語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】復讐してはならない

2018年10月28日 | ●佐藤優
 <「目には目を、歯には歯を」と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。しかし、わたしはあなたがたに言う。悪人に手向かうな。もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい。 --「マタイによる福音書」5章38-39節

 「目には目を、歯には歯を」という規定は、被害者が加害者に対する憎しみの故に過剰な報復に出るのを防ぐための規定だ。放置しておくと、人間は、「目には目と鼻を、歯には歯と耳を」くらいの過剰な復讐をしかねない。このような同害報復の規定は、イスラエルだけでなく古代中東社会における普遍的な原則であった。これに対してイエスは復讐を全面的に禁止する。これはイエスのリアリズムに基づく。
 われわれは、悪人と対峙しなくてはならない場合がある。しかし、悪人と同じレベルで復讐をするならば、悪に屈服することになる。イエスが「だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬を向けてやりなさい」と言うのは、卑屈だからではない。右の頬を打たれても、なお左の頬を差し出す度胸を持てと説くのだ。そもそも卑屈で迎合的な人は、右の頬を打たれることもない。打たれても屈せずに、復讐の権利を自発的に放棄することによって、われわれは悪を克服することができるのである。>

□佐藤優『人生の役に立つ聖書の名言』(講談社、2017)の「悪と向きあう言葉」の「復讐してはならない」を引用

 【参考】
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【佐藤優】汚れたものとは
【佐藤優】劣った部分を尊ぶ
【佐藤優】知恵を誇るな
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【佐藤優】天国でいちばん偉い者
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【佐藤優】返礼を求めるな
【佐藤優】金持ちへの警告
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【佐藤優】地の塩となれ
【佐藤優】狭い門を選べ
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【佐藤優】思い悩むな
【佐藤優】まえがき ~『人生の役に立つ聖書の名言』~


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