語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】国が追悼施設をつくるべきではない(靖国問題) ~宗教と資本主義・国家~

2018年03月20日 | ●佐藤優
 <例えば、閣僚による靖国神社公式参拝は、特定宗教と国家の癒着で良くないとする論者の中には、靖国神社に代わる宗教的に中立な追悼施設をつくるべきだと主張する人がいます。私はこの考えには反対です。なぜなら、追悼行為自体が、必ず宗教性を孕むからです。もし宗教的に中立な国立の追悼施設をつくったら、かえって国教的な性格の強い場所になってしまうはずです。これは政教分離の原則からしてもおかしいと思います。
 何をもっって宗教とするかという問題は、結構難しいものです。英語の religion、ラテン語の religio という語には「結びつける」という意味もあります。宗教学の教科書には、いろいろなものを結びつけるものを宗教という、と書いてあります。しかし例えば神学者のオットー・キルン(1857~1911)などは「そうではない、 religio は畏敬の念を持つところから生まれたのだ」といいます。別のラテン語の語源から定義する人もいます。ただ、「畏敬の念を持つ」でも「結びつける」でも、宗教の語源には必ず合理性を超えた要素が含まれるのです。
 そのような要素を持つ宗教と国家をどう結びつけていくのか。これは、たいへん難しい問題です。
 (中略)
 何かの施設をつくるという形で国家にできることはあまりないのではないか、と私は思います。だから、靖国神社に英霊がいると思う人は靖国神社に行けばいい。英霊がいないと思う人は行かなければいい。そういう多元的な形で、社会の中で解決していく問題ではないでしょうか。>

□池上彰・佐藤優・松岡正剛・碧海寿広・若松英輔『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』(KADOKAWA、2018)の「第Ⅰ部 対論」の「靖国問題。国が追悼施設をつくるべきではない」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】「国家主義教」 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】出世教、学歴教、etc. ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】お金という神さま ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】人間の思考と魂の根底に迫る ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』の目次

 

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