語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】個別性と普遍性 ~宗教と資本主義・国家~

2018年03月22日 | ●佐藤優
 <宗教という問題は同時に、個別性と普遍性の問題も提起します。例えば私は朝鮮半島との、特に日韓併合以降の問題では、宗教の問題が実は大きかったと思っています。日本は韓国を併合しましたが、これは単に政治的に併合したというだけではありません。同時に、例えば朝鮮大神宮をつくり、神社参拝を韓国に押しつけるということもしているわけです。韓国の人びとにとっては、アマテラス信仰はまったく関係ないものです。彼ら彼女らには、自分たちのルーツである檀君(タングン)という神さまがいるわけですから。
 (中略)
 金日成(キムイルソン)の時代にピラミッド型の檀君の墓をつくりました。しかし、「韓国には檀君信仰による神社を建てよう」ということすら、日本政府は思いつかなかった。
 東南アジアに行くにしても太平洋の諸島に行くにしても、神社を建てることでアマテラス信仰を慣習としてその地で広めようとした。たぶん当時の日本人は、これが普遍的だと考えていたと思うのです。しかし、それは非常に個別的なものだった。そういう問題です。
 逆に、われわれは鎖国をどう考えたらいいのか、という問題もあります。もし鎖国をしていなければ、日本が西洋の植民地になった可能性は十分にあります。その意味では、イエズス会の人たちが当時考えていた「普遍的な概念」も、実は普遍的ではないことになる。日本のような国では、イエスの教えがなかなか宿らない、と作家の遠藤周作(1923~96)が『沈黙』で書いています。「この国は沼地なのだ」と。どんな苗を植えても、根腐れを起こしてしまう沼地なのだと。
 (中略)
 日本はその調子というか、私の知る外交官にも、バチカンで神父さん相手に「お父さんも神父さんでしたか?」などと尋ね、大顰蹙を買った人がいます。>

□池上彰・佐藤優・松岡正剛・碧海寿広・若松英輔『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』(KADOKAWA、2018)の「第Ⅰ部 対論」の「個別性と普遍性」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】宗教に関する訳語 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】宗教が土着化するということ ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】沖縄における魂観 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】国が追悼施設をつくるべきではない(靖国問題) ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】「国家主義教」 ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】出世教、学歴教、etc. ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】お金という神さま ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】人間の思考と魂の根底に迫る ~宗教と資本主義・国家~
【佐藤優】『宗教と資本主義・国家 激動する世界と宗教』の目次




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