今日は「累帯構造」です。
「累帯構造」とは結晶の核から周縁にかけてみられる不連続な帯状構造の事です。顕微鏡サイズでは斜長石・輝石などに多いのですが、鉱物標本の中には肉眼的にもはっきりとそれが分かるものがあります。
累帯構造が分かり易いのは柘榴石です。
産地不明 鉄礬柘榴石(Almandine)
上の写真は鉄礬柘榴石の表と裏です。表はきれいな菱形十二面体の形をしており、菱形の面はツルツルですが、裏の面には目で見てはっきりと分かる累帯構造が見て取れます。結晶が核から周縁部にかけて不連続的に成長していった事が分かります。中心部の色が薄い事から当初は違う組成だったのだろうと思います。
中国 天山山脈 産 鉄礬柘榴石(Almandine)
この写真は菱形十二面体の各面に菱形の等高線のような模様が出ています。これも結晶成長の跡で柘榴石にはこのようなものが見られます。このような等高線のような模様も累帯構造の一種です。
結晶の成長跡が見て取れる標本は何か魅力的な気がします。そこには結晶成長した長い時間の記録が残っているのです。そこからはその鉱物が結晶してきた環境・条件が読み取れるような気がします。
そういえば、水晶の中の山入り水晶(ファントム水晶)等も累帯構造の一種だと思います。
山入り水晶は一度話題にした記憶がありますので、違うものを出します。
この写真は蛍石の累帯構造です。透明な結晶の中に紫色や灰色の結晶成長跡が見えます。この標本はキューブ状になっており、三方向の各面にも同じような累帯構造が見えます。これはファントム・フローライトといっていいと思います。
Waverly,Larimer Co Colorado,U.S.A. 白鉄鉱(Marcasite)
この写真は球状結晶をしたであろう白鉄鉱の一面です。切り取ったような円形になっており、その面には小さい結晶の集合体としての累帯構造が見て取れます。これは白鉄鉱のコンクリーションともいうべき標本で、なぜか球体の一部だけになっており、その累帯構造をしっかり見せてくれています。球状黄鉄鉱の結晶もありますが、それの一部をカットすると、このような面が現れるような気がします。
鉱物の累帯構造にはその鉱物の出来て来た歴史が刻みこまれているような気がして、どうしても貴重な標本に思えてしまいます。