社会が変容するスピードはとてつもなく速く、パラダイムシフトが続々と繰り広げられています。コロナ禍やロシアのウクライナ侵攻は予想さえつきませんでしたが、それに対しても臨機応変に対応していかなければなりません。明治維新や戦後の復興から高度経済成長までは、日本も変化への対応力が高かったが、失われた30年を経ても、大きな変革に至っていない。その原因を和田秀樹先生は、日本人が「前頭葉バカ」に陥っているのではないかと考えられています。
「前頭葉バカ」とは、「前頭葉を正しく使えていない状態」を指します。前頭葉の主な働きは、「思考する」「創造性を発揮する」「やる気を出す」「変化に対応する」など、人だけの脳の機能であり、それが人間の進歩につながってきました。しかし、楽したければ、前例主義に留まればいいだけですが、常識を疑い、他の可能性を見いだしていかなければ未来はないでしょう。われわれ書店業界もまさにそうです。
前頭葉バカはあかんと認識したら、その壁を越える方策は本書に譲るとして、ひとつ面白い点を紹介しておきます。和田先生自身が行っている「前頭葉を鍛錬する方法」として、「あえてムカつく本を読む」、つまり、「自分とは真逆の相容れない意見に触れて、新しい見識を見いだそう!」と提案されています。同じ著者の本を読んでいると安心はしますが、拡がりは出ないし、執着した状態の知識インプットとなります。知らない著者に挑戦してみることこそ、前頭葉は反応するでしょうね。
『前頭葉バカ社会 自分がバカだと気づかない人たち』(和田秀樹著、アチーブメント出版、本体価格1,200円、税込価格1,320円)