今日は「十字3」です。昨年のクリスマスに「十字2」、一昨年のクリスマスに「十字」、3年前のクリスマスに「十字石」というタイトルで書いておりました。
今、店にある十字模様のある石を探してみましたが、そう簡単に見つかりません。十字探しをしている内にシラーで十字が現れる石の存在を思い出しました。今日の「十字3」ではそのような石を出す事にします。
上の写真はグレームーンストーンのアクセサリーです。カボションに磨かれた丸い石の表面に十字スターが現れています。スター効果はルビー、サファイア、ローズクォーツ、ガーネット等によく現れる6条のスターが有名(希に12条のスターもあります)ですが、石によっては4条の十字スターが現れるものがあります。以前は十字スターが現れるサンストーンもあったのですが、今は売れてしまって写真がありません。
ムーンストーンもサンストーンも長石グループに属する鉱物の宝石名です。長石グループの鉱物は正長石と曹長石と灰長石を頂点とした三角形図が有名ですが、正長石と曹長石の間には化学組成の違うものが固溶体として複数存在し、同じように曹長石と灰長石の間にも同じような固溶体が複数存在します。不思議な事に正長石と灰長石の間には何も存在しません。ムーンストーンやサンストーンに現れるシラーやスター効果はそのような固溶体としての2種類の成分が薄片状に層をなして分離し、この層の厚さが可視光の波長の長さになった場合に、光の散乱と干渉とによって起きるのです。ただ、そのような原理を理解したとしても、その不思議な光彩効果には神秘的な魅力を感じてしまいます。
上の写真はブラック・ダイオプサイトの大型ルース(縦4cm 横2.5cm 厚み1.5cm)です。別名ブラックスターと呼ばれ、その名の通り、光を当てると十字のスターが現れます。このルースは表面が広いので、見る角度によっては複数の十字スターが出て、漢字の井のようにも見えます。この十字スターは内包された針状のマグネサイトによって光が交差して起こる現象のようです。
長石族の十字スターもダイオプサイト(透輝石)の十字スターも鉱物種やスター効果の現れる原理が異なっても同じような十字模様が出るところが如何にも鉱物的で魅力を感じます。
6条のスター効果も如何にも鉱物的だと思いますが、4条の十字スターにも幾何学的にすっきりとした印象を受けてしまいます。
60度や90度の角度は鉱物の持つ幾何学的な実直な正確さを現しているような気がします。
十字スターを見ていると、クリスマス・ケーキの分割ではありませんが、円周360度を均等に切り分ける事に繋がっているような気がしてしまいました。