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鉱物の部屋へのいざない

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格言

2017-05-12 12:27:42 | 日記・エッセイ・コラム
私は現在、お客さんの居ない店番中に、「ジオコスモスの変容 デカルトからライプニッツまでの地球論」(勁草書房 著者:山田俊弘 編集:ヒロ・ヒライ)を読んでいます。その本は近代科学が始まり、科学革命が進行した17世紀の地球観の変容に関する内容なのですが、鉱物の結晶面における面角一定の法則で有名なニコラウス・ステノを案内人にデカルトやスピノザやライプニッツといった哲学史上のビッグネームの人達の地球論を辿る内容になっており、大学で哲学を学び、現在、鉱物の店を営んでいる者にとっては大変興味深い思いをしながら読んでいます。

まだ、読み始めたばかりです。ジオコスモスとはマクロコスモス(大宇宙)とミクロコスモス(人体)との中間的な「地球世界」を意味しているのですが、17世紀という古い時代の世界観にもかかわらず、そこには知的好奇心を満足させる内容が満載です。

その本では、まず、冒頭にステノの生涯が紹介されております。そして、その最後に今日のブログのタイトルにした格言が引用されておりました。

「見えるものは美しい、知られるものはより美しい、未知のものはさらにもっとも美しい」

何と意味深い言葉でしょうか!!それはステノが到達した境地を表現するとされていますが、ステノ本人の意味したものを超えて、様々な分野で様々な解釈が可能な名言だと思いました。

何と!私は還暦を過ぎてから、すばらしい格言に出会ってしまったようです。

思うに、私の若い頃の読書経験では、人生経験が浅かったという事もあって、フランソワ・ド・ラ・ロシュフコーやアンブローズ・ビアス等のアフォリズムに親しんだ経験があります。それらの格言には知的な面白みがあったと思います。ただ、今思うに、それらの人間界の格言には今はそれほど興味がありません。

現在の私の関心事は主に鉱物的なジオコスモス関連にあります。そういう意味で、そのステノの格言には唸ってしまいます。

そのステノの格言を私的に鉱物趣味的解釈をしてみます。

まず、「見えるものは美しい」とは、そのものズバリ、鉱物結晶は見た目に美しいのです。
次に、「知られるものはより美しい」とは、鉱物の形の結晶学的な理解や鉱物の色に関する色彩科学的な理解が鉱物をより美しくするのです。
そして、「未知のものはさらにもっとも美しい」とは、まだ知られざる鉱物の多くの諸側面の諸様相の神秘性がもっとも美しいのです。

如何だったでしょうか?

この格言は鉱物だけではなく、宇宙から素粒子の世界まで、あらゆるレイヤーで有効性があるような気がします。

そういえば、今朝の北陸中日新聞の一面には「未知の素粒子と遭遇か」という見出しで物理学の記事が載っておりました。未知の素粒子や宇宙を満たしているという暗黒物質やダークエネルギーといった存在は「未知のものはさらにもっとも美しい」のかもしれません。

そう、以前にも書いたような気がしております。「世界は未知で満ちている。」



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