、使い方の「インテグリティ(高潔性・環境統合性)」が定義されている。いずれの基準においても、需要側だけでなく、供給側、つまりクレジットを創出する側のインテグリティが重要であり、その役割は自主的炭素市場インテグリティ協議会 (ICVCM, The Integrity Council for the Voluntary Carbon Market)が担うことで合意が取れている。
 自主的炭素市場インテグリティ協議会 (ICVCM)の前身として、マーク・カーニー元イングランド銀行総裁が立ち上げ、国際金融協会(IFF, Institute of International Finance)が後援した自主的炭素市場規模拡大のためのタスクフォース(TSVCM, Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Markets)があった。この自主的炭素市場規模拡大のためのタスクフォース(TSVCM)が2021年1月にレポート25を作成し、同年5月から6月のパブリック・コンサルテーションを経て、2021年9月に発足が発表されたのが、前出の自主的炭素市場インテグリティ協議会(ICVCM)である。自主的炭素市場規模拡大のためのタスクフォース(TSVCM)のレポートには、炭素市場規模拡大が必要な理由として、炭素予算の観点から2030年までに世界全体の温室効果ガス排出量を年23ギガCO2換算トンに抑える必要があり、それを実現するには現在の15倍以上の資金提供(つまり炭素クレジット創出)が行われる必要があることを挙げている。加えて、明確に「炭素クレジットを自主的に購入することで、他の排出源からの排出の回避・削減、または大気中の温室効果ガスの除去に資金を提供し、まだ除去されていない排出を補償(compensate)26または中和(neutralize)27することができ、グローバルネットゼロへの移行に有意義に貢献することができる。」と記載されている。補償(compensate)という用語は、BVCMという用語が登場する前に、同じ内容、つまり1.5℃経路にて削減できない分相当の資金提供を行うという意味にて使用されており、自主的炭素市場規模拡大のためのタスクフォース(TSVCM)が想定する炭素クレジットの自主的目標における主な役割は、BVCMを想定していることがわかる。また、自主的炭素市場規模拡大のためのタスクフォース(TSVCM)における議論にて重視されたのは、新しい組織(つまり自主的炭素市場インテグリティ協議会 (ICVCM))のガバナンス体制であり、そこではジェンダー、グローバルサウス比率、などに配慮した構成とすべきこと、などが提言されている。統治理事会(Governing board)は22名で構成されているが、中国を代表する理事はいるが、日本を代表する理事は選出されていない。特徴的なのは、3名の理事は先住民族や地域コミュニティから選出されるとしており、現在ブラジル、フィリピン、ケニアの先住民族の理事が就任している。
 自主的炭素市場インテグリティ協議会 (ICVCM)の役割としては、まずはコア炭素原則(CCPs, Core Carbon Principles)を構築し、それを基盤として、プログラムレベルとカテゴリレベルの評価枠組みやプロセスを作成し、炭素クレジットにCCP認証がつけられるようにすることである。2023年3月に、コア炭素原則(CCPs)とプログラムレベル評価枠組み、そして評価プロセスが公開された28。プログラムレベルでの評価については、国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み(CORSIA)適格クレジットの場合は、CORSIA要件に対してコア炭素原則(CCP)適格となるために追加的に必要な部分(効果的なガバナンス、クレジットのトラッキング、透明性、堅牢で独立した第三者による認証・検証)の要件を満たす証拠を提出することで、審査を受けることができる。既に発表されているプログラムレベルの評価枠組みに加えて、カテゴリレベルの評価枠組みが公表予定であり、それを受けて2023年中旬までには審査が可能となり、2023年終盤には初のコア炭素原則(CCP)認定クレジットが誕生する見込みとなっている29。
 参考資料として、本ペーパー末尾に、コア炭素原則(CCPs)を日本語に翻訳したものを付けている。この原則は全く新しいものではなく、クレジット創出を行っている人にとっては、当たり前の内容であるとのことだ。今後カテゴリレベルの評価枠組みにおいて、一体、「追加性」「ベースラインのあり方」「永続性」といった課題に対する具体的な閾値が出されるかに注目したい。
 なお、現段階においては、パリ協定6条に基づく相当量調整の可否への見解を示しておらず、ホスト国から移転を認められた場合、その情報について透明性高く開示する必要があることが示されている。
 
結び:インテグリティ(高潔性・環境統合性)の高い制度設計を
 自主的目標達成の分野では、途上国や開発が必要なCO2除去技術に対し、追加的にバリューチェーンを超えた緩和として、炭素クレジットを通じた資金提供を行うことが、インテグリティの高い需要側の行動として、グローバル・スタンダードとなっている。その際には、炭素削減/除去量だけでなく、生物多様性への配慮やSDGsへの貢献など、コベネフィットも重要な評価ポイントである。
 もう一つの需要である、排出量キャップ・アンド・トレード等カーボン・プライシング規制の達成への活用については、1)カバー範囲が現状小さいことから、対象外からの一定比率までの自主的炭素クレジットによるオフセットを認めている米国RGGIや中国・韓国、2)クレジットによるオフセットは認めず、逆にカバー範囲を広げることでインテグリティを高める欧州や欧州各国、3)資金提供が必要な箇所に資金を提供するために一定比率のクレジットによるオフセットを認めるシンガポール、といった3つの方向性がある。1)、3)について、オフセットの上限は3%から10%程度であり、無制限なのはカザフスタンのみである。インテグリティ(高潔性・環境統合性)の観点からは、何のためのオフセット許容なのかをまず明確にし、その目的を棄損しないように設計を行う必要がある。
 2021年から炭素クレジット需要を創出しているのが、国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み(CORSIA)である。国際航空からの排出量を2020年水準に保つという推進目標のために、技術開発、運用改善に加え、代替燃料(SAF)の購入と炭素クレジットの購入の手段を取る必要があり、2021年から2026年の自主的参加期間において日本を含む119カ国が参加しており、大量の炭素クレジット需要を創出している。一方で、今後クレジットの高い品質が求められ、価格が高くなることも予想され、航空各社は代替燃料(SAF)の実用化の競争に入っている。なお、国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み(CORSIA)の功績としては、2019年から品質についての要件を運用し、これまで適格クレジットの審査を行ってきた実績を持つことから、2021年に発足した炭素クレジットの品質についてのコア炭素原則(CCPs)の基盤となっており、今後も高品質の炭素クレジットの需要の基盤となることが予想される。
 供給側とも言える、炭素クレジットの品質要件は、国際航空のための炭素オフセットと削減のための枠組み(CORSIA)が基盤を作り、その後自主的炭素市場インテグリティイニシアチブ(ICVCM)が担うことになった。自主的炭素市場インテグリティイニシアチブ(ICVCM)は、2023年3月にコア炭素原則(CCPs)を発表し、2023年中にはコア炭素原則(CCP)認証を受けたクレジットが誕生する見込みである。なお、自主的炭素市場インテグリティイニシアチブ(ICVCM)は供給側のインテグリティを担当するものの、その前身である自主的炭素市場規模拡大のためのタスクフォース(TSVCM)のレポートでは、オフセットではなく、1.5℃を達成するために必要な資金需要に対応するために、「どうしても削減できない分の補償や中和」のためのものであることが明記されており、それこそが自主的削減目標の目的において、インテグリティの高い炭素クレジットの活用方法であることがわかる。
 日本のGXリーグは、自主的な参加の枠組みであるだけでなく、目標達成に向けてクレジットを無制限にオフセットのために利用可能となっており、世界のカーボンプライシング規制の標準から外れている。クレジットを活用する目的は何なのか、国内のカバー範囲外の排出削減や除去を促進することが目的なのか、それとも途上国や開発が必要なCO2除去技術に対する資金提供が目的なのか、そこから全体を設計するインテグリティが求められる。化石燃料を使い続けながらカーボンニュートラルを主張することが目的であるならば、それはインテグリティが高いとは認められないだろう。日本は高潔な国である。気候変動の分野においても、他国からの尊敬を集められるインテグリティ(高潔性・環境統合性)を期待したい。
参考資料:コア炭素原則(CCPs)
A.    ガバナンス
効果的ガバナンス:炭素クレジットプログラムは、透明性、説明責任、継続的な改善、および炭素クレジットの全体的な品質を確保するために、効果的なプログラムガバナンスを有しなくてはならない。
トラッキング:炭素クレジットプログラムは、緩和活動および発行された炭素クレジットを一意に識別、記録、追跡(トラッキング)するためのレジストリを運営または利用し、クレジットを安全かつ明確に識別できるようにしなければならない。
透明性:炭素クレジット制度は、クレジットされたすべての緩和活動に関する包括的かつ透明性の高い情報を提供しなければならない。この情報は、電子形式で一般に公開され、専門家以外でもアクセスできるようにし、緩和活動の精査を可能にしなければならない。
堅牢な独立した第三者による妥当性確認(validation)と検証(verification):炭素認証プログラムは、緩和活動についての堅牢で独立した第三者による妥当性確認と検証のためのプログラムレベルの要件を有しなければならない。
B.    排出量インパクト
追加性:緩和活動による温室効果ガス(GHG)排出削減または除去は、追加的なもの、すなわち、炭素クレジット収入によって生じるインセンティブがなければ発生しなかったものでなければならない。
永続性:緩和活動による GHG 排出量の削減または除去は、永続的なものであるか、または逆転のリスクがある場合は、そのリスクに対処し逆転を補償するための対策が講じられているものでなければならない。
排出削減・除去の堅牢な定量化:緩和活動による GHG 排出削減量または除去量は、保守的アプローチ、完全性、科学的手法に基づき、堅牢に定量化されなければならない。
二重カウントなし:緩和活動による GHG 排出削減量または除去量を二重にカウントしてはならない、すなわち、緩和目標またはゴール達成に向けて一度だけカウントするものとする。二重カウントには、二重発行、二重請求、二重使用などが含まれる。
C.    持続可能な開発
持続可能な開発への便益とセーフガード:炭素クレジットプログラムは、緩和活動が、持続可能な開発にプラスの影響を与えつつ、社会・環境セーフガードに関する広く確立された業界のベストプラクティスに適合するか、それを超えることを保証するための明確な指針、ツール、遵守手順を持たなければならない。
ネットゼロへの移行への貢献:緩和活動は、今世紀中盤までにGHG排出量をネットゼロとする目標と相容れない、GHG排出量水準や技術、または炭素集約的慣行にロックイン(固定化)してしまうことを避けなければ成らない。
1炭素については、二酸化炭素排出を意味する。また、二酸化炭素以外にもメタン等他の温室効果ガスの削減について発行されるクレジットについても、炭素換算にて扱われることが多いことから、炭素クレジットと総称する。
2こういった「何のためのクレジットなのか」という目的について、本来の危険な気候変動による影響をできるだけ抑えることであることからスタートし、「ズル」をすることなく、つまりグリーンウォッシュとみなされる行動は、たとえできる隙があったとしてもしない。こういったあり方がインテグリティ(高潔性・環境統合性)である。人としてのあり方のインテグリティは、依拠すべきは道徳であったり、宗教であったりするだろうが、気候変動への対策において依拠すべきは科学である。加えて、インテグリティ高い施策が常に評価され、汚職などが起こらない、ないしは露見し改善されるガバナンス(統治構造)を構築することが求められている。
3ネットゼロとカーボンニュートラルは、世界全体で見ると同義である(IPCC用語集より)。SBTiやレース・トゥ・ゼロ、国連ネットゼロ専門家グループ等はネットゼロという用語を使っており、オフセットを基本的に不可とする、といった明確な定義を行っている。一方、カーボンニュートラルについては、オフセットに基づく製品等に対しても使われる場合が多い。
4United Nations, "Credibility and Accountability of Net-Zero Emissions Commitments of Non-State Entities" 参照。日本語訳については日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)によるものを参照されたい。
5United Nations, “Secretary-General's remarks at the World Economic Forum”(18 January 2023)
6大気中に既に存在する温室効果ガスを除去すること。技術がなかりせば排出された量(ベースライン)に対して、該当技術またはプロジェクトが存在したことで減った量に対して、削減クレジットは創出される。それに対して、除去系クレジットは、大気から物理的に除去した行為に対して創出される。
7合理的コスト水準にある技術によって削減が不可能な排出量を、残余排出量と定義している。一般セクターについては、基準年排出量の10%であるが、IEA等の計算に基づき、セクターによって%は異なる。詳細はSBTiによるネットゼロ基準等関連文献を参照されたい。
8一定期間内の残余排出量分を除去によって温室効果を打ち消すことを中和(neutralization)と呼ぶ。
9SBTi, “Foundations for Net-Zero Target Setting in the Corporate Sector” (September, 2020). 日本語版はこちら。
10Race to Zero, “Race to Zero Criteria.” 日本語版はこちら。
11VCMI, “Provisional Claims Code of Practice, For Public Consultation and Corporate Road Testing,” June 7, 2022.
12スコープ1は組織からの直接排出、スコープ2は組織が使用したエネルギー(電力等)の生成による排出、スコープ3はそれ以外全てのバリューチェーン内の排出量であり、GHGプロトコルスコープ3基準にて15カテゴリが定義されている。
13European Commission, “Use of international credits”
14ICAP, “EU adopts landmark ETS reforms and new policies to meet 2030 target” (2023.5.3)
15ICAP, “USA - Regional Greenhouse Gas Initiative (RGGI)”
16ICAP, “China National ETS”
17シンガポールの炭素税は、2019-2023年期は5米ドル/トンCO2換算と低水準であるが、2024年から25米ドル、2026年から45米ドル、2030年からは50米ドルないしは80米ドルとなることが予定されている。
18National Climate Change Secretariat, Singapore “Carbon Tax”
19ICAP, “Emissions Trading Worldwide, 2023 Status Report” (2023)
20ICAO, “CORSIA Eligible Fuels”
21ICAO, “CORSIA States for Chapter 3 State Pairs”
22ICAO, “CORSIA Emissions Unit Eligibility Criteria”
23ICAO, “CORSIA Eligible Emissions Unit”
24第30回J-クレジット制度運営委員会資料(2023年4月28日)参照。改善を要するとされたのは、制度のガバナンス、セーフガードの仕組み、持続可能な開発に関わる基準、正味での無害性であった。
25TSVCM, “Taskforce on Scaling Voluntary Carbon Markets, Final Report” (2021.1)
26補償という言葉は、その後バリューチェーンを超えた緩和(BVCM)に置き換えられた。1.5℃経路にて削減を進めるものの、その過程にてどうしても排出してしまう量相当分を補償するためにクレジットを購入することを意味する。
27物理的に除去することを意味する。大気中の CO2の直接回収(DAC, Direct Air Capture)や、森林の吸収量を増加させることなどが該当する。なお、森林による吸収増については、それが100年200年の単位で永続的に吸収増加を保てるのかについて、考慮が必要であることが示されている。
28ICVCM, “Core carbon principles, assessment framework and assessment procedure” (2023.3)
29ICVCM, “Integrity Council launches global benchmark for high-integrity carbon credits”
https://www.renewable-ei.org/activities/column/REupdate/20230512_positionpaper.php

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ヴィヴィアン佐藤が観た「エンジェルス・イン・アメリカ」、日本人は“自分ごと”と捉えることが出来るのか?新国立劇場「エンジェルス・イン・アメリカ」

2023-05-13 | 先住民族関連
ステージナタリー2023年5月12日
上村聡史が演出を手がける「エンジェルス・イン・アメリカ」が、4月18日より新国立劇場 小劇場にて上演中だ。本作は1980年代の共和党政権とエイズ問題に翻弄されるアメリカ・ニューヨークを舞台にしたトニー・クシュナーの代表作で、第一部「ミレニアム迫る」と第二部「ペレストロイカ」を合わせて上演時間約7時間30分という超大作だ。
本作の東京公演をいち早く目撃したヴィヴィアン佐藤は、作品からどのようなことを感じ取ったのか。美術家、非建築家、映画批評家、プロモーター、ドラァグクイーンと多彩な肩書きを持ち、ジャンルを超えた多様な活動を繰り広げるヴィヴィアン佐藤自身の言葉で、作品を語ってもらった。
文 / ヴィヴィアン佐藤
天使の出現
「天使の出現」という言葉を聞くと、思想家・W.ベンヤミンのクレーの絵画から着想を得た「歴史の概念について」の一節が真っ先に思い浮かぶ。
またはW.ベンダース監督の「ベルリン・天使の詩」。ブルーノ・ガンツ演じるダミエルだろうか。
現代美術ではドイツ現代美術家・A.キーファーの作品には、書物に大きな羽が生えた鉛製の彫刻作品「Uraeus」があった。それはまるで知の天使。(第二部「ペレストロイカ」に出現する天使がプライヤーに差し出す本!)その元にルネサンスの画家A.デューラーの銅版画「メランコリアⅠ」がある。砂時計や天秤、幾何学体、床には寝ている犬、飛んでいる蝙蝠などが描かれ天使が頬杖をつきながら憂鬱に宙を眺めている作品だ。とても寓意性に富んでいて、美術史上最も謎めいた作品のひとつと言われている。
天使を扱った絵画や映画は数多存在するが、近代がテーマであったり、メランコリックで憂鬱、暗澹たる世界観を連想させるものは上記の作品群だ。どれも物静かで内省的かつ何かの欠損や痕跡があり、鬱状態の人類を、人智を超えた者が傍から覗き見るような印象を持つ。
昨今のスイーツ菓子の外装に描かれていたりする可愛らしいキューピットのイラストなどのイメージとは程遠い。
ベンヤミンの歴史の天使は、瓦礫の上に瓦礫を重ねる「破局」だけをそこに見る。楽園の方から強風が吹き荒れ、未来を眺めている天使は翼を閉じることさえ出来ずにただに流されていく。その強風こそが我々が「進歩」と呼んでいるものだ、という。
人類は「進歩」せざるを得ないという強迫観念と共に何世紀も生きてきた。
この「ミレニアム迫る」と「ペレストロイカ」の2部構成の「エンジェルス・イン・アメリカ」も、また「変化」せざるを得ない世界の大きな流れと各個人の小さな私生活の次元を同時代に起きている現象として見事に描いている。
止めようもない人類の科学技術の「進歩」や、古の社会や習慣と訣別し「変化」を余儀なくされる人々。どちらも大きな潮流に飲まれ抗うことができない世界を描いている。そこには自然災害や地球環境という類のものではなく、完全に人智によって人間が引き起こしてきた社会活動にも関わらず、それが圧倒的な力を持つ何者かに変化してしまい、もはや人間の力ではどうすることもできない制御不能になってしまった世界の状態とそれでも人間が生きていかざるを得ない姿勢が映し出される。人間がより良い世界を望んで作り出したはずの科学技術や社会、政治、経済にも関わらず、それらが一人でに暴走をはじめ、人間はその怪物に翻弄されるのだ。
限りなく人間の形をしてはいるものの、ほとんどの人間には見えない、しかし幻視者には見える介在者・天使が現れ、そこに何かしらの救済をもたらしたり、予言を与えてくれる、そんな出現の必要性を人類は切望してしまう。
「天使の出現」とは、そのような人智が引き起こした大きな潮流が世界に生まれ、最終的に人間が舵を切ることが出来なくなった状態に現れる必要な救済の状態・SOSの信号そのものなのかもしれない。
個体を超え、我々の身体に宿る先祖の記憶
第一部「ミレニアム迫る」の冒頭では、ユダヤ教のラビ(聖職者)がブロンクスのヘブライ老人ホームで1人で亡くなったばかりのサラ・アイアンソンについて語り出す。
生前彼女のことは直接知らなかったラビは、彼女の今終わったばかりの人生は彼女の個人的な人生ではなく、彼女はある種全体の人々を体現していた、と。彼女は祖国リトアニアから移り住んできた、いわば今では存在しない大航海という経験を経て渡ってきた古の人間で、アメリカ大陸は先住民であるモヒカン族も然り、その古の先祖たちはもはや消えつつある。
しかし先祖の生き様や経験は、我々の中に今も存在している。そしてそれが同時代的な共通のいわば無意識的な共通経験として、集合的経験として残っている、と。
人の人間が亡くなったとき、いわば人の「生」は終焉を迎え、「死」でもって初めて完成するものだとすれば、ヘブライ老人ホームで亡くなったサラもまた亡くなったこと、死者になって初めて彼女の「生」は完成するともいえる。
ある原因があり、ある結果があるという通常の因果論ではなく、先述のベンヤミンによれば廃品の思想という、見えざる糸でたぐり寄せるような、透かし彫りに光を当てて根源を浮かび上がらせるような遡行していく因果論がある。
人間の死という動かし難い状態(死体)が現前しており、そこから遡行していき、その人間個人の歴史や今まで生きてきた道筋に光を当てる作業だ。
死者の顔はヒポクラテスの顔(臨終の顔相)と言われ、人が死者になった瞬間に全ての過去の出来事が顔相に凝縮されそこに再現される。
その場所にその人間の固有の人生の物語が立ち上がる。いわば死者と馴染むことにより、ゆっくりとした時間の中で死者(廃物)として眺め、寄り添う。過去に生きた多くの人々の人生の経験に耳を傾け反駁すること。そこは無数の物語の温床となり、その死者たちの物語は現在の生きる我々を救済しにやってくる。
いまだ死せずして生きる我々の身体の中でも、死者となった先祖の生き様や経験がそこから遡るようにして語り出すだろう。我々の身体を現前する物質的な唯一で最後の末端の確証だと捉えれば、そこから先祖の語り得なかった無数の物語に耳を傾けることも可能であろうし、そのことで我々は生きる理由や存在の不確かさを払拭できるかもしれない。
1980年代の西洋諸国に与えたエイズショックは、その因果論においてもあまりにも示唆的だ。エイズに罹患したという当時ではあまりにも絶望的な結果は、その原因をあまりにも短絡的に遡行しやすい。
その正反対に位置する人類の妊娠という状態。ある結果は、その原因を遡行することも実に容易だ。「宿命」という言葉があるが、それは奇しくも「命を宿す」と表記される。ちなみにキリスト教世界の聖母マリアは処女で懐妊という物語は、通常の因果論がまったく成立しないものである。
そして二篇からなるこの物語は1980年代が舞台で、90年代初頭に初演を迎えた。いわば当時は同時代を描いた物語として存在していた。しかし、初演から30年以上も経った現在、この作品を上演する意味はまったく異なる。
登場する等身大の人々や国家は、混迷の羅針盤を失いつつある時代に必死に「変化」の必要性を感じとり生きている。その結果がどうなったのか、社会はどう変わり、政治はどう結果を出し変わったのか、何が変わらなかったのか、今の我々にとっては周知の事柄なのだ。
1980年代を生きる人々の世界の断面を傍らから眺めている我々自身が、もはや彼らからは不可視の天使ともいえる。しかし我々はあまりにも無力だ。
それならば、彼らの生き様や経験、教訓は、現在の我々の身体に果たして折り畳まれているのだろうか。
不連続なのだろうか。
この物語を我々日本人として、自分ごととして捉えることは出来るのだろうか。
歴史の終わり
思えばこの舞台が作られ上演された1990年代初頭に、フランシス・フクヤマの「歴史の終わり?」というエッセイがセンセーションを巻き起こした。
今では懐かしい文章である。
第二次世界大戦で全体主義が敗北し、この時代に旧ソ連や東欧の共産主義が次々と雪崩を打ったように崩壊。アメリカ型自由主義が、一人勝ちという様相を呈した。歴史とは異なったイデオロギーを信じる者たちが繰り広げる闘争のことであり、その闘争がなくなった瞬間に歴史が終わるというのである。
この時代は、歴史の終わりを多方面で議論されていた時代でもある。
現在、自由主義が勝ち残り、その勢力を伸ばし続けている。
80年代日本はどうであったかというと、第二次世界大戦以降新憲法により戦争を放棄し、安全保障は全面的にアメリカに依存し、世界史への参加を放棄してきた。世界における東西イデオロギーの対立が激化していた時代、そこへの参加表明を曖昧にしてきた。その間国内の経済成長にひたすら専念してきたのが日本だった。ポストモダンという空虚な消費型の記号文化と相性が良かったのも偶然ではないだろう。
この「エンジェルス・イン・アメリカ」の時代は、世界は「歴史が終わる」と囁かれ、我々日本人が歴史に興味を示さず、大量消費状態の時期に作られた物語である。
この物語をまたしても他人の物語として消費することなく、私たち日本人としての鑑賞が果たして可能なのだろうか。
問われるのは私たち自身である。
プロフィール
ヴィヴィアン佐藤(ヴィヴィアンサトウ)
美術家、非建築家、映画批評家、プロモーター、ドラァグクイーン。金沢工業大学建築学科大学院卒業後、磯崎新のアトリエを経て、アーティストとしての活動を開始。映画、音楽、美術、建築、パフォーミングアーツなど多彩なジャンルに関わる一方で、個展やヘッドドレスのワークショップなども開催。大正大学客員教授。
ヴィヴィアン佐藤 (@viviennesato) | Twitter
ヴィヴィアン 佐藤 (@viviennesato) | Instagram
ヴィヴィアン佐藤の記事まとめ
https://natalie.mu/stage/pp/angels-in-america2023_02

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