SDGsアクション2023.02.09 (最終更新:2023.02.09)

フェアトレードのプロジェクトに参加するなのさん(右)とゆりなさん=東京都世田谷区
フリー・ザ・チルドレン・ジャパン子どもアンバサダー/なの、ゆりな
2月14日のバレンタインデーに向けて、認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパンの「子どもアンバサダー」たちが、フェアトレードのチョコレートの販売に取り組んでいる。利益はフィリピンの子どもたちを支援するNGOに寄付する。どんな思いで活動しているのか、高校1年生のなのさんとゆりなさんに聞いた。(副編集長・竹山栄太郎)
「どこにいても平等な世界」へ願い込め
フェアトレードチョコのプロジェクトに取り組んでいるそうですね。
なの:
企画からデザイン、広報、販売まですべて自分たちでやっているんです。ドミニカ共和国、ペルー、パラグアイのフェアトレードカカオを使ったチョコレートを輸入して、オンラインと学校で販売します。利益はフィリピンで子どもたちの自立支援をするNGOのプレダ基金(注)に寄付し、刑務所に入れられた子どもや性的産業に従事する子どもを救うために使われます。私たち2人がこのプロジェクトに関わるのは今年が2年目で、昨年(2022年)はケニアのお母さんの収入向上を支援しました。
(注)プレダ基金 フィリピン・オロンガポ市にある現地NGO。性的虐待を受けた少女や、刑務所から救出された少年への自立支援、貧困地域(先住民族)の自立支援活動をおこなっており、1999年からフリー・ザ・チルドレン・ジャパンとパートナーを組んでいる。
ゆりな:
今年の商品名「Masaya(マサヤ)」はタガログ語で「幸せ」という意味です。パッケージは私がCanvaというデザインツールでつくりました。生まれた場所に関係なく、どこに住んでいても公正で平等であるようにという思いを込めて、シーソーを描いたんです。
どうやって準備を進めたのですか。
なの:
今年のメンバーは小学生から高校生までの8人です。まず寄付先を決めるところから始め、フリー・ザ・チルドレンのネットワークでつながっている団体や国のなかからプレダ基金に決めました。次に考えたのは商品の値段設定です。去年は1袋450円にしましたが、今回は円安で原価が高くなり、同じ値段で販売すると寄付できる額が減ることがわかりました。そのため、寄付金額を追うのではなく、むしろ値段を下げてフェアトレードの知名度向上に徹しようと、430円にしました。
ゆりな:
それから、「あなたの寄付でその子を自由に」というコンセプトを決め、パッケージに書く説明文もつくりました。
フィリピンを寄付先に選んだ理由は何ですか。
ゆりな:
ケニアやウクライナも候補になりましたが、私個人の思いとしては子どもが子どもに貢献できるという点が、子どもがアクションを起こすフリー・ザ・チルドレン・ジャパンの活動にマッチしていると思いました。フィリピンでは、小さな子どもが危険な工場や性的産業で働かなければいけないという現状があるそうです。現地にいる私の友達からも、働いているのにお金をもらえなかったり性的虐待を受けたりしても、仕事をやめられない子どもたちがいると聞きました。
世界の子どもたちのパワーに
そもそも、フェアトレードに関心を持ったきっかけを教えてください。
ゆりな:
中学校の授業で、ガーナのカカオ農場での児童労働のビデオを見ました。フェアトレードが児童労働問題を解決する大切な方法であり、買うことは誰にでも簡単にできることだと習い、フェアトレードで貢献できるのはすごくいいなと思いました。
なの:
何となくやってみたいと思い、気づいたら参加していました。活動を通じて、児童労働などいろいろな問題を考えるようになりました。
なぜ、子どもが取り組まなくてはならないのでしょう。
なの:
これからの世の中を築いていくのは今の子どもたちだから、大人に任せっきりにしてはいけないと思います。日本は海外に比べて、子どもたちが「世界を変えられる」と考える割合がすごく低いそうです。私たちの活動が日本の子どもたちに影響を与え、世界の子どもたちのパワーにもなるんじゃないかと思っています。
ゆりな:
児童労働のことを知ったとき、もし私がどこか違う国で生まれていたらどうなっただろうと、すごく考えました。「なんで幸せな生活を送れていない子がいるんだろう、自分もそんな子たちのために何かやりたい」。そんな思いで活動しています。
子どもの意見、聞いてほしい
フェアトレード以外でそれぞれ関心を持っているテーマを教えてください。
なの:
子どもの権利についての提言や講演をしています。先日もゆりなと一緒にこども家庭庁を担当する小倉将信大臣(こども政策担当相)と面会し、3月にあるChange Makers Fes2023(チェンジメーカー・フェス2023)や、私たちがいま思っていることについて話しました。
私はコロナ禍の学校や国の対応について、「もっと子どもの意見を聞いてほしかった」といろいろなところでお話ししています。授業はオンラインでできても、部活動はなくなり、きつかったです。そんな話をすると、「子どもたちの安全を考えて部活動を停止したけど、必ずしもいい選択ではなかったのかもしれない」と言ってくれる大人もいました。子どものことを考えてもらうきっかけになったらうれしいなと思います。
ゆりな:
私が小倉大臣に伝えたのは、子どもの権利について知っている子どもがすごく少ないということです。中学3年生の授業で少しだけ、「子どもの権利条約」という言葉は習いますが、内容までは習いません。私が小学校でとったアンケートでも、4割ぐらいの子しか子どもの権利を知らないのが現状です。子どもの権利の存在をすべての子どもが知ることで、いじめや虐待にあったときに声を上げやすくなると思います。そのために、子どもの権利を学習指導要領に載せてほしいということをお話ししました。
小さな活動から変化を
フェアトレードのプロジェクトを通じて、世の中にどんなことを伝えたいですか。
ゆりな:
日本には、以前の私自身のように、「子どもは何もできない」と思っている人がすごく多いと思います。でも私が活動を通じて感じたのは、小さな活動でもやれば変化はあるし、応援してくれる人もいるということです。フリー・ザ・チルドレン・ジャパンのモットーでもある「子どもには世界を変えるチカラがある」ということを伝えていきたいです。
なの:
まったくその通りです。私が活動を始めたきっかけは、同い年の子どもアンバサダーの話をラジオで聞いて「何か自分にもできることがあるんじゃないかな」と使命感にかられたことでした。一歩踏み出すことで、いろんなことができます。フェアトレードに限らず、みんなに一歩踏み出してほしいなと心から思います。
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竹山栄太郎 ( たけやま ・えいたろう )
朝日新聞SDGs ACTION!副編集長。2009年に朝日新聞社入社。京都、高知の両総局を経て、東京・名古屋の経済部で通信、自動車、小売りなどの企業を取材。2021年にSDGs ACTION!編集部に加わり、2022年11月から副編集長。
https://www.asahi.com/sdgs/article/14829545